シェアドリーダーシップとは?注目される背景・メリット・導入方法までわかりやすく解説

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近年、組織の意思決定のスピード向上や自律的なチームづくりの重要性が高まる中で、「シェアドリーダーシップ」という考え方が注目されています。従来のように一人のリーダーに依存するのではなく、メンバーそれぞれが状況に応じてリーダーシップを発揮することで、組織全体のパフォーマンス向上を目指す手法です。

特に、変化の速いビジネス環境や専門性の高いチームにおいては、シェアドリーダーシップの導入によって、主体性の向上やイノベーション創出などの効果が期待されています。

本記事では、シェアドリーダーシップの基本的な考え方から、メリット・デメリット、導入方法、定着のポイントまでを分かりやすく解説します。組織づくりや人材育成のヒントとして、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.シェアドリーダーシップとは
    1. 1.1.従来型リーダーシップとの違い
    2. 1.2.サーバントリーダーシップとの違い
    3. 1.3.オーセンティックリーダーシップとの違い
  2. 2.シェアドリーダーシップの理解における注意点
    1. 2.1.リーダーが不要になるわけではない
    2. 2.2.すべてのメンバーが同じ役割を担うわけではない
    3. 2.3.従来型のリーダーシップと対立するものではない
  3. 3.シェアドリーダーシップが注目されている背景
    1. 3.1.ビジネス環境の変化(VUCA時代)
    2. 3.2.人材の多様化・専門性の高度化
    3. 3.3.働き方の変化
    4. 3.4.DX・デジタル化の進展
  4. 4.シェアドリーダーシップのメリット
    1. 4.1.メンバーの主体性・当事者意識が高まる
    2. 4.2.心理的安全性が高まり発言しやすくなる
    3. 4.3.生産性・意思決定スピードが向上する
    4. 4.4.イノベーションが生まれやすくなる
    5. 4.5.次世代リーダーの育成につながる
    6. 4.6.組織の変化対応力が高まる
  5. 5.シェアドリーダーシップのデメリット
    1. 5.1.責任の所在が曖昧になりやすい
    2. 5.2.合意形成に時間がかかる
    3. 5.3.管理職に高いファシリテーション能力が求められる
    4. 5.4.組織文化の醸成に時間がかかる
  6. 6.シェアドリーダーシップが向いている組織・チームの特徴
    1. 6.1.小規模またはフラットな組織
    2. 6.2.専門性の高いメンバーが集まるチーム
    3. 6.3.自律性を重視する組織文化がある
    4. 6.4.変化のスピードが速い業務環境
  7. 7.シェアドリーダーシップの導入ステップ
    1. 7.1.1 . 目的・ビジョンを明確にする
    2. 7.2.2 . リーダーシップの定義を共有する
    3. 7.3.3 . 役割と責任の範囲を整理する
    4. 7.4.4 . 小規模チームから試験的に導入する
    5. 7.5.5 . 振り返りと改善を繰り返す
  8. 8.シェアドリーダーシップを定着させるためのポイント
    1. 8.1.心理的安全性の高い環境をつくる
    2. 8.2.フォロワーシップの理解を促進する
    3. 8.3.情報共有の仕組みを整備する
    4. 8.4.対話・フィードバックの機会を増やす
    5. 8.5.管理職の役割を再定義する
  9. 9.シェアドリーダーシップ導入企業の事例
    1. 9.1.自律型チームを実現した企業事例
    2. 9.2.対話文化を強化した企業事例
    3. 9.3.多様な人材活用に成功した企業事例
  10. 10.シェアドリーダーシップを育成するための取り組み
    1. 10.1.リーダーシップ研修の実施
    2. 10.2.1on1や対話の機会の増加
    3. 10.3.チームでの意思決定プロセスの導入
    4. 10.4.評価制度の見直し
  11. 11.まとめ|シェアドリーダーシップで自律型組織を実現する

シェアドリーダーシップとは

シェアドリーダーシップとは、特定の一人のリーダーだけでなく、チームメンバー全員が状況に応じてリーダーシップを発揮する組織運営の考え方です。

近年は、組織の複雑化や人材の多様化により、一人の管理職だけでチームを統率することが難しくなっており、新たなリーダーシップの形として注目されています。

シェアドリーダーシップでは、リーダーシップを特定の個人に集中させるのではなく、チーム内で分散・共有します。
メンバーがそれぞれの専門性や状況に応じて主体的に意思決定や行動を行い、チームとして成果を生み出すことが特徴です。

例えば、プロジェクトの進行管理はAさん、技術判断はBさん、顧客対応はCさんというように、場面ごとにリーダーシップを発揮するメンバーが変わるケースが挙げられます。

このように、役職に関係なくメンバー全員がリーダーシップを担うことで、柔軟性の高い組織運営が可能になります。

従来型リーダーシップとの違い

従来型のリーダーシップは、上司や管理職が意思決定を行い、メンバーがそれに従うトップダウン型が一般的でした。
一方、シェアドリーダーシップでは、チームメンバー全員が主体的に関与しながら意思決定を行います。

主な違いは以下の通りです。

項目

従来型リーダーシップ

シェアドリーダーシップ

意思決定

管理職中心

チームで分散

役割

固定されたリーダー

状況に応じて変化

責任

リーダーに集中

チームで共有

組織の特徴

階層型組織

フラットな組織

メンバーの関与

受動的になりやすい

主体的に関与


このように、シェアドリーダーシップはメンバーの主体性を引き出す点が大きな特徴です。

▶関連記事:リーダーに求められる資質とは?リーダーになるときに必要な資質や育成方法をご紹介します!

サーバントリーダーシップとの違い

サーバントリーダーシップは、リーダーがメンバーを支援し、成長を促すことを重視する考え方です。リーダーは存在しつつも、支援役に回る点が特徴です。

一方、シェアドリーダーシップでは、そもそもリーダーの役割自体がチーム内で共有されます。

つまり、

  • サーバントリーダーシップ:リーダーは存在し、支援型の役割を担う

  • シェアドリーダーシップ:リーダーシップをチーム全体で共有する

という違いがあります。

両者は対立する概念ではなく、シェアドリーダーシップを実現するうえで、サーバントリーダーシップの考え方が活用されることもあります。

オーセンティックリーダーシップとの違い

オーセンティックリーダーシップは、リーダー自身の価値観や信念に基づいて、誠実に行動することを重視するリーダーシップです。リーダーの人格や信頼性に焦点が当てられます。

一方、シェアドリーダーシップは、個人のリーダー像ではなく、チーム全体の関係性や役割分担に焦点を当てた考え方です。

つまり、

  • オーセンティックリーダーシップ:リーダー個人のあり方に焦点

  • シェアドリーダーシップ:チーム全体のリーダーシップに焦点

という点が大きな違いです。

シェアドリーダーシップの理解における注意点

シェアドリーダーシップは、従来のトップダウン型のマネジメントとは異なる考え方であるため、意味や運用方法が正しく理解されないまま捉えられることもあります。
特に、言葉のイメージだけで解釈されると、実際の考え方との間にギャップが生じることも少なくありません。

シェアドリーダーシップを効果的に取り入れるためには、こうした認識の違いを整理し、基本的な考え方を理解しておくことが重要です。
ここでは、シェアドリーダーシップに関してよく見られる誤解と、その考え方について解説します。

リーダーが不要になるわけではない

シェアドリーダーシップという言葉から、「リーダーを置かない組織になる」と考えられることがあります。しかし、実際には組織全体の方向性を示す役割や、最終的な判断を行う役割は引き続き必要です。

シェアドリーダーシップでは、日常的な判断や課題解決をメンバーが担う一方で、チーム全体を俯瞰し、方向性を整える役割は公式なリーダーが担います。

つまり、リーダーがいなくなるのではなく、役割が「指示中心」から「支援・調整中心」へと変化すると考える方が適切です。

このように、シェアドリーダーシップはリーダーの存在を否定するものではなく、リーダーの役割を再定義する考え方といえます。

すべてのメンバーが同じ役割を担うわけではない

シェアドリーダーシップは、全員が同じ役割を担うことを意味するものではありません。
メンバーそれぞれの経験や専門性に応じて、適した場面でリーダーシップを発揮することが前提となります。

例えば、技術的な判断が必要な場面では専門知識をもつメンバーが中心となり、関係者との調整が必要な場面ではコミュニケーション力の高いメンバーが役割を担うといった形です。

このように、役割を固定せず、状況に応じてリーダーシップを分担することで、チーム全体の強みを活かすことができます。

シェアドリーダーシップは「全員が同じことをする」仕組みではなく、「それぞれの強みを活かす」組織運営の考え方です。

従来型のリーダーシップと対立するものではない

シェアドリーダーシップは、従来のトップダウン型のリーダーシップを否定するものではありません。状況によっては、明確な指示や迅速な意思決定が求められる場面もあります。

例えば、緊急対応が必要な場合や、組織全体の方針を決定する場面では、責任者が明確に判断するほうが適している場合もあります。
こうした場面では、従来型のリーダーシップが有効に機能します。

シェアドリーダーシップは、こうした従来型のマネジメントと組み合わせて活用することができます。状況に応じてリーダーシップのあり方を柔軟に使い分けることで、より効果的な組織運営が可能になります。

このように、シェアドリーダーシップは単独で成立するものではなく、組織の状況に応じて活用する選択肢の一つとして理解することが重要です。

シェアドリーダーシップが注目されている背景

近年、組織の運営方法や働き方の変化に伴い、従来のトップダウン型のマネジメントだけでは対応が難しい場面が増えています。こうした環境の変化を背景に、チーム全体で役割を担いながら成果を生み出すシェアドリーダーシップへの関心が高まっています。

ここでは、シェアドリーダーシップが求められる主な背景を整理します。

ビジネス環境の変化(VUCA時代)

現代のビジネス環境は、「VUCA時代」と呼ばれるほど変化が激しく、将来の予測が困難になっています。
VUCAとは、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、先行きが不透明で変化が激しい状況を指します。

市場環境や顧客ニーズ、技術革新などが急速に変化する中で、従来のように上司の判断を待ってから行動するスタイルでは対応が遅れてしまう可能性があります。

こうした状況では、現場に近いメンバーが主体的に判断し、迅速に行動することが重要になります。

シェアドリーダーシップは、意思決定をチーム内で分散させることで、変化への対応力を高めることができるため、VUCA時代に適したリーダーシップの形として注目されています。

人材の多様化・専門性の高度化

近年は、年齢や価値観、キャリアの異なる多様な人材が同じチームで働く機会が増えています。また、業務の高度化に伴い、専門性の高い人材が集まるチームも増えています。

このような環境では、必ずしも管理職がすべての分野に精通しているとは限りません。
むしろ、各分野の専門知識をもつメンバーがリーダーシップを発揮したほうが、合理的な意思決定ができる場合も多くなります。

シェアドリーダーシップは、メンバーそれぞれの強みや専門性を活かしながらチームを運営できるため、多様な人材を活かす組織づくりに適した考え方といえます。

働き方の変化

リモートワークやハイブリッドワークの普及により、チームメンバーが同じ場所で働かないケースが増えています。従来のように、上司が常にメンバーの状況を把握し、細かく指示を出すマネジメントは難しくなっています。

また、拠点が分散している組織やプロジェクト型のチームでは、現場ごとに意思決定を行う必要があります。
このような環境では、メンバー一人ひとりが主体的に動くことが不可欠です。

シェアドリーダーシップを取り入れることで、場所に依存しない自律的なチーム運営が可能となり、分散型組織でも高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。

DX・デジタル化の進展

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、データや情報にアクセスできる範囲が広がっています。
これまで管理職だけがもっていた情報も、現場のメンバーがリアルタイムで確認できるようになりました。

その結果、意思決定を必ずしも上司に集約する必要がなくなり、現場主導で判断できる環境が整いつつあります。データに基づいた意思決定が可能になることで、メンバーが主体的に行動しやすくなっています。

このような環境では、チーム全体でリーダーシップを発揮するシェアドリーダーシップが、より機能しやすくなります。

シェアドリーダーシップのメリット

シェアドリーダーシップは、特定のリーダーだけでなく、チームメンバー全員が状況に応じてリーダーシップを発揮する考え方です。こうした体制は、従来のトップダウン型の組織とは異なる効果をもたらし、チームや組織のあり方にもさまざまな変化を生み出します。

では、シェアドリーダーシップを取り入れることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、組織運営や人材育成の観点から、代表的なメリットを整理して解説します。

メンバーの主体性・当事者意識が高まる

シェアドリーダーシップでは、メンバー一人ひとりがチーム運営に関与するため、主体性や当事者意識が高まりやすくなります。従来のトップダウン型の組織では、上司の指示を待つ受動的な姿勢になりやすい傾向があります。

しかし、シェアドリーダーシップでは、メンバー自身が意思決定や課題解決に関わるため、「自分たちのチームを自分たちで動かす」という意識が生まれます。
その結果、業務への責任感が高まり、自発的な行動や改善提案が増えるようになります。

こうした主体性の向上は、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながります。

▶関連記事:当事者意識とは?意味・ない原因・高める方法までを徹底解説

心理的安全性が高まり発言しやすくなる

シェアドリーダーシップを取り入れると、上下関係にとらわれず意見を出し合う文化が生まれやすくなります。メンバーが役職に関係なくリーダーシップを発揮することで、発言のハードルが下がり、積極的な意見交換が促進されます。

心理的安全性が高いチームでは、失敗を恐れずにアイデアを出すことができるため、問題の早期発見や改善活動が進みやすくなります。

また、メンバー同士の信頼関係も強まり、チームとしての一体感が生まれやすくなります。

こうした環境は、継続的な成長を実現するうえでも重要な要素です。

生産性・意思決定スピードが向上する

シェアドリーダーシップでは、意思決定が分散されるため、スピーディーな対応が可能になります。従来の組織では、判断を上司に確認する必要があり、対応が遅れるケースも少なくありません。

一方、シェアドリーダーシップでは、現場に近いメンバーが判断できるため、迅速な意思決定が実現します。

また、各メンバーの専門性を活かした判断ができるため、より質の高い意思決定につながる場合もあります。

このように、意思決定のスピードと質の両方を向上させることができる点は、大きなメリットといえます。

イノベーションが生まれやすくなる

シェアドリーダーシップは、多様な視点を取り入れやすいため、イノベーションの創出にもつながります。メンバー全員が主体的に意見を出し合うことで、従来の固定観念にとらわれない新しい発想が生まれやすくなります。

また、専門性の異なるメンバーがリーダーシップを発揮することで、異なる知識や経験が融合し、新しい価値が生まれる可能性も高まります。

こうした環境は、新規事業の創出や業務改善など、組織の成長を支える重要な要素となります。

次世代リーダーの育成につながる

シェアドリーダーシップでは、メンバーがリーダー役を経験する機会が増えるため、次世代リーダーの育成にもつながります。従来の組織では、管理職にならない限りリーダー経験を積む機会が限られていました。

しかし、シェアドリーダーシップでは、プロジェクトや課題ごとにメンバーがリーダー役を担うため、自然とリーダーシップスキルを身につけることができます。

このように、組織全体でリーダーを育成できる点は、長期的な組織成長において大きなメリットです。

▶関連記事:タフアサインメントとは?経営人材育成の秘訣を解説

組織の変化対応力が高まる

特定のリーダーに依存しない組織は、変化やトラブルにも強くなります。
例えば、リーダーが不在になった場合でも、他のメンバーが役割を補うことができるため、業務が停滞しにくくなります。

また、複数のメンバーが意思決定に関与していることで、状況の変化にも柔軟に対応できるようになります。

こうしたレジリエンスの高さは、不確実性の高い現代のビジネス環境において重要な要素です。
シェアドリーダーシップは、持続的に成果を出し続ける組織づくりにも貢献します。

シェアドリーダーシップのデメリット

シェアドリーダーシップは、チーム全体でリーダーシップを発揮する柔軟な組織運営の考え方ですが、従来のトップダウン型のマネジメントとは異なる点も多く、導入にあたっては運用面での工夫が求められます。

また、組織の状況やメンバーの成熟度によっては、期待した効果がすぐに得られない場合もあります。こうした点を踏まえ、事前に想定される課題や注意点を理解しておくことが重要です。

ここでは、シェアドリーダーシップを導入する際に押さえておきたい主なデメリットや注意点を整理して解説します。

責任の所在が曖昧になりやすい

シェアドリーダーシップでは、リーダーシップをチームで共有するため、責任の所在が曖昧になりやすいという課題があります。誰でもリーダーシップを発揮できる一方で、「最終的に誰が責任をもつのか」が不明確になる可能性があります。

例えば、プロジェクトの進行が遅れた場合に、責任者が明確でないと問題解決が遅れてしまうことがあります。
また、意思決定に関わるメンバーが増えることで、責任の分散が過度に進んでしまうケースもあります。

こうした課題を防ぐためには、役割分担や意思決定のルールをあらかじめ明確にしておくことが重要です。シェアドリーダーシップは「責任を共有する」考え方ではありますが、「責任が不明確になる」状態とは異なることを意識する必要があります。

合意形成に時間がかかる

シェアドリーダーシップでは、メンバー全員の意見を取り入れながら意思決定を行うため、合意形成に時間がかかる場合があります。特に、価値観や専門分野が異なるメンバーが多い場合は、意見の調整が難しくなることもあります。

また、全員の意見を尊重しすぎると、決定までに時間がかかり、スピードが求められる業務ではデメリットとなることもあります。

このような課題に対応するためには、意思決定の方法を事前に決めておくことが有効です。

例えば、

  • 最終判断者を決めておく

  • 意思決定の期限を設定する

  • 決定方法(多数決・責任者判断など)を明確にする

といったルールを設けることで、スムーズな運用が可能になります。

管理職に高いファシリテーション能力が求められる

シェアドリーダーシップでは、管理職の役割が変化します。従来のように指示を出すだけでなく、メンバーの意見を引き出し、チームの方向性を調整する役割が求められます。

そのため、管理職には以下のような能力が求められるようになります。

  • 意見を引き出すコミュニケーション能力

  • 意見の対立を調整する能力

  • チームの方向性を整理する能力

  • メンバーの強みを活かすマネジメント能力

こうしたファシリテーション能力が不足している場合、チームがまとまらず、シェアドリーダーシップが機能しない可能性もあります。
導入にあたっては、管理職の役割を再定義し、必要なスキルを育成することも重要です。

組織文化の醸成に時間がかかる

シェアドリーダーシップは、短期間で定着するものではありません。
特に、従来のトップダウン型の文化が強い組織では、メンバーが主体的に行動することに慣れていない場合もあります。

例えば、

  • 指示待ちの姿勢が定着している

  • 役職による上下関係が強い

  • 意見を出しにくい雰囲気がある

といった組織では、シェアドリーダーシップが浸透するまでに時間がかかります。

そのため、小さなチームやプロジェクト単位から導入し、成功事例を積み重ねながら徐々に広げていくことが効果的です。組織文化の変革には継続的な取り組みが必要になります。

シェアドリーダーシップが向いている組織・チームの特徴

シェアドリーダーシップはすべての組織に同じように適用できるわけではありません。組織の規模や文化、業務内容によっては、従来型のリーダーシップのほうが適している場合もあります。

そのため、導入を検討する際は、自社の組織特性やチームの状況を踏まえることが重要です。

特に、以下のような特徴をもつ組織・チームでは、シェアドリーダーシップが効果を発揮しやすいといわれています。

小規模またはフラットな組織

シェアドリーダーシップは、小規模な組織やフラットな組織構造と相性が良いとされています。メンバー同士の距離が近く、コミュニケーションが取りやすいため、役割の共有や意思決定の分散が進めやすいからです。

一方で、階層構造が複雑な大規模組織では、意思決定のプロセスが多くなり、シェアドリーダーシップの導入が難しくなる場合があります。
ただし、大規模組織でもプロジェクト単位や部門単位で導入することで、効果を発揮するケースもあります。

まずは小規模チームから導入し、成功事例を積み重ねながら展開していく方法が現実的です。

専門性の高いメンバーが集まるチーム

シェアドリーダーシップは、専門性の高いメンバーが集まるチームで特に効果を発揮します。
IT開発、研究開発、マーケティングなど、それぞれの分野に専門知識が求められる業務では、一人の管理職がすべてを判断することが難しい場合があります。

こうしたチームでは、各分野の専門家がリーダーシップを発揮することで、より合理的で質の高い意思決定が可能になります。また、専門性を尊重する文化が生まれやすく、メンバーのモチベーション向上にもつながります。

専門性の高いチームほど、リーダーシップの分散が自然に機能しやすいといえます。

自律性を重視する組織文化がある

シェアドリーダーシップは、メンバーの主体性を前提とするため、自律性を重視する組織文化と相性が良いといえます。すでにメンバーが主体的に行動する風土がある場合、シェアドリーダーシップはスムーズに定着しやすくなります。

一方で、指示待ちの文化が強い組織では、導入してもメンバーが積極的にリーダーシップを発揮できない場合があります。
その場合は、段階的に自律性を高める取り組みと並行して導入を進めることが重要です。

また、心理的安全性が高く、意見を言いやすい環境が整っていることも、シェアドリーダーシップを機能させる重要な要素となります。

変化のスピードが速い業務環境

変化のスピードが速い業務環境では、シェアドリーダーシップが特に有効です。市場の変化や顧客ニーズの変化に迅速に対応するためには、現場レベルでの意思決定が求められるためです。

例えば、以下のような環境では効果を発揮しやすいといえます。

  • 新規事業開発やスタートアップ企業

  • IT・デジタル関連の業務

  • プロジェクト型の業務

  • 顧客対応が頻繁に発生する業務

このような環境では、トップダウン型の意思決定では対応が遅れる可能性があります。

シェアドリーダーシップを導入することで、現場の判断を活かし、迅速な対応が可能になります。

シェアドリーダーシップの導入ステップ

シェアドリーダーシップは、制度や仕組みだけを導入すればすぐに機能するものではありません。組織文化やメンバーの意識にも関わるため、段階的に導入することが重要です。

ここでは、シェアドリーダーシップを導入する際の基本的なステップを解説します。

1 . 目的・ビジョンを明確にする

まずは、シェアドリーダーシップを導入する目的や目指す組織の姿を明確にすることが重要です。目的が不明確なまま導入すると、メンバーの理解が得られず、形だけの取り組みになってしまう可能性があります。

例えば、以下のような課題を解決する目的で導入されることがあります。

  • 意思決定のスピードを向上させたい

  • メンバーの主体性を高めたい

  • 管理職の負担を軽減したい

  • 自律型組織を実現したい

こうした目的を明確にし、チームや組織全体に共有することで、導入の方向性が統一されます。

2 . リーダーシップの定義を共有する

次に、シェアドリーダーシップにおける「リーダーシップとは何か」を組織内で共有します。
リーダーシップの定義が曖昧なままだと、メンバーによって解釈が異なり、運用にばらつきが生じる可能性があります。

例えば、以下のような観点を整理しておくと効果的です。

  • どのような行動をリーダーシップとするのか

  • どの場面でリーダーシップを発揮するのか

  • 公式リーダーの役割はどう変わるのか

こうした共通認識をもつことで、メンバーがリーダーシップを発揮しやすい環境を整えることができます。

3 . 役割と責任の範囲を整理する

シェアドリーダーシップでは、リーダーシップを共有する一方で、役割と責任の範囲を明確にすることが重要です。
役割分担が曖昧になると、責任の所在が不明確になり、意思決定が滞る可能性があります。

例えば、以下のようなポイントを整理します。

  • 最終意思決定者の設定

  • プロジェクトごとの責任者の設定

  • メンバーごとの得意分野の明確化

  • 意思決定プロセスのルール化

こうしたルールを設けることで、シェアドリーダーシップを円滑に運用することができます。

4 . 小規模チームから試験的に導入する

シェアドリーダーシップは、まず小規模チームやプロジェクト単位で試験的に導入することが効果的です。いきなり全社で導入すると、混乱が生じやすく、定着しにくくなります。

例えば、

  • プロジェクトチーム

  • 新規事業チーム

  • 部門内の一部チーム

など、比較的柔軟に運用しやすい単位から導入することで、成功事例を作ることができます。
成功事例を共有することで、他のチームへの展開もスムーズになります。

5 . 振り返りと改善を繰り返す

シェアドリーダーシップは、一度導入すれば完成するものではありません。
運用しながら課題を洗い出し、継続的に改善していくことが重要です。

例えば、定期的に以下のような振り返りを行います。

  • 意思決定はスムーズに行われているか

  • 役割分担は適切か

  • メンバーの主体性は高まっているか

  • コミュニケーションに課題はないか

こうした振り返りを行い、改善を重ねることで、組織に合ったシェアドリーダーシップの形を構築できます。

シェアドリーダーシップを定着させるためのポイント

シェアドリーダーシップは、導入するだけでは十分に機能しません。
組織文化として根付かせるためには、メンバーが主体的に関わり、リーダーシップを発揮しやすい環境づくりが必要です。

ここでは、シェアドリーダーシップを定着させるための具体的なポイントを紹介します。

心理的安全性の高い環境をつくる

シェアドリーダーシップを機能させるためには、メンバーが自由に意見を発信できる心理的安全性の高い環境が不可欠です。意見を出すことに対して不安や遠慮があると、リーダーシップを共有する取り組みは形骸化してしまいます。

例えば、以下のような取り組みが有効です。

  • 意見を否定しないコミュニケーションを心がける

  • 役職に関係なく発言できる場を設ける

  • 失敗を責めず、学びとして共有する文化をつくる

メンバーが安心して発言できる環境を整えることで、自然とリーダーシップが分散され、主体的な行動が生まれやすくなります。

フォロワーシップの理解を促進する

シェアドリーダーシップでは、リーダーシップだけでなくフォロワーシップの考え方も重要です。全員がリーダーとして振る舞うだけではなく、必要に応じて他者を支える役割を担うことが求められます。

例えば、以下のような姿勢がフォロワーシップにあたります。

  • 他メンバーの提案を積極的に支援する

  • 専門分野で主体的に貢献する

  • 必要な場面ではサポート役に回る

このように、リーダーとフォロワーの役割を柔軟に切り替えることが、シェアドリーダーシップの定着につながります。

情報共有の仕組みを整備する

リーダーシップを共有するためには、情報の透明性を高めることが重要です。
情報が一部のメンバーに偏っていると、主体的な意思決定が難しくなります。

例えば、以下のような仕組みを整備すると効果的です。

  • プロジェクトの進捗を共有するツールの活用

  • 会議内容の記録・共有

  • 意思決定プロセスの可視化

情報共有の仕組みを整えることで、メンバーが状況を理解し、自律的に行動しやすくなります。

対話・フィードバックの機会を増やす

シェアドリーダーシップを定着させるためには、日常的な対話とフィードバックの機会を増やすことも重要です。
メンバー同士の理解が深まることで、リーダーシップの共有がスムーズになります。

例えば、以下のような取り組みが考えられます。

  • 定期的な1on1ミーティング

  • チームでの振り返りミーティング

  • カジュアルな意見交換の場の設定

こうした対話の機会を設けることで、メンバー同士の信頼関係が強化され、主体的な行動が促進されます。

管理職の役割を再定義する

シェアドリーダーシップでは、管理職の役割も従来とは変化します。
従来のようにすべてを指示・管理するのではなく、メンバーの主体性を引き出す支援役としての役割が求められます。

例えば、管理職には以下のような役割が期待されます。

  • メンバーの意見を引き出すファシリテーター

  • チームの方向性を示すガイド役

  • メンバーの成長を支援するコーチ

管理職がこのような役割を意識することで、メンバーがリーダーシップを発揮しやすい環境が整い、シェアドリーダーシップの定着につながります。

シェアドリーダーシップ導入企業の事例

シェアドリーダーシップは理論だけでなく、実際の企業でも導入が進んでいます。
導入企業では、メンバーの主体性向上や意思決定の迅速化など、組織運営におけるさまざまな成果が報告されています。

ここでは、シェアドリーダーシップを導入した企業に見られる代表的な事例の特徴を紹介します。

自律型チームを実現した企業事例

シェアドリーダーシップの導入により、現場主導で業務を進める自律型チームへ移行した企業があります。

例えば、これまでは業務の進め方や優先順位について、都度上司の承認を得ていたチームが、導入後はプロジェクト単位で役割を分担し、メンバー同士で判断・調整を行う体制に変更しました。

具体的には、

  • 進行管理は調整力のあるメンバーが担当

  • 技術的な判断は専門スキルをもつメンバーが担当

  • 顧客対応は現場に近い担当者が判断

といったように、テーマごとにリーダー役を分担する運用に切り替えたケースです。

その結果、日常的な判断を現場で完結できるようになり、意思決定のスピードが向上するとともに、管理職は全体の方向性や課題解決支援に集中できるようになりました。
結果として、チーム全体の主体性向上やパフォーマンス改善にもつながっています。

対話文化を強化した企業事例

シェアドリーダーシップの導入をきっかけに、対話を重視したチーム運営へと変化した企業もあります。

例えば、従来は上司からの指示をもとに業務を進める形が中心だったチームが、週次のミーティングで課題共有や役割分担をメンバー同士で決める運用に変更しました。
また、プロジェクトごとに短時間の振り返り(レビュー)を実施し、改善点をチーム全体で議論する仕組みを導入したケースもあります。

こうした取り組みにより、

  • 現場の課題が早期に共有されるようになった

  • 部門間の調整がメンバー主導で進むようになった

  • 小さな改善提案が増えた

といった変化が見られました。
結果として、意見交換が活発になり、心理的安全性の向上やチームの一体感の強化につながっています。

多様な人材活用に成功した企業事例

シェアドリーダーシップを導入したことで、役職に関係なくメンバーが活躍する機会が増えた企業もあります。

例えば、従来は管理職のみがプロジェクトを主導していた組織において、テーマごとにリーダー役を任せる仕組みを導入しました。

その結果、

  • 若手社員が新規ツール導入プロジェクトをリード

  • データ分析に強いメンバーが業務改善を主導

  • 現場経験の長い社員が業務フローの見直しを担当

といったように、それぞれの強みを活かした役割分担が進みました。

このような取り組みにより、これまで埋もれていたスキルや経験が活用されるようになり、多様な視点を取り入れた意思決定が可能になりました。
その結果、組織の柔軟性が高まり、継続的な改善や新しい取り組みが生まれやすくなっています。

シェアドリーダーシップを育成するための取り組み

シェアドリーダーシップは、制度として導入するだけでは定着しません。メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮できるように、人材育成の仕組みを整えることが重要です。

ここでは、シェアドリーダーシップを育成するための具体的な取り組みを紹介します。

リーダーシップ研修の実施

シェアドリーダーシップを育成するためには、メンバー全体を対象としたリーダーシップ研修の実施が効果的です。
従来のように管理職のみを対象とするのではなく、一般社員や若手社員にもリーダーシップの考え方を共有することが重要です。

例えば、以下のような内容を取り入れると効果的です。

  • シェアドリーダーシップの基本的な考え方

  • 主体的に行動するための思考法

  • チームでの意思決定の進め方

  • フォロワーシップの重要性

こうした研修を通じて、リーダーシップを「役職ではなく行動」として捉える意識を醸成できます。

▶関連記事:リーダーシップ研修の設計方法|真のリーダーを育成する研修のポイント

1on1や対話の機会の増加

シェアドリーダーシップの育成には、日常的な対話の機会を増やすことも重要です。
メンバーの考えや意見を引き出すことで、主体性や責任感を育むことができます。

例えば、以下のような取り組みが考えられます。

  • 定期的な1on1ミーティングの実施

  • チーム内での振り返りミーティング

  • 部門横断の意見交換会

こうした対話を通じて、メンバーが自分の役割を意識し、主体的に行動する機会が増えていきます。

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チームでの意思決定プロセスの導入

シェアドリーダーシップを育成するためには、チームで意思決定を行う機会を増やすことも重要です。実際に意思決定に関わる経験を積むことで、メンバーのリーダーシップが育まれます。

例えば、以下のような方法があります。

  • プロジェクトの方針をチームで決定する

  • 業務改善案をメンバー主体で検討する

  • 役割分担をチームで決める

このように、意思決定のプロセスにメンバーを参加させることで、責任感や主体性の向上につながります。

評価制度の見直し

シェアドリーダーシップを育成するためには、評価制度の見直しも重要です。
従来のように個人の成果のみを評価する仕組みでは、チーム全体でリーダーシップを発揮する行動が評価されにくくなります。

例えば、以下のような観点を評価に取り入れることが考えられます。

  • チームへの貢献度

  • 主体的な行動や提案

  • 他メンバーの支援・協働姿勢

  • 課題解決への関与

このように評価基準を見直すことで、メンバーがリーダーシップを発揮しやすくなり、シェアドリーダーシップの育成につながります。

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まとめ|シェアドリーダーシップで自律型組織を実現する

シェアドリーダーシップは、特定のリーダーに依存するのではなく、メンバー一人ひとりが主体的にリーダーシップを発揮する組織運営の考え方です。変化の速いビジネス環境において、意思決定のスピード向上や自律型組織の実現につながる手法として注目されています。

一方で、導入には段階的な取り組みや、心理的安全性の確保、評価制度の見直しなど、組織全体での環境づくりも重要です。
制度として導入するだけでなく、人材育成や日常的なコミュニケーションを通じて、継続的に定着させていくことが求められます。

こうしたシェアドリーダーシップの実現には、継続的な教育・研修の仕組みづくりも有効です。

イー・コミュニケーションズのeラーニングプラットフォーム「SAKU-SAKU Testing」では、自社オリジナルの研修内容や問題を搭載し、受講者に応じてコンテンツの出し分けが可能なため、組織の課題や対象者に合わせた柔軟な教育を実施できます。

また、教育担当者の声を反映した直感的なUI設計により、運用の負担を抑えながら継続的な人材育成を行える点も特長です。シェアドリーダーシップを支える自律型人材の育成手段として、こうした仕組みの活用も検討してみてください。

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