内部通報制度とは?2026年改正法への対応と実効性のある体制構築・教育を徹底解説

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近年、企業のコンプライアンス(法令遵守)に対する社会的な視線は、かつてないほど厳しくなっています 。ひとたび不祥事が発覚すれば、SNSでの拡散や報道により、長年築き上げた企業の信頼は一瞬で失墜しかねません 。

こうしたリスクを未然に防ぎ、企業の自浄作用を支える「最後の砦」が「内部通報制度」です 。2022年の改正法により、従業員数301名以上の企業において体制整備が義務化されましたが 、さらに2026年12月1日施行の改正法では、通報者の保護範囲が拡大され、不利益な取扱いに対する罰則が大幅に強化されます 。

本記事では、内部通報制度の基礎知識から、2026年改正で人事担当者が対応を迫られる変更点、そして制度の形骸化を防ぐための教育の重要性まで、網羅的に解説します。

目次[非表示]

  1. 1.内部通報制度の定義と「公益通報」の基礎知識
    1. 1.1.内部通報制度の目的と重要性
    2. 1.2.公益通報制度との法的枠組み
    3. 1.3.「内部通報」と「内部告発」の違い
  2. 2.2026年改正で強化される企業の義務と罰則
    1. 2.1.① 体制整備義務の徹底と実効性の向上
    2. 2.2.② 公益通報者の範囲拡大
    3. 2.3.③ 通報妨害および通報者探索の禁止
    4. 2.4.④ 不利益な取扱いの抑止・救済の強化
  3. 3.内部通報の対象となる「人・行為・要件」の範囲
    1. 3.1.通報できる人の範囲
    2. 3.2.通報対象となる行為
    3. 3.3.匿名通報の取り扱い
  4. 4.窓口の設置形態:社内窓口と社外窓口の使い分け
    1. 4.1.社内窓口(コンプライアンス室、人事部、監査役等)
    2. 4.2.社外窓口(法律事務所、専門代行会社)
    3. 4.3.理想的な体制は「ハイブリッド型」
  5. 5.実効性のある内部通報制度の導入手順
    1. 5.1.ステップ1:内部通報規程の作成と整備
    2. 5.2.ステップ2:従事者の指名と権限付与
    3. 5.3.ステップ3:ITツールやインフラの整備
    4. 5.4.ステップ4:全従業員への周知と教育
  6. 6.通報受付から事後対応までの標準的なフロー
    1. 6.1.受理と予備調査(スクリーニング)
    2. 6.2.調査の実施と守秘の徹底
    3. 6.3.是正措置と処分の決定
    4. 6.4.通報者へのフィードバック
  7. 7.内部通報制度を成功させるための「教育」の役割
    1. 7.1.担当者(従事者)に求められる教育
    2. 7.2.全従業員に向けた教育
  8. 8.2026年改正対応:内部通報制度チェックリスト
  9. 9.まとめ:内部通報制度は「信頼」を築くための投資
    1. 9.1.コンプライアンス教育の課題を解決する「SAKU-SAKU Testing」

内部通報制度の定義と「公益通報」の基礎知識

内部通報制度とは、企業内部で不正行為や法令違反が発生、あるいは発生しようとしている場合に、従業員等が専用の窓口に報告できる仕組みです 。
ここではその重要性と法的枠組みに関して解説します。

内部通報制度の目的と重要性

制度の最大の目的は、企業自らが不正を検知し修正する「自浄作用の確立」にあります 。

  • 重大なリスクの早期発見: 大規模なリコールや巨額の賠償に発展する前に不正の芽を摘むことができます 。

  • 不正の抑止効果: 「誰かが通報するかもしれない」という緊張感が、不正が起きにくい環境を醸成します 。

  • 社会的信用の維持: 自ら是正できる体制は、投資家や取引先、顧客からの信頼に直結します。

公益通報制度との法的枠組み

「公益通報」とは、公益通報者保護法に基づき、一定の要件を満たした通報を指します 。

法的に保護を受けるためには、以下の条件が必要です 。

  • 通報者が「労働者等」であること: 正社員、派遣社員、退職者(1年以内)、役員が含まれます。2026年12月1日の改正ではフリーランスも追加されます 。

  • 不正の目的ではないこと: 他人を陥れる目的などは保護されません 。

  • 真実相当性: 単なる噂ではなく、信じるに足りる根拠が必要です 。

「内部通報」と「内部告発」の違い

一般的には、情報の出し先が「組織の管理下(窓口)」であれば内部通報、「組織の管理外(マスコミ、SNS、警察等)」であれば内部告発と呼ばれます 。

企業にとっては、情報を内部に留めて自ら解決する機会を確保することが、ブランド毀損リスクの回避につながります。

2026年改正で強化される企業の義務と罰則

2026年12月1日施行の改正法では、これまでの「努力」や「勧告」のレベルを超え、直接的な刑事罰や立証責任の転換といった、実務上の重い変更が行われます 。

① 体制整備義務の徹底と実効性の向上

従業員301名以上の企業に対する体制整備義務がより厳格化されます 。

  • 「命令権」の新設: 従事者の指定義務に違反した事業者に対し、現行の指導・勧告に加え、従わない場合の「命令権」が新設されます 。

  • 命令違反時の刑事罰: 命令に違反した場合、30万円以下の罰金(両罰規定あり)が科されます 。

  • 立入検査権限の新設: 消費者庁等に立入検査権限が与えられ、報告の怠慢や虚偽報告、検査拒否に対しても30万円以下の罰金が科されます 。

  • 周知義務の明示: 公益通報対応体制を「労働者等に周知すること」が、法律上の義務として明文化されます 。

② 公益通報者の範囲拡大

多様な働き方に対応するため、保護対象が大きく広がります。

  • フリーランス(特定受託事業者)の追加: 事業者と業務委託関係にある(または終了後1年以内の)フリーランスが保護対象となります 。

  • 契約解除の禁止: 公益通報を理由とした業務委託契約の解除や、その他一切の不利益な取扱いが禁止されます 。

③ 通報妨害および通報者探索の禁止

通報をためらわせる行為に対する「事前の抑止」が強化されます。

  • 通報妨害の禁止: 「外部に通報しない」といった合意を求めるなど、通報を妨げる行為が禁止されます 。これに違反した合意は法律上「無効」となります 。

  • 通報者探索の禁止: 正当な理由なく、通報者を特定しようとする行為(犯人捜し)が明確に禁止されます 。

④ 不利益な取扱いの抑止・救済の強化

ここが人事担当者にとって最も注意すべき点です。

  • 不利益取扱いの推定(立証責任の転換): 通報後1年以内に解雇や懲戒がなされた場合、それは「通報を理由としたもの」と推定されます 。企業側が「通報とは無関係な正当な理由がある」と証明できない限り、法的に「報復」とみなされます 。

  • 刑事罰(直罰)の導入: 公益通報を理由に解雇や懲戒を行った者(行為者)に対し、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という直罰が科されます 。

  • 法人の罰金引き上げ: 法人に対する法定刑は3,000万円以下の罰金へと大幅に引き上げられます。

内部通報の対象となる「人・行為・要件」の範囲

制度を運用する上で、誰からの、どのような通報を、どう扱うかの定義を明確にする必要があります。

通報できる人の範囲

法的な保護対象は以下の通りですが、リスク管理上、さらに広げて設定することが推奨されます。

  • 現役従業員・役員: 雇用形態に関わらず、すべての労働者と取締役、監査役等 。

  • 退職者: 退職後1年以内 。

  • 派遣社員: 派遣先・派遣元両方の窓口を利用可能 。

  • 【2026年〜】フリーランス: 取引先個人への配慮も必須となります 。

  • 任意設定: 取引先の社員や協力会社スタッフも含めると、リスク発見の精度が高まります 。

通報対象となる行為

刑事罰を伴う法令違反(約500以上の法律)が法律上の対象ですが、実務上はそれ以外も網羅することが推奨されます。

  • 消費者・環境・労働保護: 食品表示、廃棄物、残業代未払いなど 。

  • 公正な競争: 談合、贈収賄など 。

  • 社内ルール: 就業規則違反や企業倫理に反する行為 。

※参考:消費者庁「公益通報者保護法において通報の対象となる法律について

匿名通報の取り扱い

改正法では匿名通報も適切に受け付けることが求められています 。
心理的ハードルを下げるメリットがある反面、調査が難航する場合があるため、匿名でもやり取り可能なITシステムの導入が推奨されます 。

窓口の設置形態:社内窓口と社外窓口の使い分け

通報窓口をどこに置くかは、制度の「信頼性」を左右する重要な決断です。
窓口は、社内・社外・ハイブリッドでの運用があります。

社内窓口(コンプライアンス室、人事部、監査役等)

  • 特徴: 自社の社員が担当する。

  • メリット: 社内の力関係や業務フローを熟知しているため、事実確認のスピードが速い。また、追加コストが抑えられる。

  • デメリット: 「通報したことがバレるのではないか」「上層部の圧力で揉み消されるのではないか」という不安を払拭しにくい。

社外窓口(法律事務所、専門代行会社)

  • 特徴: 外部の専門家に一次受付を委託する。

  • メリット: 高い独立性と秘匿性が保たれるため、従業員が安心して通報できる。法的判断が必要な事案にも強い。

  • デメリット: 委託費用が発生する。また、外部者が社内調査を行う場合は連携に時間がかかることもある。

理想的な体制は「ハイブリッド型」

多くの先進企業では、「社内窓口」と「社外窓口」の両方を設置し、通報者が選択できるようにしています。

特に、経営層に関わる不正については、社外窓口や監査役に直接届くルート(監査役ホットライン)を設けることが、コーポレートガバナンスの観点から推奨されています。

実効性のある内部通報制度の導入手順

制度を形だけでなく、実際に「動くもの」にするための導入ステップを解説します。

ステップ1:内部通報規程の作成と整備

まずはルールの明文化です。

以下の内容を規程に盛り込みます。

  • 制度の目的と対象となる通報者・行為

  • 窓口の場所と受付方法

  • 通報者の保護(不利益取扱いの禁止、守秘義務)

  • 調査の手順と是正措置の流れ

  • 役員等に関する事案の特例

ステップ2:従事者の指名と権限付与

窓口担当者を「従事者」として書面などで指名します。

この際、担当者が調査を行うために必要な権限(関連書類の閲覧、関係者へのヒアリング権限など)を明確に付与しておくことが重要です。

ステップ3:ITツールやインフラの整備

電話やメールだけでなく、秘匿性の高い専用の通報システムを導入する企業が増えています。

また、通報記録を誰がいつ閲覧したかをログで残せる仕組みにすることで、情報の不正利用を防ぎます。

ステップ4:全従業員への周知と教育

2026年の改正で周知義務が明文化されるため、
以下のような方法で周知と教育を行う必要があります。

  • ポスターの掲示、携帯カードの配布

  • 社内イントラでの告知

  • 役員メッセージによる「通報の推奨」

そして最も効果的なのが、定期的な研修(eラーニングなど)です。
通報の方法だけでなく、「なぜこの制度が必要なのか」「通報者がどう守られるのか」を繰り返し伝えることで、心理的な安全性を高めます。

通報受付から事後対応までの標準的なフロー

実際に通報があった場合、人事担当者は冷静かつ迅速に動く必要があります。

受理と予備調査(スクリーニング)

通報を受けたら、まず内容の信憑性を確認します。

  • いつ、どこで、誰が、何をしたか(5W1H)が具体的か。

  • 個人的な恨みや誹謗中傷ではないか。

  • 証拠資料はあるか。

内容が具体的であれば、速やかに「本調査」へ移行します。

調査の実施と守秘の徹底

関係者へのヒアリングを行います。

この際、最も注意すべきは「通報者が誰であるかを漏らさないこと」です。
質問の仕方一つで通報者が特定されてしまうリスクがあるため、慎重なシナリオ作成が求められます。

是正措置と処分の決定

不正が確認された場合、就業規則に基づき加害者の懲戒処分を検討します。

同時に、被害者(通報者)がいる場合はその救済を行い、制度上の欠陥があれば速やかに改善策を講じます。

通報者へのフィードバック

可能な範囲で、調査の結果や是正状況を通報者に伝えます。

何も返答がないと、通報者は「無視された」「もみ消された」と不信感を抱き、外部(SNS等)へ告発する動機になってしまいます。

内部通報制度を成功させるための「教育」の役割

制度が形骸化する最大の原因は、従業員と担当者の「知識不足」と「不安」にあります。
これを解消するのが教育の役割です。

担当者(従事者)に求められる教育

従事者には、法律知識だけでなく、高度な実務スキルが求められます。

  • ヒアリングスキル: 相手から事実を引き出し、かつ秘密を守る会話術。

  • 法的判断力: どの法令に抵触する可能性があるかの見極め。

  • 倫理観: 会社の利益よりも「公正さ」を優先する姿勢。

全従業員に向けた教育

一般従業員には、制度を「自分たちを守るためのもの」と認識させる必要があります。

  • 「通報=正義」という文化の醸成。

  • 通報後のフローを可視化し、不安を取り除く。

  • 具体的なケーススタディを通じ、「何が不正か」の基準を揃える。

2026年改正対応:内部通報制度チェックリスト

2026年の改正を盛り込んだ、内部通報制度に関するチェックリストをご紹介します。
自社の対応状況を確認し、漏れているところは、アップデートして法改正に備えてください。


  1. 対象範囲の拡大
    □  フリーランスを含めたか: 規程上の通報者に、業務委託先のフリーランスを追加しているか。
      契約解除の禁止: 通報を理由としたフリーランスへの契約解除を禁止しているか。
  2. 体制とペナルティ
      周知義務の履行: 全労働者(フリーランス含む)に対して、窓口の存在や保護の仕組みを伝えているか。
      命令・罰則への理解: 体制整備の不備に対し、行政からの「命令」や「罰則(30万円以下の罰金)」が新設されたことを把握しているか。
  3. 禁止行為の徹底
      通報妨害の禁止: 「外部に通報しない」という誓約をさせるなどの妨害行為を禁止しているか。
      犯人捜しの禁止: 正当な理由なく通報者を特定しようとする「探索行為」を禁止しているか。
  4. 報復への厳罰化
      不利益取扱いの推定: 通報後1年以内の解雇等は「通報が理由」と推定される(会社側が反証の責任を負う)ことを周知しているか。
      直罰規定の周知: 報復人事を行った個人に「刑事罰(拘禁刑または罰金)」が科されるリスクを周知しているか。
  5. 教育とエビデンス
      定期的な研修: 従業員の不安を払拭し、制度を正しく利用するための教育を継続しているか。
      受講ログの保管: 行政の検査に備え、周知・教育の実施記録(ログ)をシステムで管理しているか。

まとめ:内部通報制度は「信頼」を築くための投資

内部通報制度は、単に法令を守るための事務手続きではありません。風通しの良い組織を作り、従業員が安心して働ける環境を整え、ひいては企業の持続的な成長(サステナビリティ)を支えるための重要な投資です。

実効性のある体制を構築し、それを適切に運用し続けるためには、全社的なコンプライアンス意識の底上げが不可欠です。

コンプライアンス教育の課題を解決する「SAKU-SAKU Testing」

内部通報制度を形骸化させないためには、全従業員への継続的な教育が鍵となります。
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