リスキリング研修とは?目的・内容・進め方まで人事担当者向けに体系解説

DX推進や事業構造の変化が進む中、企業には「今ある人材で、これから必要なスキルをどう育てるか」が問われています。
その解決策として注目されているのがリスキリング研修です。
本記事では、人事・人材教育部門の担当者に向けて、リスキリング研修とは何か/なぜ必要なのか/どのように進めるべきかを、実務に活かしやすい形で体系的に解説します。
目次[非表示]
- 1.リスキリング研修とは?
- 2.なぜ今リスキリング研修が必要なのか
- 3.リスキリング研修に取り組むメリット
- 4.リスキリング研修の内容例|目的別カリキュラム設計
- 5.リスキリング研修の実施方法
- 5.1.eラーニング型研修
- 5.2.集合研修・オンライン研修
- 5.3.ハイブリッド型研修
- 5.4.実施方法を選ぶ際の判断ポイント
- 6.リスキリング研修導入のステップ
- 6.1.現状課題とゴールの明確化
- 6.2.対象者・到達レベルの設定
- 6.3.研修内容・方法の設計
- 6.4.研修の実施とフォロー
- 6.5.成果測定と業務への活用
- 7.リスキリング研修を成功させるポイント
- 7.1.企業戦略と連動させる
- 7.2.評価制度・キャリアと結びつける
- 7.3.受講者の納得感と主体性を高める
- 8.リスキリング研修の注意点・デメリット
- 8.1.目的が曖昧なまま進めてしまうリスク
- 8.2.レベル設計・負荷設計の難しさ
- 8.3.内製だけにこだわらない選択肢
- 9.まとめ
リスキリング研修とは?

DX推進や事業変革が求められる中、「リスキリング研修」は多くの企業で注目を集めています。
リスキリング研修とは、事業環境や業務内容の変化を前提に、社員がこれから必要となるスキルや知識を新たに習得し、役割や業務の変化に対応できるようにするための研修を指します。
現在の業務を効率化・高度化することを目的とした従来型の社員研修とは異なり、将来の事業展開や人材配置を見据えた「学び直し」である点が大きな特徴です。
人材育成施策にとどまらず、企業変革を支える基盤として位置づけられています。
スキルアップ研修・DX研修との違い
リスキリング研修は、スキルアップ研修やDX研修と混同されがちですが、目的と視点に明確な違いがあります。
スキルアップ研修が、現在の業務をより高いレベルで遂行するための能力向上を主眼とするのに対し、リスキリング研修は、業務や役割そのものが変化することを前提に、新たなスキルを再構築する点に特徴があります。
また、DX研修はデジタル技術の理解やツール活用に焦点を当てるケースが多い一方、リスキリング研修では、ITスキルに限らず、ビジネススキルや思考力、専門スキルなども含めて幅広く再設計します。
技術習得そのものではなく、変化に対応できる人材を育てることが目的です。
▶関連記事:リスキリングとは?リスキリングの意味や導入効果、方法を分かりやすく解説!
企業戦略とリスキリングの関係性
リスキリング研修は、人材育成施策の一つであると同時に、企業戦略と密接に結びついた取り組みです。
新規事業の立ち上げやDX推進を進める際、必要な人材をすべて外部から採用するのは現実的とは言えません。
そこで、自社の将来像から逆算し、どのスキルを社内で育成すべきかを明確にしたうえで進めるリスキリング研修が重要になります。
経営戦略と連動したリスキリングこそが、組織全体の変革を支える土台となります。
リスキリング研修の企業における現状
では、企業は実際にどの程度リスキリング研修に取り組めているのでしょうか。
帝国データバンクが2024年に実施した「リスキリングに関する企業の意識調査」によると、リスキリングに現在「取り組んでいる」企業は8.9%にとどまり、半数近くの企業が未実施という結果が示されています。
実施状況には明確な偏りも見られます。
業種別では、デジタル技術の活用が不可欠な「情報サービス」や「金融」分野で約2割と比較的高い実施率となっている一方、企業規模別では、大企業が15.1%、中小企業は7.7%と、リソースの差がそのまま取り組み状況の差として表れています。
具体的な取り組み内容としては、従業員のスキルを可視化したうえで、eラーニングを活用した学習環境を整備するケースが主流です。
しかし、人手不足の企業ほど生産性向上を目的にリスキリングの必要性を感じている一方で、「日々の業務に追われ、研修に割く時間や人材を確保できない」というジレンマも浮き彫りになっています。
また、すでに取り組んでいる企業においても課題は存在します。同調査では、実施企業の42.0%が「従業員のモチベーション維持」を最大の課題として挙げています。
単に研修やツールを導入するだけでは十分な成果は得られず、経営層が主導して目的を明確に示し、社員のキャリア形成と結びつけることが、リスキリング研修を定着させる重要なポイントであることが示唆されています。
引用:帝国データバンク「リスキリングに関する企業の意識調査(2024年)」
なぜ今リスキリング研修が必要なのか

近年、リスキリング研修が注目されている背景には、DXを中心とした事業環境の急速な変化があります。
生成AIやデジタルツールの普及により、業務プロセスや求められるスキルは短期間で更新され、従来の経験や専門性だけでは対応が難しい場面が増えています。
こうした変化に対し、新技術が登場するたびに外部人材を採用する方法には限界があります。採用競争の激化やコスト増加に加え、組織理解や業務適応に時間がかかる点も課題です。
そのため、既存社員が変化に対応できるよう、スキルを更新・転換する仕組みとして、リスキリング研修の必要性が高まっています。
また、業務のデジタル化が進むほど、単なるツール操作ではなく「業務理解 × デジタル活用」を担える人材が求められます。
現場を知る社員が新たなスキルを身につけることで、変化を前提とした業務改善やDXを継続的に進めやすくなる点も、今リスキリング研修が重視される理由の一つです。
リスキリング研修に取り組むメリット

リスキリング研修は一定のコストや工数を伴いますが、中長期的には企業経営に多面的な効果をもたらします。
ここでは、人事・経営の観点から代表的なメリットを整理します。
採用依存を抑え、安定的な人材確保につながる
慢性的な人材不足が続く中、必要なスキルを外部採用だけで補い続けることは現実的ではありません。採用コストの増大やミスマッチのリスクも無視できません。
リスキリング研修によって既存社員のスキルを転換・拡張することで、社内で人材を育成・活用する体制を構築でき、採用への過度な依存を抑えることが可能になります。
生産性・業務品質の向上につながる
新たなスキルを習得した社員が増えることで、業務の進め方そのものが見直され、属人化や非効率の解消が進みます。
デジタルツールの活用や業務プロセス改善が定着し、限られたリソースでも成果を出しやすい組織へと変化します。業務理解とスキルが結びつくことで、判断の精度や成果物の品質向上にも寄与します。
社員の定着率・エンゲージメント向上
成長機会が見えにくい環境では、社員のモチベーション低下や離職につながりやすくなります。
リスキリング研修を通じて新たな役割や可能性が示されることで、社員は将来像を描きやすくなり、前向きに業務へ取り組むようになります。
企業が学び直しを支援する姿勢を示すことは、「この会社で成長できる」という実感につながり、エンゲージメント向上や定着率改善を後押しします。
▶関連記事:企業がリスキリングに取り組むメリットとは?導入手順やポイントを解説
リスキリング研修の内容例|目的別カリキュラム設計

リスキリング研修の成果は、カリキュラム設計で大きく左右されます。自社の課題や目的に応じて、どのようなスキル領域を対象にすべきかを整理します。
デジタル・ITスキルを中心とした研修内容
DX推進を目的とする場合、デジタル・ITスキルはリスキリング研修の中核となります。
ただし、エンジニア向けの高度な専門教育だけでなく、非IT部門でも活用できる基礎的な理解を重視することがポイントです。
例えば、ITリテラシーやデータ活用、業務ツールの理解など、現場業務と結びついた内容を扱うことで、研修後の実践につながりやすくなります。
技術を学ぶこと自体ではなく、業務改善や価値創出に活かす視点を持たせることが重要です。
カリキュラム例
ITリテラシー基礎(システム・ネットワーク・セキュリティの基本)
DX・デジタル活用の基礎知識(DXの考え方、活用事例)
データ活用入門(データの読み方、簡単な分析の考え方)
業務で使うデジタルツールの活用(RPA、BIツール、業務アプリなど)
生成AI・自動化ツールの基礎理解と業務活用例
情報セキュリティ・個人情報保護の基礎
▼資料ダウンロード:eラーニングコンテンツ「IT関連コンテンツ」
ビジネススキル・思考力を強化する研修内容
リスキリングはデジタル領域に限られるものではありません。事業環境の変化に対応するためには、課題発見力や論理的思考力、コミュニケーション力といったビジネススキルの再定義・強化も欠かせません。
特にDXや業務改革を推進する立場の社員には、デジタル知識だけでなく、業務や顧客の視点から考える力が求められます。ビジネススキルとデジタル理解を組み合わせることで、現場と経営をつなぐ人材の育成につながります。
カリキュラム例
ロジカルシンキング・問題解決力
課題設定力・仮説思考
業務改善・プロセス設計の基礎
データを使った意思決定の考え方
ファシリテーション・合意形成スキル
プレゼンテーション・資料作成力
顧客視点・マーケティング基礎
▼資料ダウンロード:eラーニングコンテンツ「ビジネスベーシック」
専門職・職種転換を見据えた研修内容
事業構造の変化により、将来的に役割の見直しが必要となる職種も少なくありません。リスキリング研修は、新たな専門職や職種への転換を支援する手段としても活用されます。
業務内容を踏まえた段階的なカリキュラムを設計することで、未経験分野であっても無理なくスキルを習得できます。個人の適性やキャリア意向を考慮しながら進めることが、研修定着と実務活用の鍵となります。
カリキュラム例
IT・デジタル職種への転換基礎(ITパスポート相当レベル)
データ分析・データ活用担当向け基礎研修
業務企画・DX推進担当向け研修
マーケティング・デジタルマーケティング基礎
管理職・リーダー向けのデジタル理解・変革推進研修
職種別オンボーディング研修(業務理解+必要スキル)
▼資料ダウンロード:eラーニングコンテンツ「ビジネスマネジメント」
リスキリング研修の実施方法

リスキリング研修には複数の実施方法があり、対象者や目的によって適した形式は異なります。それぞれの特徴を理解し、自社に合う手法を検討することが重要です。
eラーニング型研修
eラーニング型研修は、時間や場所に縛られずに学習できる点が大きな特長です。
受講者が自分のペースで学べるため、業務と研修を両立しやすく、全社規模でのリスキリングにも適しています。
また、進捗管理や理解度確認を行いやすく、学習状況を可視化できる点もメリットです。基礎知識の習得や反復学習に向いており、継続的なスキル更新を目的とした研修に適した手法といえます。
集合研修・オンライン研修
集合研修やオンライン研修は、講師から直接説明を受けたり、参加者同士で意見交換を行ったりできる点が特長です。
双方向のコミュニケーションを通じて理解を深めやすいため、考え方や意識変革を目的とした研修に向いています。
一方で、日程調整や運営の工数がかかるため、対象人数や実施頻度には注意が必要です。テーマや目的を絞り、ポイントを押さえた実施が求められます。
ハイブリッド型研修
ハイブリッド型研修は、eラーニングと集合研修・オンライン研修を組み合わせた方法です。
事前学習としてeラーニングを活用し、その後の研修でディスカッションや演習を行うなど、それぞれの長所を活かした設計が可能です。
基礎知識の習得と実践的な理解を両立できるため、リスキリング研修において近年採用されるケースが増えています。学習定着や行動変容を重視する企業に適した手法です。
▶関連記事:ハイブリッド研修とは?メリット・デメリットから具体的な行い方まで解説
実施方法を選ぶ際の判断ポイント
実施方法を選定する際は、以下の観点から検討することが重要です。
研修の目的(知識習得か、行動変容か)
対象者の人数や業務状況
運用にかけられる工数やコスト
継続的な実施が可能かどうか
これらを踏まえ、自社の現状に合った方法を選ぶことで、リスキリング研修の効果を最大化することができます。
リスキリング研修導入のステップ

リスキリング研修を成功させるためには、思いつきで始めるのではなく、段階的な設計と運用が欠かせません。
人事担当者が押さえるべき基本ステップを整理します。
現状課題とゴールの明確化
最初に取り組むべきは、「なぜリスキリング研修が必要なのか」を明確にすることです。DX推進、人材不足への対応、事業構造の変化など、自社が直面している課題を整理し、研修によって解決したい状態を言語化します。
ゴールが曖昧なままでは、研修内容や成果測定の軸が定まりません。事業戦略や中期計画と結びつけて、研修の目的を明確にすることが重要です。
対象者・到達レベルの設定
次に、誰に対して、どこまでのスキル習得を求めるのかを設定します。全社員向けなのか、特定部門・職種向けなのかによって、研修設計は大きく変わります。
また、現状のスキルレベルを踏まえ、無理のない到達目標を設定することがポイントです。段階的なレベル設定を行うことで、学習の継続性と定着率を高めることができます。
研修内容・方法の設計
目的と対象者が定まったら、研修内容と実施方法を具体化します。eラーニング、集合研修、ハイブリッド型など、研修の特性と自社の運用体制に合った手法を選択します。
業務と切り離された内容ではなく、実務にどう活かすかを意識した設計にすることで、研修効果を高めることができます。
研修の実施とフォロー
研修は実施して終わりではありません。受講状況の確認や理解度チェック、フォローアップの仕組みを設けることで、学習の定着を促進します。
上司や現場を巻き込み、学んだ内容を業務で試す機会をつくることも重要です。研修と業務を連動させることで、行動変容につながりやすくなります。
成果測定と業務への活用
最後に、研修の成果を可視化し、次の施策に活かします。テスト結果や受講完了率だけでなく、業務改善や役割変化といった実務への影響を確認することが重要です。
成果測定を通じて課題を洗い出し、研修内容や運用方法を見直すことで、リスキリング研修を一過性の施策ではなく、継続的な人材育成の仕組みとして定着させることができます。
リスキリング研修を成功させるポイント

同じ研修内容でも、運用の工夫次第で成果には大きな差が生まれます。多くの企業で共通する成功要因を整理します。
企業戦略と連動させる
リスキリング研修を成功させるためには、人事施策として単独で考えるのではなく、企業の中長期戦略や事業方針と結びつけることが重要です。
DX推進や新規事業創出といった経営テーマと連動していなければ、研修の優先度が下がり、形骸化しやすくなります。
研修の目的や期待される役割を明確にし、経営層や現場と共有することで、「なぜこの研修が必要なのか」が社内に浸透し、取り組みとして定着しやすくなります。
評価制度・キャリアと結びつける
学んだ内容が評価やキャリアに反映されない場合、受講者のモチベーションは維持しづらくなります。リスキリング研修で身につけたスキルや行動が、配置転換や役割付与、評価制度と連動する仕組みを整えることが重要です。
研修が将来のキャリアにつながると実感できることで、受講者は主体的に学習に取り組むようになります。
制度面での連携は、研修効果を高める大きな要素です。
受講者の納得感と主体性を高める
リスキリング研修は「やらされ感」が強いと、期待した成果が得られにくくなります。
研修の背景や目的を丁寧に説明し、受講者自身にとってのメリットを理解してもらうことが欠かせません。
また、一方的なインプットだけでなく、業務への活用を考える機会を設けることで、学びを自分ごととして捉えやすくなります。受講者の納得感と主体性を高めることが、リスキリング研修成功の鍵となります。
▶関連記事:リスキリングの導入事例10選|成功企業に学ぶ導入プロセスと成果を出すポイント
リスキリング研修の注意点・デメリット

リスキリング研修にはメリットだけでなく、設計や運用を誤ることで期待した成果が出ないケースもあります。
事前に押さえておきたい注意点を整理します。
目的が曖昧なまま進めてしまうリスク
リスキリング研修で最も多い失敗の一つが、「とりあえず始める」状態で進めてしまうことです。目的が曖昧なままでは、研修内容が広く浅くなり、何のための研修なのかが社内で共有されません。
その結果、受講者の納得感が得られず、学習が形骸化してしまう恐れがあります。
事業戦略や人材課題と結びつけ、「研修を通じてどの状態を目指すのか」を明確にしておくことが不可欠です。
レベル設計・負荷設計の難しさ
リスキリング研修では、受講者のスキルレベルや業務状況にばらつきがあるため、難易度や学習負荷の設計が難しいという課題があります。内容が難しすぎれば挫折を招き、簡単すぎれば学習効果が薄れてしまいます。
また、業務と並行して学習するケースが多いため、学習時間の確保や進捗管理にも工夫が必要です。段階的なレベル設計や、柔軟に学べる仕組みを取り入れることが、継続的な学習につながります。
内製だけにこだわらない選択肢
自社で全ての研修を内製しようとすると、コンテンツ作成や運用に大きな負担がかかります。
結果として、研修品質の維持や継続が難しくなるケースも少なくありません。
外部サービスや既存の研修コンテンツを活用することで、設計・運用の工数を抑えつつ、一定の品質を担保することができます。自社で担う部分と外部に委ねる部分を整理し、無理のない形でリスキリング研修を進める視点が重要です。
まとめ
リスキリング研修は、DX推進や事業変革、人材不足への対応など、企業が直面する課題を解決するための重要な人材育成施策です。
単なるスキルアップ研修ではなく、企業戦略と連動し、社員のキャリア形成とも結びつく取り組みとして設計・運用することで、その効果は大きく高まります。
一方で、目的が曖昧なまま進めてしまったり、運用負荷が大きく継続できなかったりすると、期待した成果は得られません。
重要なのは、自社の課題や対象者に合ったカリキュラムと実施方法を選び、無理なく継続できる仕組みとして定着させることです。
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