「OJTという名の放置」とは?原因や問題点、意味のあるOJTに変える方法を解説

OJTは、実際の業務を通じて仕事に必要な知識やスキルを身につける育成方法です。
一方で、現場の状況や指導体制によっては、十分な指導やフォローが行われないまま、新人に業務を任せる状態になることがあります。こうした状況は、「OJTという名の放置」と表現されることがあります。
このような状態が続くと、新人の不安が高まるだけでなく、業務習得の遅れやミス、早期離職などにつながる可能性があります。
本記事では、「OJTという名の放置」と呼ばれる状態がなぜ起こるのか、どのような問題につながるのかを整理します。
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目次[非表示]
- 1.「OJTという名の放置」とは?
- 2.OJTという名の放置が起こる理由
- 2.1.育成目標や進め方が決まっていない
- 2.2.指導担当者が通常業務で忙しい
- 2.3.マニュアルや学習環境が整っていない
- 2.4.指導担当者に育成スキルがない
- 3.OJTという名の放置によって起こる問題
- 4.OJTという名の放置を防ぐための効果的な進め方
- 4.1.育成目標とスケジュールを明確にする
- 4.2.「見せる・説明する・実践する」の流れで指導する
- 4.3.定期的に進捗や理解度を確認する
- 4.4.業務を振り返り、具体的なフィードバックを行う
- 4.5.新人が自分で確認・学習できる環境を用意する
- 5.OJTを現場任せにしないための仕組みづくり
- 6.まとめ
「OJTという名の放置」とは?

「OJTという名の放置」という言葉が使われるように、OJTを実施しているつもりでも、実際には新人に業務を任せるだけになっているケースがあります。
指導する側に放置する意図がなくても、十分な説明やフォローがないまま業務を任せてしまえば、新人が一人で仕事を進めなければならない状態になることもあります。
ここでは、OJTの本来の目的と、「放置」と呼ばれる状態との違いを整理します。
OJTとは実務を通じて成長を支援する育成手法
OJTとは「On-the-Job Training」の略で、実際の業務を経験しながら、仕事に必要な知識やスキルを身につける教育方法です。
例えば、新入社員が営業職に配属された場合、先輩社員の商談への同行や顧客対応などを経験しながら、仕事の進め方や判断基準を学んでいきます。
OJTの目的は、単に新人へ仕事を任せることではありません。
実務経験と指導を組み合わせ、新人が徐々に自立して業務を行えるよう支援することが重要です。
▶関連記事:OJT教育を成功に導く!ポイントやメリットをご紹介します
「OJTという名の放置」とは、業務を任せるだけで支援がない状態
「OJTという名の放置」とは、新人に業務を任せたまま、必要な指導やフォローが十分に行われていない状態を指します。
例えば、以下のような状態です。
業務の目的やゴールを説明されないまま仕事を任される
何を基準に判断すればよいのか分からない
分からないことがあっても相談しにくい
自分の仕事の進め方が正しいのか確認できない
業務を経験するだけで、振り返りやフィードバックがない
新人が自分で考えながら仕事を進めることは、OJTにおいて重要です。
しかし、「自分で考えること」と「自分だけで何とかすること」は同じではありません。
本来のOJTでは、新人の習熟度に応じて業務を任せながら、必要な場面で指導やサポートを行います。
一方、「OJTという名の放置」では、業務を任せることが中心となり、成長を支援するための関わりが不足しています。
本来のOJT | OJTという名の放置 | |
業務の任せ方 | 理解度や習熟度に応じて任せる | 十分な説明がないまま任せる |
指導 | 必要な知識や考え方を教える | 基本的に本人任せになる |
フォロー | 必要に応じて確認・サポートする | 困っていてもフォローされない |
業務経験の位置づけ | 成長につなげるための実践 | 単に業務をこなすだけになりやすい |
つまり、業務を任せること自体が問題なのではなく、実務経験を成長につなげるための支援が伴っているかどうかが、OJTと「放置」を分けるポイントです。
OJTという名の放置が起こる理由

OJTが「放置」になってしまう背景には、指導担当者の意識だけでなく、育成を支える環境や体制の問題があります。
ここでは、OJTが放置につながる主な原因を見ていきます。
▶関連記事:OJTをする余裕がない原因と対策|現場負担を減らし教育を効率化する進め方
育成目標や進め方が決まっていない
OJTの目標や進め方が明確になっていないと、何をどこまで教えるべきかが指導担当者の判断に委ねられてしまいます。
例えば、「まずは仕事を覚えてもらう」といった大まかな方針だけでOJTを始めると、担当者によって教える内容や順番が変わる可能性があります。
新人側も、自分がどの程度の業務を身につければよいのか分からず、目の前の仕事をこなすことだけになりがちです。
また、OJTの期間や段階ごとの到達イメージが共有されていなければ、指導担当者が「もう一人で任せてよい」と判断するタイミングにもばらつきが生じます。
育成のゴールが曖昧なままだと、OJTが計画的な教育ではなく、その日に発生した業務を教えるだけのものになりやすくなります。
指導担当者が通常業務で忙しい
OJT担当者が自分の通常業務を抱えていることも、放置が起こる大きな要因です。
新人への指導が担当者の業務として明確に位置づけられていても、日々の仕事が忙しければ、目の前の業務を優先してしまうことがあります。
例えば、新人から質問を受けてもすぐに対応できなかったり、業務の進み具合を確認する時間が取れなかったりすると、新人は一人で判断しながら仕事を進めなければならなくなります。
担当者に新人を放置する意図がなくても、教育に割ける時間が不足していれば、結果として十分な指導が行われない状態につながります。
実際に、当社が大企業の人事・人材開発担当者110名を対象に実施した調査では、配属後のフォローアップを十分に実施できていない企業が34.5%に上りました。また、フォローアップが不十分な理由として「配属先の上司・先輩に教育の余裕がない」と回答した企業は55.3%に上っています。
この結果からも、配属後の教育を現場だけに委ねることには、時間やリソースの面で難しさがあることがうかがえます。
マニュアルや学習環境が整っていない
新人が業務について確認できるマニュアルや資料が不足していることも、OJTが放置になりやすい原因の一つです。
業務の進め方や社内ルールなどを確認できる情報がなければ、新人は分からないことがあるたびに指導担当者へ質問する必要があります。
しかし、担当者が別の業務に対応している場合、すぐに疑問を解消できるとは限りません。
結果として、新人が長時間一人で悩んだり、自己判断で業務を進めたりする状況が生まれます。
また、必要な情報が整理されていない状態では、担当者によって説明する内容が変わりやすく、OJTの進め方にもばらつきが生じます。
指導担当者に育成スキルがない
業務経験が豊富な社員であっても、必ずしも新人への指導が得意とは限りません。
自分にとって当たり前になっている業務ほど、初心者がどこでつまずくのかを把握しにくく、説明が不足することがあります。
例えば、担当者自身は「これくらいは分かるだろう」と考えて説明を省略してしまったり、業務の手順だけを伝えて背景や考え方を十分に説明できなかったりするケースがあります。
また、新人の理解度を確認しながら説明する、質問を引き出す、適切なフィードバックを行うといった育成上のスキルが不足していると、業務を教えていても新人の理解につながらない場合があります。
OJTでは、業務そのものの知識や経験だけでなく、それを新人に分かりやすく伝える力も求められます。
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OJTという名の放置によって起こる問題

OJTで十分な指導やフォローが行われない状態が続くと、新人の成長だけでなく、業務効率や人材定着、組織全体の教育品質にも影響します。
特に、「業務を覚えられない」「不安を抱える」「教育品質に差が生じる」といった問題が連鎖的に起こりやすくなります。
業務の習得が遅れ、ミスや手戻りが増える
十分な指導がないまま業務を任されると、新人は仕事の手順だけでなく、その背景にある考え方や判断基準も自分で理解しなければなりません。
その結果、正しい方法を身につけるまでに時間がかかったり、似たような業務に応用できなかったりするなど、業務の習得が遅れる可能性があります。
また、分からないことを自己判断して進める状態が続けば、認識の違いや確認不足によるミスも起こりやすくなります。
後から修正ややり直しが必要になれば、新人だけでなく、指導担当者や周囲の社員にも対応のための時間が発生します。
このように、OJT放置は新人の成長を遅らせるだけでなく、ミスや手戻りを通じて周囲の業務負担を増やすことにもつながります。
不安や不満が高まり、早期離職につながる可能性がある
十分な指導や相談の機会がないと、新人は「自分のやり方で合っているのか」「何を期待されているのか」といった不安を抱えやすくなります。
特に、入社直後は業務知識や経験が少ないため、一人で判断できない場面も多くあります。
それにもかかわらず、周囲が忙しく質問しにくい状態が続けば、分からないことを抱えたまま仕事を進めることになります。
また、「仕事を任されるだけで成長できている実感がない」「困っていても相談できない」といった状態が続くと、仕事への意欲が低下したり、会社や仕事に対する期待とのギャップを感じたりすることもあります。
当社が大企業の人事・人材開発担当者110名を対象に実施した調査では、過去3年以内に離職した新入社員がいる企業の69.1%で、離職理由として研修・教育体制への不満が挙げられました。
十分な教育やフォローを受けられないことは、育成上の問題にとどまらず、新人の定着にも影響する可能性があります。
▶関連記事:新入社員が退職してしまう原因とは?離職率を下げる解決法を徹底解説
教育品質にばらつきが生じる
OJTの進め方を担当者個人に任せていると、教える内容や指導方法にばらつきが生じやすくなります。
例えば、ある新人には業務の背景や判断基準まで丁寧に説明する一方で、別の新人には手順だけを伝えるといった違いが起こることがあります。
担当者によって教育内容が異なれば、新人が身につける知識やスキルにも差が生じます。
その結果、同じ職種や業務であっても、社員によって習熟度にばらつきが出る可能性があります。
このように、OJT放置は担当する新人だけの問題ではなく、担当者の経験や指導力に依存した教育になり、組織全体の育成品質にも影響する点に注意が必要です。
OJTという名の放置を防ぐための効果的な進め方

OJTを効果的な育成につなげるには、新人に業務を任せるだけでなく、何を目指して学ぶのかを明確にしたうえで、段階的に実務経験を積ませることが重要です。
ここでは、OJTを放置にせず、新人の成長につなげるための具体的な進め方を紹介します。
育成目標とスケジュールを明確にする
OJTを始める前に、「何を、いつまでに身につけるのか」という育成目標を明確にします。
目標が曖昧なままだと、新人は自分がどこまでできるようになればよいのか分からず、指導する側もどの業務をどの順番で教えるべきか判断しにくくなります。
例えば、OJT期間中に以下のような項目を設定します。
習得する業務やスキル
一人で担当できるようになる業務の範囲
各業務を習得する時期の目安
OJT終了時に目指す状態
また、目標は指導担当者だけでなく、新人本人にも共有することが大切です。
「何ができるようになればよいのか」が分かれば、新人自身も現在の習熟度を把握しやすくなり、目標に向けて業務へ取り組めるようになります。
「見せる・説明する・実践する」の流れで指導する
新人にいきなり業務を任せるのではなく、まず手本を見せ、業務の内容を説明したうえで実践してもらうという段階を踏むと、理解を深めやすくなります。
基本的には、次の3つのステップで進めます。
見せる
指導担当者が実際に業務を行い、具体的な進め方を見せます。新人が実際の仕事の流れを把握することで、自分が行う際のイメージを持ちやすくなります。説明する
業務の手順だけでなく、目的や判断基準、注意点などを説明します。「何をするか」だけでなく、「なぜそうするのか」まで伝えることが理解につながります。実践する
新人自身に業務を行ってもらいます。実際に取り組むことで、理解できていない部分やつまずきやすい箇所を確認できます。
この流れを基本としながら、新人の習熟度に応じて任せる範囲を広げていくことがポイントです。
定期的に進捗や理解度を確認する
OJTでは、新人に業務を任せた後も、定期的に進捗や理解度を確認します。
業務を進めている本人が「分からないことが分からない」状態になっている場合もあるため、問題が起きてから確認するのではなく、一定のタイミングで状況を確認することが重要です。
例えば、以下のような機会を設けると、業務の進捗や理解度を把握しやすくなります。
毎日または数日ごとの簡単な進捗確認
週単位での業務内容の振り返り
OJTの節目ごとの理解度確認
新人が困っていることを確認する時間
確認の際は、単に「問題なくできていますか」と聞くだけではなく、「どこまで一人でできるようになったか」「分からないことは何か」など、具体的に状況を確認するとよいでしょう。
▶関連記事:研修の効果測定とは?評価方法・指標・実施のポイントをわかりやすく解説
業務を振り返り、具体的なフィードバックを行う
新人が実践した後は、業務の結果や進め方についてフィードバックを行います。
フィードバックでは、できていなかった点だけを指摘するのではなく、できていた点と改善すべき点の両方を具体的に伝えることが重要です。
例えば、「もっと丁寧に対応しましょう」と伝えるだけでは、新人は何を改善すればよいのか判断できません。
「顧客への説明では要点を先に伝えられていた。一方で、質問への回答に時間がかかっていたため、次回はよくある質問を事前に整理しておこう」といったように、具体的な行動に落とし込んで伝えると、次の業務に活かしやすくなります。
また、フィードバックを一方的に伝えるのではなく、新人自身に「どこが難しかったか」「自分ではどう感じたか」を振り返ってもらうことも大切です。
▶関連記事:研修の振り返りの目的・実施方法・効果的な進め方を解説
新人が自分で確認・学習できる環境を用意する
OJTでは、すべての疑問を指導担当者に聞かなければならない状態にしないことも重要です。
業務手順や社内ルール、基本的な知識などを確認できる資料があれば、新人は必要な情報を自分で調べながら業務を進められます。
例えば、以下のような情報を整理しておくと、日々の業務で活用しやすくなります。
業務手順やマニュアル
よくある質問と回答
社内ルールや業務上の注意事項
業務に必要な基礎知識
過去の事例や参考資料
こうした環境があれば、指導担当者への質問を必要なものに絞ることができ、新人自身も「まず自分で確認してみる」という行動を取りやすくなります。
ただし、自己学習に任せきるのではなく、分からないことを質問・確認できる状態を維持することも大切です。
自分で学ぶことと、必要なときに指導を受けることを両立させることで、実務経験をより効果的な学習につなげられます。
OJTを現場任せにしないための仕組みづくり

OJTを継続的に機能させるには、指導担当者の努力だけに頼らず、企業として育成を支える仕組みを整えることが重要です。
OJT担当者を支援しながら、誰が担当しても一定の育成品質を保てる環境を組織として整えていくことが求められます。
OJT担当者向けの研修を行う
OJTの質を安定させるには、指導担当者自身が育成に必要な知識やスキルを身につけることが大切です。
業務に詳しい社員であっても、新人に分かりやすく教えられるとは限りません。
そのため、OJT担当者向けに、教え方やコミュニケーション、フィードバックなどを学ぶ機会を設けます。
例えば、以下のようなテーマを扱う研修が考えられます。
新人への効果的な仕事の教え方
相手の理解度に合わせた説明方法
質問を引き出すコミュニケーション
適切なフィードバックの方法
新人の成長段階に応じた関わり方
担当者が「自分の経験を教える」だけでなく、「新人が理解し、実践できるように教える」という視点を持つことで、担当者ごとの指導方法のばらつきを抑えやすくなります。
eラーニングやLMSを活用する
OJTとeラーニングやLMS(学習管理システム)を組み合わせることで、実務だけでは補いにくい基礎知識の学習や、学習状況の把握がしやすくなります。
例えば、新人が業務に必要な基礎知識や社内ルールをeラーニングで学んだうえで、OJTでは実際の業務を経験するといった役割分担ができます。
また、LMSを活用すれば、以下のような情報を管理できます。
受講状況
テストなどによる理解度
学習コンテンツの閲覧状況
未受講・未達成の項目
これにより、現場で実際に業務を行う前の知識習得と、OJTでの実践を組み合わせやすくなります。
OJTですべての教育を完結させるのではなく、オンライン学習なども活用して役割を分担することで、現場の指導負担を抑えながら学習機会を確保できます。
メンターや1on1など相談できる体制を整える
OJT担当者だけでは対応しきれない悩みや相談を受け止められるよう、メンター制度や1on1など、複数の相談機会を設けることも有効です。
新人は、業務上の疑問だけでなく、職場での人間関係や仕事への不安など、OJT担当者には相談しづらいことを抱える場合があります。
そのため、直属の担当者とは別に相談できる相手を用意したり、定期的に上司や人事と話せる機会を設けたりすることで、新人が一人で悩みを抱え込むことを防ぎやすくなります。
また、複数の立場から新人の状況を把握できれば、OJT担当者だけでは気づきにくい困りごとを把握するきっかけにもなります。
▶関連記事:1on1ミーティングとは?効果や進め方、ポイントを解説
まとめ
OJTは、実務を通じて知識やスキルを身につけられる有効な育成方法です。
一方で、業務を任せるだけで十分な指導やフォローがなければ、「OJTという名の放置」になってしまいます。
OJTを効果的に機能させるには、育成目標を明確にし、段階的な指導や定期的なフィードバックを行うことが重要です。
さらに、OJT担当者だけに任せるのではなく、マニュアルや教育コンテンツ、eラーニングなどを活用し、組織全体で育成を支える仕組みを整えることも欠かせません。
OJTを「任せるだけの教育」にせず、実務経験を確かな成長につなげられる育成環境を整えていきましょう。
OJTを支える教育環境づくりなら「SAKU-SAKU Testing」
OJT放置を防ぐには、現場での指導だけでなく、新人が必要な知識を自ら学び、理解度を確認できる環境を整えることが重要です。
SAKU-SAKU Testingは、自社オリジナルの教材や問題を登録できるeラーニングプラットフォームです。
新入社員研修や階層別研修など、企業ごとの教育内容に合わせて学習環境を構築でき、受講状況やテスト結果などの管理にも対応しています。
OJTとeラーニングを組み合わせることで、基礎知識の習得はオンライン学習、実践的なスキルの習得はOJTというように、「現場だけに頼らない育成体制」を構築できます。
OJT担当者の負担を抑えながら、組織として継続的に人材を育成する環境づくりに、SAKU-SAKU Testingをご活用ください。



















