
コンプライアンスとガバナンスの違いとは?強化するメリットや体制づくりを解説
企業経営において、「コンプライアンス」と「ガバナンス」という言葉を耳にする機会は多いのではないでしょうか。どちらも企業の健全な運営に不可欠な要素ですが、その意味合いや役割には明確な違いがあります。これらの違いを理解し、適切に強化することは、企業の持続的な成長と信頼性確保のために重要です。
本記事では、コンプライアンスとガバナンスの違い、強化するメリット、および具体的な体制構築の方法について解説します。
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンスについて
- 1.1.コンプライアンスの定義
- 1.2.コンプライアンスが重要視される背景
- 1.3.コンプライアンス違反とは
- 2.ガバナンスについて
- 2.1.ガバナンスの定義
- 2.2.コーポレートガバナンス・コードとは
- 2.3. ガバナンスが注目される背景
- 3.コンプライアンスとガバナンスの関連性
- 4.コンプライアンスとガバナンスを強化するメリット
- 5.コンプライアンスとガバナンスの強化方法
- 5.1.コンプライアンス意識を高める施策
- 5.2.ガバナンス体制を構築するステップ
- 6.まとめ
- 7.コンプライアンス教育にSAKU-SAKU Testingをご活用ください
コンプライアンスについて
ここではコンプライアンスの定義や重要視される背景について解説します。
コンプライアンスの定義
コンプライアンスとは、「法令遵守」という意味が原義ですが、現代のビジネスシーンではより広い意味で使われています。単に法律や条例を守るだけでなく、社内規程、企業倫理、社会規範、さらには社会的な常識や道徳といった広範なルールに従って企業活動を行うことを指します。つまり、企業が社会の一員として、公正かつ誠実に事業を遂行するための行動規範全般を包含する概念と言えるでしょう。
コンプライアンスが重要視される背景
コンプライアンスが今日これほどまでに重要視される背景には、いくつかの要因があります。
まず、企業活動のグローバル化が進み、国内外で多様な文化や価値観をもつ人々との取引が増加したことがあげられます。これにより、各国の法令や異なる商慣習への対応が必要不可欠となりました。また、インターネットやSNSの普及により、企業の不祥事や従業員のコンプライアンス違反があっという間に拡散し、企業イメージや信頼性を大きく損なうリスクが高まっています。過去には、大企業による粉飾決算や情報漏洩といった不正行為が相次ぎ発覚し、企業に対する社会的な信頼が揺らいだことも、コンプライアンス強化の必要性を一層高めました。消費者や投資家だけでなく、従業員や地域社会を含むあらゆるステークホルダーが企業倫理や透明性に対して厳しい目を向けるようになった結果、企業は法令遵守に加え、より広範な社会規範や倫理に従うことが強く求められるようになったのです。
コンプライアンス違反とは
コンプライアンス違反とは、企業が遵守すべき法令や社会規範、社内ルールなどに反する行為を指します。これには、法律に違反する行為はもちろんのこと、情報漏洩やデータ改ざん、ハラスメント、不正会計なども含まれます。コンプライアンス違反が発生すると、企業は社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下といった深刻なダメージを受けます。
特に近年では、SNSなどによって情報が瞬く間に拡散するため、その影響は計り知れません。顧客離れや株価下落、さらには損害賠償請求や行政処分、最悪の場合、事業の継続が困難になるリスクも孕んでいます。
ここ数年を見ても、様々な企業でコンプライアンス違反に関する問題が報じられており、そのリスクは常に企業経営に付きまといます。企業規模に関わらず、コンプライアンス違反は経営基盤を揺るがす可能性があるため、組織全体でリスク管理を徹底し、違反の防止に取り組む必要があります。
ガバナンスについて
ここでは、ガバナンスの定義や「コーポレートガバナンス・コード」について解説します。
ガバナンスの定義
ガバナンスとは、英語の「governance」に由来し、「統治」「支配」「管理」といった意味を持つ言葉です。企業経営においては、「コーポレートガバナンス(企業統治)」と同義で使われることが多く、企業自身が公正かつ健全な経営を実現するために構築する管理体制や仕組みを指します。具体的には、経営の透明性を確保し、経営陣の独断的な意思決定や不正を防ぐための監視・統制システム全体を意味します。企業がステークホルダーからの信頼を得て、長期的に発展していくためには、このガバナンスの仕組みが不可欠です。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が参照すべき企業統治に関するガイドラインです。金融庁と東京証券取引所が共同で策定し、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的としています。
コーポレートガバナンス・コードは、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」という5つの基本原則から構成されており、企業はこれらの原則に基づき、透明・公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組みを構築することが求められます。コーポレートガバナンス・コードには「コンプライ・オア・エクスプレイン(complyorexplain)」という原則が採用されており、コードの原則を実施しない場合には、その理由を説明する必要があります。中小企業には直接的な適用義務はありませんが、健全な経営や信頼性向上のために、その考え方を取り入れる企業も増えています。
ガバナンスが注目される背景
ガバナンスが注目されるようになった背景には、過去に日本で発生した大企業による不祥事が大きく影響しています。
1990年代のバブル経済崩壊後、粉飾決算や贈収賄といった企業の不正が相次ぎ明るみに出たことで、企業経営のあり方に対する社会の目が厳しくなりました。経営の透明性や公正性が問われるようになり、企業自身が自らを律し、健全な経営を行うための内部管理体制の必要性が強く認識されるようになったのです。また、経済のグローバル化や情報化社会の進展も、ガバナンスの重要性を高める要因となっています。海外子会社を含むグループ全体の管理や、機密情報の適切な取り扱いなど、企業活動の範囲が広がるにつれて、組織全体の統制を強化することが不可欠となりました。企業が持続的に成長し、ステークホルダーからの信頼を維持するためには、経営の透明性を確保し、リスクを適切に管理するガバナンス体制の構築が不可欠であるという認識が広まっています。
コンプライアンスとガバナンスの関連性
ここでは、コンプライアンスとガバナンスの違いや関係について解説します。
両者の違い
コンプライアンスとガバナンスはしばしば混同されがちですが、明確な違いがあります。コンプライアンスが「法令遵守」をprimaryとし、法律や規則、社内ルールといった個別の規範に従う「行動」そのものを指すのに対し、ガバナンスは企業が健全な経営を行うために自ら構築する「体制」や「仕組み」を指します。つまり、コンプライアンスは守るべき「ルール」やその遵守という「行為」に焦点が当てられていますが、ガバナンスはそれらのルールが守られるように組織全体を「管理・統制する仕組み」に重点が置かれています。例えるならば、コンプライアンスが交通ルールを守って運転することであれば、ガバナンスはそのルールを守るための道路標識や信号機、監視システムといった交通システム全体を構築・維持することと言えるでしょう。
両者の関係
コンプライアンスとガバナンスは、異なる概念でありながらも密接な関係にあります。ガバナンスは、コンプライアンスが組織内で適切に実施されるための基盤となる管理体制です。強固なガバナンス体制が構築されていれば、経営層や従業員が法令や社内規程を遵守する意識が高まり、コンプライアンス違反のリスクを低減することができます。内部統制は、このガバナンスを機能させるための具体的な仕組みの一つであり、業務プロセスの適正化や不正防止に貢献します。ガバナンスの強化は、内部統制の整備を通じて、結果的にコンプライアンスの徹底につながるのです。したがって、コンプライアンスはガバナンスの一部に含まれる概念と捉えることもでき、ガバナンスを強化することが、広義のコンプライアンスを組織全体に浸透させる上で非常に効果的と言えるでしょう。
コンプライアンスとガバナンスを強化するメリット
これまで、コンプライアンスとガバナンスに関して説明してきましたが、この2つを強化するメリットは何でしょうか?ここでは、メリットについて解説します。
企業の信頼性向上
コンプライアンス・ガバナンスの強化は、企業の信頼性向上に不可欠です。法令遵守はもちろんのこと、社会規範や企業倫理に基づいた誠実な企業活動を継続することで、ステークホルダーからの信頼を獲得できます。透明性の高い経営は、株主や投資家に対して安心感を与え、資金調達を円滑に進めることに繋がります。また、顧客や取引先からの信用も高まり、長期的な良好な関係構築に寄与します。さらに、健全な企業イメージは優秀な人材の確保にも有利に働き、従業員の定着率向上やモチベーション向上にも繋がるでしょう。
不正行為の防止
コンプライアンスとガバナンスが効果的に機能することで、社内外からの監視体制が強化され、経営層や従業員による不正行為の発生を抑制できます。明確なルールや手続きが定められ、内部統制が整備されることで、不正の機会を減らし、仮に発生した場合でも早期発見・対処が可能となります。不正行為は、企業の評判を著しく傷つけ、多額の損害賠償や経営悪化を招くリスクがあります。したがって、ガバナンス強化による不正防止は、企業のリスク管理において極めて重要な意味を持ちます。
企業価値の向上
コンプライアンスとガバナンスの強化は、結果として企業価値の向上に繋がります。健全で透明性の高い経営は、投資家からの評価を高め、株価の安定や上昇に寄与します。また、法令遵守や倫理的な企業活動は、ブランドイメージを向上させ、顧客からの支持を得やすくなります。組織全体の規律が向上し、業務プロセスが効率化されることで、生産性の向上も期待できます。これらの要素が複合的に作用し、企業の収益力や競争力が高まり、中長期的な企業価値の向上を実現できるのです。
コンプライアンスとガバナンスの強化方法
コンプライアンスとガバナンスは取り組みによって強化することが可能です。ここでは、強化方法について解説します。
コンプライアンス意識を高める施策
コンプライアンスを強化するためには、まず従業員のコンプライアンス意識を高めることが不可欠です。企業理念や行動規範を明確に定め、全従業員に周知徹底することが最初のステップです。定期的な研修やeラーニングなどを実施し、法令や社内ルールに関する知識を習得させるとともに、コンプライアンスの重要性や違反した場合のリスクについて理解を深める機会を設ける必要があります。また、CSR(企業の社会的責任)への取り組みを通じて、企業が社会の一員として果たすべき役割や倫理観を共有することも、従業員のコンプライアンス意識向上に繋がります。相談窓口の設置や内部通報制度の整備も、問題を早期に発見し、従業員が安心してコンプライアンスに関する懸念を表明できる環境を整える上で有効です。これらの施策を継続的に実施し、組織全体でコンプライアンスを重視する文化を醸成することが、コンプライアンス強化に繋がります。
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ガバナンス体制を構築するステップ
ガバナンス体制を構築するには、段階的なアプローチが必要です。
まず、現状の組織構造や意思決定プロセスを評価し、課題を特定することから始めます。
次に、健全な企業経営を実現するための基本的な枠組みとして、取締役会の役割や責任範囲を明確化します。独立した社外取締役や社外監査役を設置することは、経営に対する客観的な監視機能を強化する上で有効な手段です。
また、内部統制システムの整備は、ガバナンスを機能させるための重要な要素です。業務フローの可視化、承認プロセスの明確化、リスク管理体制の構築など、内部から組織を適切に管理・統制するための仕組みを構築します。
加えて、ステークホルダーへの適切な情報開示や、株主との対話の機会を設けることも、透明性を高め、ガバナンス強化に寄与します。
これらのステップを着実に実行し、定期的な見直しと改善を行うことで、実効性のあるガバナンス体制を構築できます。
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まとめ
本記事では、コンプライアンスとガバナンスの違い、強化するメリット、および具体的な体制構築の方法について解説しました。コンプライアンスは法令や社会規範を遵守する「行動」であり、ガバナンスはそれらを組織全体で実現するための「体制」や「仕組み」を指します。両者は密接に関連しており、ガバナンスの強化はコンプライアンスの徹底に繋がります。企業がコンプライアンス・ガバナンスを強化することで、企業の信頼性向上、不正行為の防止、そして企業価値の向上といった多くのメリットを享受できます。これらの強化のためには、従業員のコンプライアンス意識向上に向けた研修や社内制度の整備、そして経営の透明性を高め、リスクを管理するための内部統制を含むガバナンス体制の構築が不可欠です。すべての企業において、持続的な成長と社会からの信頼を得るために、コンプライアンスとガバナンスの強化は重要な経営課題と言えるでしょう。
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