職長・安全衛生責任者教育の「オンライン化」はできる?最新動向と必須知識

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職長・安全衛生責任者教育の実施は労働安全衛生法で義務付けられています。対面での実施が多いですが、人的リソースが足りないといった理由でオンライン化したいという方もいるのではないでしょうか。

本記事では、職長・安全衛生責任者教育がオンライン化できるのか、どのようにオンライン化したらいいのか、最新の法令を紐解き、オンライン化のステップを解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.職長教育と安全衛生責任者教育
    1. 1.1.職長教育・安全衛生責任者教育とは
    2. 1.2.職長教育と安全衛生責任者教育の違い
  2. 2.オンライン学習(eラーニング)は「法令違反」にならないのか?
    1. 2.1.建設業に特化した安全衛生責任者教育のポイント
  3. 3.対面教育からオンライン(eラーニング)へ移行するメリット
    1. 3.1.コスト削減と業務効率化:教育担当者の負担を大幅軽減
    2. 3.2.受講者の利便性向上:場所・時間を選ばない学習スタイル
    3. 3.3.教育品質の均一化と標準化を実現
  4. 4.オンライン教育システムの選び方と導入ステップ
    1. 4.1.選び方の重要ポイント:機能・価格・サポート体制
    2. 4.2.オンライン化成功のための導入・運用ステップ
  5. 5.対面とオンラインのハイブリッド学習(ブレンディッドラーニング)の可能性
    1. 5.1.実技・ディスカッションは対面、知識習得はオンラインで
    2. 5.2.ハイブリッド導入による定着率向上の具体的な効果
  6. 6.【まとめ】職長教育のオンライン化で「安全文化」を確立する

職長教育と安全衛生責任者教育

まずはじめに、職長教育と安全衛生責任者教育がどのような教育なのか、またその違いについて解説します。

職長教育・安全衛生責任者教育とは

「職長教育」と「安全衛生責任者教育」は、労働安全衛生法(安衛法)に基づき避けて通れない重要な教育です。

特に、現場の第一線で指揮監督を行う職長は、危険を未然に防ぎ、作業員の安全を守る「安全の要」として重要な役割を担っています。

しかし、これらの教育の対象者や内容が混同され、形式的な実施に留まってしまうという課題を抱える企業は少なくありません。

  • 職長教育(安衛法第60条): 建設業や製造業など特定業種において、新たに職務に就く職長など作業員を直接指導・監督する者に義務付けられる教育です。作業方法の決定や作業員の指導、危険性・有害性調査(リスクアセスメント)などが主な内容です。
  • 安全衛生責任者教育(安衛法第16条): 建設業など特定業種の複数の事業者が混在する現場(特定元方事業者と関係請負人が混在)で、連絡調整を行う安全衛生責任者に義務付けられる教育です。

職長教育と安全衛生責任者教育の違い

職長教育と安全衛生責任者教育は前述の通りに違いがありますが、具体的な教育項目の違いは以下の表のとおりです。

プログラム

時間

職長教育

安全衛生責任者教育

作業方法の決定及び労働者の配置に関すること

2

労働者に対する指導又は監督の方法に関すること

2.5

危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること

4

異常時等における措置に関すること

1.5

その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること

2

安全衛生責任者の職務等

1

×

統括安全衛生管理の進め方

1

×

合計時間

12時間

14時間

職長教育の項目に「安全衛生責任者の職務等(1時間)」「統括安全衛生管理の進め方(1時間)」が追加されたものが安全衛生責任者教育です。

建設業では、職長が安全衛生責任者に選任されることが多く、厚生労働省では「職長教育」と「安全衛生責任者教育」を統合した「職長・安全衛生責任者教育」の実施を推進しています。

職長教育・安全衛生責任者教育の重要性が増す中で、教育機会を増やし、より質の高い安全衛生教育を効率的に実施するためのオンライン化が求められています。

▶関連記事:安全衛生教育とは? 法定義務をクリアし、労働災害ゼロを目指すeラーニング化のポイント

オンライン学習(eラーニング)は「法令違反」にならないのか?

「職長・安全衛生責任者教育をオンラインで実施したら、法令違反になるのではないか?」これは、対面教育からの移行を検討されている担当者様が最も気になる点です。

結論からいえば、厚生労働省の通達に基づき、要件を満たせばeラーニングなどのオンライン学習で実施することが可能です。

以前は対面での集合研修が一般的でしたが、技術革新と社会情勢の変化により、国も教育手法の柔軟化を認める方向へと動いています。ただし、法令の要件を満たすためには、単に動画を配信するだけでは不十分です。

質の高い教育を担保するために、以下の要件を満たすシステムが必要です。

法令遵守のための必須要件

オンライン化での対応例

学習時間の確保

受講時間・進捗状況をシステムで詳細に記録・管理できる機能

本人確認

ログインIDや、受講中の定期的なAIによる顔認証などの不正受講防止策

質疑応答の確保

講師や担当者へ質問できるチャット機能、メールでの質問受付体制

教育効果の把握

理解度を確認するための確認テストや修了試験を実施できる機能

討議方式の教育

同一時間に参加した受講者の相互のやりとりが可能となるよう双方向性が確保されていること

→eラー二ングでの対応は難しいので、対面での実施やZoom等のWeb会議ツールでの実施が必要になる

これらの機能を備えたeラーニングシステムを導入することで、法的に問題なく教育を実施できます。システムの活用により、会場手配や日程調整の煩雑さから解放され、負荷を大幅に軽減できます。

建設業に特化した安全衛生責任者教育のポイント

特に建設業の担当者様にとっては、安全衛生責任者教育のオンライン化は、教育の実施効率を飛躍的に高めます。

建設現場では、複数の事業者が同時に作業を行う「混在作業」が日常茶飯事であり、その現場ごとに安全衛生責任者を選任しなければなりません。

この「混在作業」こそが、建設現場における労働災害発生の大きな要因の一つです。

安全衛生責任者が果たすべき最も重要な役割は、「作業間の連絡調整」であり、この教育内容をオンラインでいかに効果的に伝えるかがカギとなります。

オンライン教育教材を作成する際は、

  1. 建設現場のリアルな映像を活用する: 危険予知訓練(KY活動)や作業指示の具体例を動画で示し、現場感を損なわないように工夫します。
  2. ケーススタディを重視する: 過去の災害事例を基に、オンライン上でグループワーク(チャットや掲示板機能)を疑似的に行い、連絡調整の重要性を体感させる。
  3. リスクアセスメントを重点的に解説する: 職長が危険源を特定し、リスクを低減する具体的な手順を、テンプレートや実演を通じて教えます。

このように、建設業特有の教育ニーズに合わせた教材設計を行うことで、対面教育以上の教育品質を担保することが可能になります。

現場の職長が自社の安全管理体制を深く理解し、実践できる能力を養うことが、安全衛生責任者教育のオンライン化の最終的な効果目標となります。

▶関連記事:特別教育はオンライン化でここまで変わる!法令対応と効率化を同時に実現させる方法を解説

対面教育からオンライン(eラーニング)へ移行するメリット

オンラインでの教育実施が法令上可能だと分かれば、次はメリットを把握し、オンライン化を進めていく段階です。

対面教育の「大変さ」をオンライン(eラーニング)がどのように解消し、貴社にもたらす効果を具体的に見ていきましょう。

コスト削減と業務効率化:教育担当者の負担を大幅軽減

集合研修による教育は、多くのコストと教育担当者様の膨大な事務作業を発生させます。これは、職長・安全衛生責任者教育を継続的に行う企業にとって、長年の大きな課題となっていました。

対面教育からeラーニングへ移行することで、これらの課題は解消されます。

オンライン化で削減できるコストと負担の例:

  • 会場費・交通費・宿泊費の削減: 全国に拠点がある場合、受講者が一堂に会する必要がなくなり、これらの間接コストをゼロに近づけられます。
  • 印刷・教材費の削減: 紙媒体の資料が不要になり、デジタル教材として提供することで大幅にコストダウンできます。
  • 事務作業の大幅な効率化: 受付、出欠確認、採点、修了証の発行といった手作業がシステムで自動化され、担当者様の残業時間を削減する効果が期待できます。

オンラインの学習管理システム(LMS)を活用し、教育担当者様の役割を「事務作業者」から「教育内容の企画者」へと変革することができます。

そのため、より本質的な教育の質向上に時間を割けるようになります。

受講者の利便性向上:場所・時間を選ばない学習スタイル

現場で働く職長や安全衛生責任者にとって、「業務を止めて丸一日研修に参加する」ことは、大きな負担やストレスとなります。

特に工期が迫っている場合などは、教育の受講が遅れがちになり、結果的に義務を果たせないという課題に直面します。

オンライン(eラーニング)は、この現場の課題を解決します。

  • オンデマンド学習の実現: インターネット環境さえあれば、スマートフォンやタブレットから、24時間365日いつでも受講可能になります。現場の休憩時間や、受講者の自宅での隙間時間を有効活用することができます。
  • 「中断・再開」の自由: 一度に長時間の集中を強いられることなく、自分のペースで学習を進めることができます。例えば、「今日はリスクアセスメントだけ」「明日は関係法令」というように、細切れの学習が可能です。

この柔軟な学習スタイルは、受講者にとっての心理的ハードルを下げ、結果として受講率の向上という効果をもたらします。

「教育は義務だけど面倒」という意識を「自分のペースで学べる」というポジティブな意識へと変えることが、オンライン化の隠れたメリットです。

教育品質の均一化と標準化を実現

対面教育の最大の課題は、講師の力量によって教育内容にバラつきが生じることです。

ベテラン講師であれば質が高い教育を提供できますが、教育担当者が入れ替わった場合や、拠点ごとに講師が変わる場合、受講者間で習得する知識に差が出てしまいます。

このバラつきは、安全管理という最も均一性が求められる分野においては致命的です。

eラーニングは、この教育品質のばらつきを解決することができます。

  • プロによる統一教材: 一度、質の高い講師が作成・監修した動画教材をシステムにアップロードすれば、全国どの拠点の職長も、同じレベルの教育を、何度でも繰り返し受講できます。
  • 進捗管理機能による標準化: LMSの機能により、「Aさんはこのコンテンツが未修了」「Bさんは確認テストの点数が低い」ということが一目で把握でき、理解が遅れている受講者に対して個別のフォローアップが可能です。

この教育品質の均一化は、全社の安全衛生教育のレベルを底上げする効果があり、結果的に現場の安全文化を確立するための基盤を築くことにつながります。

オンライン教育システムの選び方と導入ステップ

職長・安全衛生責任者教育のオンライン化を成功させるには、自社に最適なシステムを選ぶことが肝心です。法令遵守と学習効果を両立するための、具体的なシステム選定基準とスムーズな導入手順を解説します。

選び方の重要ポイント:機能・価格・サポート体制

オンラインの学習管理システム(LMS)は数多くありますが、安全衛生教育で使うシステムは、一般の研修とは異なり、労働安全衛生法という「法令の壁」があるため、選び方を間違えると大変なリスクを負うことになります。

失敗しないためのLMS選び3つのチェックポイント:

  • 法令対応機能の充実度(最重要): 受講履歴の詳細な記録(ログ)、不正受講を防ぐための本人確認機能(AI監視や定期的な確認)、修了テストの実施機能など、法令をクリアできる機能が備わっているかを必ず確認してください。
  • 操作性と受講者の利便性: 現場の職長はITリテラシーが高くない場合もあります。スマートフォンで迷わず操作できるか、視覚的に分かりやすいインターフェースであるかどうかが、受講率に直結します。
  • 業界特化の教材・サポート体制: 建設業界向けの教材やテンプレートが提供されているか、導入後の法改正対応や運用サポート(ヘルプデスク)が充実しているかは、長期運用におけるポイントです。

まずは無料トライアルなどを活用して、教育担当者様と数名の職長の方に実際に使ってもらい、操作性を確かめることが、導入を成功させるための近道です。

オンライン化成功のための導入・運用ステップ

システムを選定しても、現場の反発や運用の煩雑さから、オンライン化が定着しないという課題もあります。特に長年対面教育を行ってきた企業では、「オンラインは不安だ」という声が上がりやすいものです。

スムーズな導入と定着化を図るためのステップを解説します。

導入ステップ

具体的なアクション(解決策)

期待される効果

ステップ1:法令要件の再確認

安全衛生教育の対象者・教育時間を法令に基づいて整理。システム導入でどこまで代替可能かを明確にする。

法的な不安を払拭し、移行計画の説得力を高める。

ステップ2:スモールスタート

全員一斉ではなく、ITリテラシーの高い部署や、少人数のグループでeラーニングを試験導入する。

現場からのフィードバックを得て、本格導入前に教材や運用ルールを改善できる。

ステップ3:マニュアルの徹底

受講者向けに「スマートフォンでの受講手順」など、極力シンプルな操作マニュアルを作成・配布する。

受講方法への質問対応の負荷を減らし、受講率を高める。

ステップ4:フォローアップ体制の構築

eラーニングの学習進捗を定期的にチェックし、未修了者には個別に受講を促す。質問窓口(講師へのチャット機能など)を明確にする。

修了率を最大化し、教育の義務を確実に果たす。

これらのステップを踏むことで、現場に寄り添った形でオンライン教育を導入でき、教育の効率化と品質向上の効果を最大限に引き出すことができます。

対面とオンラインのハイブリッド学習(ブレンディッドラーニング)の可能性

オンライン化のメリットは大きいものの、「ディスカッションは対面でなければ難しいだろう」と感じる担当者様もいらっしゃいます。その課題を解決するのが、ブレンディッドラーニング(ハイブリッド学習)という手法です。

知識習得はオンライン、ディスカッションは対面という「いいとこ取り」の学習スタイルで、学習効果を最大化します。

実技・ディスカッションは対面、知識習得はオンラインで

職長教育における重要なカリキュラムの一つに、「危険性または有害性の調査(リスクアセスメント)の方法」や「作業手順の作成」といった、実践的な実技・ディスカッションが含まれます。これらは、現場の具体的な状況を想定し、参加者同士で意見を交換することが重要です。

解決策としてのブレンディッドラーニングの運用モデルは以下の通りです。

  • オンライン学習フェーズ(座学): 職長に、関係法令や安全衛生管理体制などの知識習得が必要な項目をeラーニングで受講してもらいます。事前に知識をインプットすることで、集合研修の時間を大幅に短縮します。
  • 対面研修フェーズ(実践): 現場のシミュレーション、危険予知訓練(KYT)、ロールプレイング、集合研修での質疑応答など、実践的スキルの習得と、ディスカッションによる定着に特化したプログラムを短時間(半日など)で実施します。

この手法により、長時間に及ぶ対面教育の負担を減らしつつ、オンラインだけでは補えない「現場で活きる能力」を確実に養う効果が生まれます。

ハイブリッド導入による定着率向上の具体的な効果

ブレンディッドラーニングは、受講者がオンラインで学んだ知識を、対面で「使う」機会を提供するため、知識の定着率を飛躍的に向上させる効果があります。

  • 受講前の予習促進: eラーニングで事前に基礎知識をインプットさせることで、対面研修のスタートラインが揃い、議論がスムーズに進みます。
  • 現場での応用力向上: 対面研修を「知識をアウトプットする場」と位置づけることで、職長が学んだ内容を自分自身の言葉や行動に落とし込む練習ができます。
  • 個別最適化: オンラインでの修了テストの結果が悪い受講者を対面研修で重点的にフォローするなど、データに基づいた指導が可能になります。

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【まとめ】職長教育のオンライン化で「安全文化」を確立する

職長・安全衛生責任者教育のオンライン化は、単なるコスト削減や業務効率化の手段に留まりません。これは、労働安全衛生法が求める安全管理体制を、時代に即した形でより確実に、より高品質に、そしてより継続的に実現するための、戦略的な投資です。

対面教育の「大変さ」を熟知されている担当者様にとって、オンライン(eラーニング)の導入は、教育の義務を果たすだけでなく、教育品質の均一化と受講者の利便性向上という大きな効果をもたらします。最終的には、現場の職長一人ひとりが高い安全意識をもち、自律的に行動できる「安全文化」の確立につながるのです。

貴社が抱える教育の課題は、適切なeラーニングプラットフォームを選ぶことで、解決できます。

弊社のeラーニングプラットフォーム「SAKU-SAKU Testingは、職長・安全衛生責任者教育の法令要件を満たす学習履歴管理機能を備え、AI不正検知サービス「サクテスAIMONITORを活用することで、不正受講を防止し、法的に厳格な教育の実施をサポートします。

導入から運用、現場への定着化に至るまで、経験豊富な専門チームが一貫してサポートいたします。

特別教育・安全衛生教育での導入実績も豊富です。まずは一度、貴社の教育体制に関する課題をお聞かせください。

共に最適なオンライン化の解決策をご提案いたします。

導入ステップと活用ポイント:

  1. 現状の課題ヒアリング: 貴社の教育にかかるコスト、未修了者率、現場のIT環境などを詳細に把握します。
  2. 法令対応プラン策定: 安全衛生教育の対象者・時間に応じた最適なシステム機能(AI監視の利用可否など)を設計します。
  3. スモールトライアルの実施: 現場の職長数名に試験的に受講してもらい、操作性や学習効果を検証します。
  4. 本格導入と運用サポート: 導入時や運用開始後のサポートなど、継続的にご支援いたします。

職長・安全衛生責任者教育のオンライン化をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

 

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