公益通報とは?内部通報との違いや要件、企業の対応と体制構築を解説

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企業におけるコンプライアンスの重要性が高まるなか、「公益通報」という言葉を耳にする機会が増えています。企業の不祥事がSNSなどを通じて瞬時に拡散される現代において、社内の不正を早期に発見し、自浄作用を働かせる仕組みは企業存続の要と言っても過言ではありません。

しかし、「公益通報の正確な定義がわからない」「内部通報や内部告発と何が違うのか」「実際に通報があった場合、どう対応すればよいのか」と悩む人事・コンプライアンス担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、公益通報の基本的な定義から、類似用語との違い、法的に保護されるための要件、通報を受けた際の適切な対応フロー、そして企業に求められる体制整備のポイントまでを網羅的に解説します。自社の健全な組織文化を育成するための参考として、ぜひご活用ください。

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目次[非表示]

  1. 1.公益通報の基本と制度の目的
    1. 1.1.公益通報の定義
    2. 1.2.公益通報者保護法制定の背景
  2. 2.類似用語との違い
    1. 2.1.内部通報との違い
    2. 2.2.内部告発との違い
  3. 3.法的保護の要件
    1. 3.1.対象となる通報者
    2. 3.2.対象となる行為
    3. 3.3.通報の正当な目的
  4. 4.3つの通報先
    1. 4.1.事業者内部への通報(1号通報)
    2. 4.2.行政機関への通報(2号通報)
    3. 4.3.外部機関への通報(3号通報)
  5. 5.通報受付時の対応フロー
    1. 5.1.機密保持と不利益取扱いの禁止
    2. 5.2.受領通知とヒアリング
    3. 5.3.客観的な事実調査
    4. 5.4.不正の是正と再発防止
    5. 5.5.結果のフィードバック
  6. 6.対応体制の整備と社内教育
    1. 6.1.窓口の設置
    2. 6.2.社内規定の策定
    3. 6.3.社内周知と教育の徹底
  7. 7.よくある質問
    1. 7.1.ハラスメントは対象になるか
    2. 7.2.匿名の通報は保護されるか
    3. 7.3.事実誤認時のペナルティ
  8. 8.まとめ|コンプライアンス意識を高める効果的な社内教育を

公益通報の基本と制度の目的

企業がコンプライアンス体制を構築するうえで、まずは公益通報制度の根幹を正しく理解することが第一歩となります。

ここでは、公益通報の定義と、この制度を支える「公益通報者保護法」が作られた背景について解説します。

公益通報の定義

公益通報とは、企業などの組織で働く従業員(パート、アルバイト、派遣社員、退職者、役員なども含む)が、自社内で起きている、あるいは起きようとしている「法令違反」などの不正行為を、決められた窓口に通報することを指します。

これは、単なる職場の愚痴や個人的なトラブルの報告とは異なり、「社会の利益(公益)を守るため」に行われるという点が最大の特徴です。たとえば、自社製品のデータ改ざん、組織的な脱税、環境基準に違反する廃棄物の不法投棄などがこれに該当します。

通報者は勇気を出して不正の事実を知らせてくれた存在ですが、かつては通報したことによって組織内で不利益な扱い(解雇や降格、嫌がらせなど)を受けるケースが後を絶ちませんでした。そうした事態を防ぎ、通報者を法的に守るために整備されたのが公益通報の仕組みです。

公益通報者保護法制定の背景

公益通報の仕組みを定めた「公益通報者保護法」は、2004年に成立し、2006年から施行されました。この法律が制定された背景には、2000年代初頭に相次いで発覚した企業の不祥事があります。

当時、食品の産地偽装や自動車のリコール隠しなど、消費者の安全や社会の信頼を根本から揺るがす重大な事件が立て続けに明るみに出ました。そして、これらの不祥事の多くは、内部の従業員からの告発によって発覚したという共通点がありました。

しかし、当時の日本には内部告発を行った労働者を保護する明確なルールがなく、組織の不正を正そうとした人が結果的に職場を追われるという理不尽な状況が生じていました。これでは、不正を見つけても誰も声を上げられず、企業内部で問題が隠蔽され続けてしまいます。

そこで、国民の生命や財産を守る(公益の保護)と同時に、勇気ある通報者を不当な扱いから守るためのルールとして公益通報者保護法が誕生しました。現在では数回の法改正を経て、企業側に通報窓口の整備を義務付ける(※従業員数300人超の企業の場合)など、より実効性の高い制度へと進化しています。

さらに2026年12月1日施行の改正法では、通報者の保護範囲が拡大され、不利益な取扱いに対する罰則が大幅に強化されるなど、企業にはより厳格な対応が求められるようになっています。

類似用語との違い

コンプライアンスの現場では、「公益通報」「内部通報」「内部告発」という言葉が飛び交います。これらは似たような文脈で使われますが、法律上の保護対象となるか否か、また通報先はどこかといった点で明確な違いがあります。実務を担当するうえでは、これらのニュアンスの違いを正確に把握しておくことが不可欠です。

内部通報との違い

内部通報とは、組織の従業員が、社内で発生している不正行為や規程違反、ハラスメントなどの問題を、企業が設置した「社内の窓口」または「企業が指定した外部の窓口(顧問弁護士など)」に知らせる行為全般を指す言葉です。

公益通報と内部通報の違いは、「法律で定められた要件を満たしているかどうか」にあります。

公益通報は、公益通報者保護法で定められた特定の法令違反に対する通報であり、後述する厳格な要件を満たす必要があります。一方で内部通報は、法律違反に限らず、社内ルールの違反や職場の人間関係のトラブルなど、企業が独自に定めた幅広い事案を対象に含めることが一般的です。

つまり、「内部通報という大きな枠組みのなかに、法律で保護される公益通報が含まれている」という関係性になります。企業としては、法律の枠に囚われず、広く内部通報を受け付ける体制を整えることで、小さな問題を早期に発見し、大きな不祥事への発展を防ぐことができます。

▶関連記事:内部通報制度とは?2026年改正法への対応と実効性のある体制構築・教育を徹底解説

内部告発との違い

内部告発とは、組織の内部の人間が、自社の不正行為を「マスメディア(テレビ・新聞・雑誌)」「SNS」「消費者団体」といった、企業とは直接関係のない外部の第三者に対して暴露する行為を指します。

内部告発は、企業の不祥事を世に知らしめるきっかけになる一方で、企業にとっては突然の報道による深刻なブランドイメージの低下や、経営への致命的なダメージをもたらすリスクがあります。また、十分な証拠がないままセンセーショナルに告発された場合、事実確認が困難になるという問題もはらんでいます。

公益通報制度の目的の一つは、こうした外部への「内部告発」が行われる前に、組織内部(または行政機関)で問題を吸い上げ、適切に対処するルートを確立することにあります。従業員が「社内に言っても無駄だ」「もみ消される」と感じたとき、内部告発という手段に踏み切る傾向があるため、信頼される社内窓口の存在が極めて重要になります。

法的保護の要件

従業員からの報告がすべて「公益通報」として無条件に法律で保護されるわけではありません。公益通報者保護法の保護(解雇の無効や不利益取扱いの禁止など)を受けるためには、通報者自身の属性、通報する内容、そして通報の目的に関して、一定の要件をクリアする必要があります。ここでは、その具体的な条件について詳しく解説します。

対象となる通報者

公益通報を行うことができる「通報者」の範囲は、法改正によって段階的に拡大されてきました。現在では、正社員だけでなく、組織で働く多様な立場の人が対象として認められています。

対象となる主な通報者は以下の通りです。

労働者: 正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、企業と雇用関係にあるすべての人。

派遣労働者: 派遣元企業だけでなく、実際に働いている派遣先企業の不正を通報する場合も保護の対象となります。

退職者: 退職後1年以内の元労働者や元派遣労働者。退職後に不正に気付いた場合や、在職中は報復を恐れて通報できなかったケースを救済するためです。

役員: 取締役、監査役など。組織の経営に関わる層であっても、一定の条件を満たせば保護の対象となります。

フリーランス(特定受託事業者): 2026年の法改正により新たに追加されました。事業者と業務委託関係にある(または終了後1年以内の)フリーランスが保護対象となり、公益通報を理由とした契約解除などが禁止されます。

このように、企業と何らかの業務上の接点をもつ人々の多くが、不正を報告する権利を有していることを理解しておきましょう。

対象となる行為

通報の内容が、法律で定められた「通報対象事実」に該当していなければ、公益通報としての保護は受けられません。

通報対象事実とは、国民の生命、身体、財産、その他の利益の保護に関わる特定の法律(国民の生活に密接に関わる約500の法律が指定されています)に違反する犯罪行為や、最終的に刑罰につながるような法令違反行為のことです。

具体的な法律の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 刑法(詐欺、横領、贈収賄など)
  • 食品衛生法(賞味期限の改ざん、有害物質の混入など)
  • 金融商品取引法(インサイダー取引、有価証券報告書の虚偽記載など)
  • 労働基準法(違法な長時間労働、賃金未払いなど)
  • 個人情報保護法(顧客データの不正な持ち出しや漏洩など)

「単なる社内マナーの違反」や「上司の個人的な性格に対する不満」などは、原則として公益通報者保護法の対象にはなりません(ただし、企業独自の内部通報制度の対象として受け付けることは重要です)。

通報の正当な目的

通報は、不正を是正して公益を守るという「正当な目的」で行われなければなりません。つまり、個人的な怨恨や私利私欲に基づく通報は、法律による保護の対象外となります。

不正な目的とされる具体的な例は以下の通りです。

他人を陥れる目的: 昇進競争のライバルを蹴落とすために、虚偽の事実をでっち上げて通報する。

企業に対する嫌がらせ: 会社への不満から、業務を妨害する目的で嫌がらせのように根拠のない通報を繰り返す。

金銭の要求: 「通報しない代わりに金銭を支払え」と脅迫まがいの要求をする。

このように、公益通報はあくまで組織を良くするため、そして社会を守るための行動であることが求められます。窓口担当者は、通報を受理する際に、内容の真偽だけでなくその背景にある意図も慎重に見極める必要があります。

3つの通報先

公益通報者保護法では、通報先を「事業者内部」「行政機関」「外部機関」の3つに分類しています。どこを通報先として選ぶかによって、通報者が法律の保護を受けるために必要な要件のハードルが異なります。企業としては、できる限り第一の窓口である「事業者内部」で問題を察知し、解決に導くことが理想の姿です。

事業者内部への通報(1号通報)

1号通報とは、従業員が自社の内部に設置された窓口、あるいは企業があらかじめ指定した外部の窓口(顧問弁護士や専門の代行業者など)に対して通報することです。

社内で完結するため、通報者にとって最も身近であり、法律で保護されるためのハードルも一番低く設定されています。具体的には、「不正行為が生じていると思料する場合」であれば保護の対象となります。つまり、確実な証拠がなくても、客観的な状況から不正の疑いがあると感じた時点で通報でき、不利益な扱いから守られます。

企業側にとっても、問題が外部に漏れる前に自力で事実確認と是正を行えるため、ブランドダメージを最小限に抑え、組織の自浄能力を高めることができる最も望ましいルートです。

行政機関への通報(2号通報)

2号通報とは、その不正行為を取り締まる権限をもつ「行政機関(監督官庁や労働基準監督署、警察など)」に対して直接通報を行うことです。

行政機関への通報で保護を受けるためには、1号通報よりも少し要件が厳しくなります。「不正行為が生じていると信ずるに足りる相当の理由(証拠など)」があることが求められます。

従業員がこのルートを選ぶのは、社内の通報窓口が機能していない、窓口担当者が不正に関与している、あるいは社内に通報しても握り潰される可能性が高いと判断した場合が多いです。行政の調査が入ることになるため、企業としては業務への影響や社会的信用の低下といったリスクが生じます。

外部機関への通報(3号通報)

3号通報とは、報道機関(マスコミ)、消費者団体、労働組合、国会議員など、行政機関以外の外部の第三者に対して通報を行うことです。いわゆる内部告発に最も近い形となります。

このルートは企業へのダメージが極めて大きいため、通報者が保護されるための要件は最も厳しく設定されています。具体的には、「不正行為が生じていると信ずるに足りる相当の理由」があることに加え、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 社内や行政機関に通報すると、解雇などの不利益な扱いを受けると信じるに足りる理由がある。
  • 社内窓口に通報すると、証拠隠滅や偽造される恐れがある。
  • 社内に通報してから20日経過しても、調査を行う旨の連絡がない、または正当な理由なく調査が行われない。
  • 個人の生命や身体に危害が及ぶ差し迫った危険がある。

従業員が3号通報に踏み切るということは、企業の自浄作用が完全に失われていると見なされている証拠であり、企業は絶対に避けなければならない事態といえます。

通報受付時の対応フロー

実際に社内の窓口に公益通報が寄せられた場合、担当者は冷静かつ迅速に動く必要があります。初動の対応を誤ると、通報者に不利益が生じたり、証拠が隠滅されたり、最悪の場合は外部への告発に発展する恐れがあります。

ここでは、通報を受理してから問題を解決するまでの正しい対応ステップを解説します。

機密保持と不利益取扱いの禁止

通報を受けた際、最も優先すべきは「通報者の保護」と「情報の徹底した管理」です。誰が通報したのかという情報(氏名や所属など)や、通報内容が漏洩すると、通報者が職場で孤立したり、嫌がらせを受けたりするリスクがあります。

窓口担当者は、通報に関する情報を絶対に外部や関係のない社員に漏らしてはなりません(守秘義務)。また、会社側は、通報したことを理由として、解雇、降格、減給、望まない配置転換、退職の強要といった「不利益な取り扱い」を行うことは法律で固く禁じられています。この原則を社内全体に周知徹底しておくことが不可欠です。

なお、2026年の改正法ではこの保護がさらに強化されます。通報後1年以内の不利益な扱いは「通報を理由としたもの」と推定される(立証責任の転換)ほか、報復人事を行った行為者への刑事罰(直罰)導入や、法人に対する罰金の大幅な引き上げ(3,000万円以下)が行われます。また、通報をためらわせる「通報妨害」や、正当な理由なく通報者を特定しようとする「探索行為(犯人捜し)」も明確に禁止されています。

受領通知とヒアリング

通報を受け付けたら、まずは速やかに通報者に対して「通報を確かに受け付けた」という受領通知を行います。何も連絡がないと、通報者は「もみ消されたのではないか」と不安になり、外部機関への通報に踏み切る可能性があるためです。

その後、必要に応じて通報者へのヒアリングを実施します。ヒアリングでは以下の点を確認します。

  • いつ、どこで、誰が、何をしたのか(5W1Hの確認)
  • その行為を裏付ける客観的な証拠(メール、書類、録音データなど)はあるか
  • 他に事実を知っている人物はいるか

ヒアリングの際は、通報者のプライバシーに配慮し、誰の目にも触れない会議室で行う、オンライン面談を活用するなどの工夫が必要です。また、担当者は先入観をもたず、冷静に事実関係のみを傾聴する姿勢が求められます。

客観的な事実調査

通報内容とヒアリング結果をもとに、事実関係の調査を開始します。調査は、通報された部署や対象者から独立した立場の人間(コンプライアンス部門や顧問弁護士など)が行う必要があります。

調査のプロセスでは、対象となる書類やデータの確認、関係者へのヒアリングを実施します。この際、調査の対象となっている人物(不正を疑われている人物)に情報が漏れて証拠隠滅を図られないよう、極秘裏に進めることが鉄則です。関係者にヒアリングを行う場合も、「なぜその質問をしているのか」という背景を悟られないよう、質問の仕方に細心の注意を払う必要があります。

不正の是正と再発防止

調査の結果、通報された不正事実が存在することが確認された場合は、直ちにその行為を中止させ、是正措置を講じます。被害が発生している場合は、その回復に努めることも重要です。

同時に、なぜその不正が起きてしまったのかという根本的な原因(ルールの不備、属人的な業務フロー、過剰なノルマなど)を分析し、再発防止策を策定します。対象者に対する処分(懲戒処分など)については、就業規則や関係法令に則り、適正な手続きを経て決定する必要があります。

結果のフィードバック

一連の調査と対応が完了したら、その結果を通報者にフィードバックします。通報者は「自分の勇気ある行動がどう会社を変えたのか」を気にかけています。

フィードバックの際は、プライバシーや企業の機密情報に関わる詳細な処分内容などをすべて伝える必要はありませんが、「事実関係が認められ、適切な是正措置を行ったこと」や「調査の結果、今回は不正の事実は確認できなかったこと」など、結論とその理由を真摯に報告します。丁寧なフィードバックを行うことで、通報者の会社に対する信頼が回復し、制度が正しく機能しているという実績に繋がります。

▶関連記事:内部通報されたらどう動く?2026年施行の改正公益通報者保護法に基づく初動対応と組織の守り方

対応体制の整備と社内教育

公益通報制度を単なる「お飾り」にせず、企業のリスク管理として効果的に機能させるためには、法律に基づいたしっかりとした体制の構築と、それを動かすための社内教育が不可欠です。人事・教育担当者が中心となって取り組むべきポイントを整理します。

窓口の設置

まずは、従業員がアクセスしやすい通報窓口を設置します。社内のコンプライアンス部門や監査部門に設置する「内部窓口」と、顧問弁護士や外部の専門機関に委託する「外部窓口」の両方を設けるのが効果的です。

特に外部窓口は、社内の人間関係を気にせずに相談できるため、従業員にとって心理的ハードルが下がります。また、受付方法も、電話、メール、専用のWEBフォーム、郵送など、複数の手段を用意しておくことで、通報者の状況に合わせた柔軟な対応が可能になります。

社内規定の策定

窓口を作っただけでは制度は運用できません。誰が、どのように通報を受け付け、どう調査し、結果をどう処理するのかといった一連のルールを定めた「内部通報規程(公益通報対応規程)」を策定する必要があります。

規程には以下の内容を明記します。

  • 通報窓口の連絡先と利用方法
  • 通報の対象となる行為の範囲
  • 通報者の秘密保持と不利益取扱いの禁止(会社としての強いコミットメント)
  • 調査の手続きと是正措置のフロー
  • 虚偽通報に対するペナルティ

策定した規程は、イントラネットや社内報などで全従業員がいつでも閲覧できるようにし、透明性を確保することが重要です。

なお、2026年の法改正に対応するため、通報対象者へのフリーランスの追加や、通報妨害・犯人捜しの禁止、不利益取扱いに関する新たな罰則などを踏まえて規程をアップデートすることが求められます。

社内周知と教育の徹底

制度を構築しても、従業員がその存在を知らなかったり、使い方がわからなかったりすれば意味がありません。「何かおかしい」と感じたときに、すぐに窓口の存在を思い出してもらえるよう、継続的な周知と教育が必要です。

入社時のオリエンテーションでの案内に加え、全社員を対象とした定期的なコンプライアンス研修を実施し、「どのような行為が通報の対象になるのか」「通報者は徹底的に守られること」を繰り返し伝えます。

また、窓口を担当する従業員(公益通報対応業務従事者)に対しても、ヒアリングのスキルや情報の取り扱いに関する専門的なトレーニングを行う必要があります。

特に2026年の改正法では、公益通報対応体制を「労働者等に周知すること」が法律上の義務として明文化されました。体制整備の義務違反に対しては行政からの命令権や立入検査権限が新設され、違反時の罰則も設けられています。そのため、従業員への定期的な研修の実施と、その受講記録(ログ)の管理が、企業を守るうえでますます重要になっています。

よくある質問

公益通報制度の運用にあたって、実務担当者や従業員から寄せられやすい疑問点をQ&A形式でまとめました。判断に迷いやすいケースの参考にしてください。

ハラスメントは対象になるか

Q: パワハラやセクハラは、公益通報の対象になりますか?

A: 原則として、直接的に「公益通報者保護法」の対象となる法令違反(刑罰の対象になる行為など)には該当しないケースが多いです。

しかし、ハラスメントを放置することは、職場の環境悪化や従業員のメンタルヘルス不調、さらには損害賠償請求に発展する重大なコンプライアンス違反です。そのため、多くの企業では、自社の「内部通報制度」の対象事案としてハラスメントを含めており、公益通報に準じた厳格な秘密保持のもとで対応しています。法律の枠組みにとらわれず、社内のハラスメント相談窓口として機能させることが重要です。

匿名の通報は保護されるか

Q: 報復が怖いため、匿名で通報したいのですが、匿名でも法律の保護対象になりますか?

A: はい、匿名での通報も公益通報者保護法の対象となります。

実名でないと受け付けないというルールはありません。しかし、匿名の場合、会社側からのヒアリングや詳細な事実確認が難しくなり、十分な調査が行えない可能性があります。

また、結果のフィードバックもできません。そのため企業側は、「実名で通報しても絶対に不利益な扱いはしない」という信頼関係を日頃から築き、可能な限り実名(窓口担当者だけに名前を明かすなど)での通報を促す工夫が求められます。

事実誤認時のペナルティ

Q: 不正だと思って通報しましたが、調査の結果、勘違いや事実誤認であることがわかりました。通報した従業員は罰せられますか?

A: いいえ、通報内容が結果的に事実と異なっていたとしても、単なる勘違いや事実誤認であれば、通報者がペナルティ(懲戒処分など)を受けることはありません。

公益通報は「不正が生じていると思料する場合」に行えるものであり、完璧な証拠がない状態での通報を認めています。ただし、最初から相手を陥れる目的で「意図的に嘘の通報(虚偽通報)」をした場合や、企業への嫌がらせ目的であった場合は保護の対象外となり、就業規則に基づき懲戒処分の対象となる可能性があります。

まとめ|コンプライアンス意識を高める効果的な社内教育を

公益通報制度は、企業に潜むコンプライアンス違反の芽を早期に発見し、自浄作用を働かせるための極めて重要な仕組みです。内部通報や内部告発との違いを理解し、法的な保護要件を把握することは、企業のリスクマネジメントの土台となります。

制度を形骸化させず正しく機能させるためには、独立した窓口の設置や規程の整備といった「ハード面」の構築だけでなく、従業員一人ひとりがコンプライアンス意識をもち、安心して声を上げられる企業文化を醸成する「ソフト面」の取り組みが欠かせません。

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