スキル管理は人材戦略の土台!目的・メリット・スキルマップの作り方・ツール
企業の業績アップや社員に充実して働いてもらうためには、スキルを管理して人材戦略に役立てることが必要です。なかなかそこまで手が回らない、という企業様も多いかもしれません。しかしスキル管理は中長期的には人材確保につながり、生産性にもかかわる効果の高い施策だと言えます。
この記事では、スキル管理の目的やメリット、管理に使われるスキルマップの作り方などについてまとめます。人事など企業のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.スキル管理とは?
- 2.スキル管理の目的
- 3.スキル管理のメリット・活用法
- 3.1.メリット|配置・異動など人材配置に役立つ
- 3.2.メリット|リスキルなど人材開発に役立つ
- 3.3.メリット|業務の割り振りなど業務効率化に役立つ
- 3.4.メリット|プロジェクトなどメンバー選抜に役立つ
- 3.5.メリット|資格更新など管理に役立つ
- 4.管理すべきスキルとは
- 4.1.カッツ・モデルによる分類
- 4.2.ポータブルスキル
- 5.スキル管理とスキルマップ
- 6.スキルマップの作り方
- 6.1.作り方➀管理するスキルの選定
- 6.2.作り方②評価段階の決定
- 6.3.作り方③評価と管理
- 7.作成に役立つツールなど
- 7.1.ツール|職業能力評価基準
- 7.2.ツール|スキル管理ツール・システム
- 7.3.ツール|Excel
- 8.スキル管理をスキルアップにつなげるならイー・コミュニケーションズにご相談を
スキル管理とは?
「スキル管理」とは、社員のスキルをデータ化・可視化して管理することをいいます。誰が何をどの程度することができてどの部署にいるか、どの部署にどんな社員が集まっているかなどを管理します。
一元管理することで全社員のスキルの現状を把握することになり、人員計画の土台とすることができます。
なお、社員のスキルなどを把握・管理して人事戦略に活用することは「タレントマネジメント」といいます。スキル管理はタレントマネジメントの一部で、人事戦略を行うための手段だと言えます。
スキル管理の目的
スキル管理の最終的な目的は、社員のスキルを一括管理して人材計画に役立てることです。それを実現するためのより直接的・具体的な目的としては、個人・部署・会社全体などあらゆる階層で所有スキルを把握しやすい状態・抽出しやすい状態に保っておくことだと言えます。
管理されたデータを社内で共有することで、さまざまな形に活用することができるようになります。
スキル管理のメリット・活用法
スキル管理のメリットと活用法についてまとめます。具体的には次の4点が挙げられます。
配置・異動など人材配置に役立つ
リスキルなど人材開発に役立つ
業務の割り振りなど業務効率化に役立つ
プロジェクトなどメンバー選抜に役立つ
1つずつ見ていきましょう。
メリット|配置・異動など人材配置に役立つ
スキル管理は人材の配置に役立てることができます。所有スキルを活かせる場所・必要とされている場所に、新入社員を配置したり既存社員を異動させたりすることが可能となります。
また、スキル管理を行うことで部署間で所有スキルに偏りがないかも可視化されます。それにより社員を配置換えして偏りを是正したり、逆に場合によっては重要な部署にスキルを集中させたりすることが可能になります。このように全社的な配置のプラン作成にも役立てることが可能です。
自社に不足しているスキルや、経営計画から必要と考えられるスキルなども明確になり、採用にも役立ちます。
配置先・異動先の現場でも、社員のスキルの把握が容易になります。
メリット|リスキルなど人材開発に役立つ
スキル管理により社内の不足スキルが可視化されるため、どんなスキルを育てるべきかが明確になります。明確になった課題を研修などに反映させることで、全社的な人材開発のプラン策定に役立てることができます。
また部署・個人の不足スキルや課題も可視化されるため、個々のケースに対してどう対処すべきかが明確になり問題も解決しやすくなります。
労働人口の減少などで新規の採用が難しくなっている現在、既存社員のスキル開発は重要です。とくに近年、社員に新しいスキルを習得してもらうことが「リスキル」として改めて注目を集めています。スキル管理はリスキルにも役立ちます。
メリット|業務の割り振りなど業務効率化に役立つ
スキル管理を行うと、チームに業務を割り振るときなども短時間で判断できるようになります。チーム単位・部署単位の所有スキルが可視化されるためです。チームによって得手・不得手があったり、所有しているスキルに違いがあります。その違いがすぐにわかるので、確認の時間がカットできます。
さらに業務に適したスキルのあるチームに業務を割り振ることで、業務の遂行も効率的に行われるようになります。
メリット|プロジェクトなどメンバー選抜に役立つ
チームに業務を割り振るときだけでなく、人をプロジェクトや業務に割り振るとき・メンバーを決めるときにもスキル管理は役立ちます。
個人の所有スキルが可視化されるので、新規の部署やプロジェクトチーム立ち上げ時に適切な人材を選びやすくなります。同じスキルを持つ社員を集めたいときにも、いろいろなスキルを持つ人材をバランスよく集めたいときにも有効です。
メリット|資格更新など管理に役立つ
更新が必要な資格などがある場合、更新のタイミングを記録しておくと失効の予防に役立てることができます。
業務に必須の資格・免許など、企業としてのコンプライアンスを維持することができるようになります。
管理すべきスキルとは
次にどんなスキルを管理すべきかについてまとめます。
わかりやすい例としては、経験職種・保有資格・語学スキルなどが挙げられます。また業務を行う際に使うような、直接必要となるスキルも当然管理する必要があるでしょう。
そのほか、目に見えやすいスキル以外の能力もあります。そういった能力は業務遂行に必須ではありませんが、円滑に業務を進めるために有用です。管理しておくとチームビルディングや人材配置を検討するときに活用できます。
以下に、専門的なスキル以外のスキルをまとめます。
カッツ・モデルによる分類
「カッツ・モデル」というスキルの分類方法では、スキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」に三分して考えます。
「テクニカルスキル」は、業務遂行能力のことをいいます。業務を行うのに必要となる具体的・直接的なスキルです。「ヒューマンスキル」は、対人関係能力のことです。「コンセプチュアルスキル」は、概念化能力と訳されます。全体の方向性を決める力のような、抽象的な思考力のことです。
ヒューマンスキルはどんな階層にも必要ですが、若い社員ほどテクニカルスキルが、マネジメント側に進むほどコンセプチュアルスキルが必要だとされます。こういったスキルも管理すれば、階層とスキルが一致しているか、社員の昇進を検討するときに有望なのは誰かの判断に役立てることができます。
この「カッツ・モデル」は、アメリカの経済学者ロバート・カッツ氏によるスキルの分類方法です。
ポータブルスキル
「ポータブルスキル」とは、どんな環境へも持ち運んで活用できるスキルのことです。業務内容を問わず役立つ専門性以外のスキルです。厚生労働省の定義では「仕事のし方」「人との関わり方」の2つの要素から成るとされます。
「仕事のし方」の具体例としては、現状の把握・課題の設定・計画の立案・課題の遂行・状況への対応などがあります。「人との関わり方」の具体的な例は、社内対応・社外対応・上司対応・部下マネジメントなどです。
ポータブルスキルもスムーズな業務遂行に役立つ能力です。新規プロジェクトをスタートさせる際や、部署ごとの問題点を探るときに役立つ視点です。管理しておくと役に立つ場面があります。
スキル管理とスキルマップ
スキル管理でスキルを可視化するのには、「スキルマップ」の作成が不可欠です。
スキルマップとは、個々の社員の所有スキルを一覧にしたものです。スキルマップは、スキル管理のための具体的なツールとして活用することができます。スキル管理の具体的な形がスキルマップだと言い換えることもできます。
このようにスキル管理とスキルマップは切っても切れない関係にあります。ここからはスキル管理の具体的な方法として、スキルマップの作成についてまとめます。
スキルマップの作り方
スキルマップの作り方についてまとめます。以下の手順で作成します。
➀管理するスキルの選定
②評価段階の決定
③評価と管理
それぞれのステップごとに見ていきましょう。
作り方➀管理するスキルの選定
選定の前に、「何のためにスキルマップを活用したいのか」という使途を明確にします。たとえば専門スキルの評価を中心に使用したいのか、全社的な人材配置の戦略に活用するのかなどです。
使途に合わせて管理するスキルを選定します。一般的な例としては、資格・語学・研修履歴・資格更新のタイミングなどが挙げられます。
もちろん部署ごとに必要な専門スキルや経験業務もあります。これは、先述したカッツ・モデルのテクニカルスキルに当たります。評価が主な目的の場合は専門スキルの管理が中心となります。なお専門スキルの場合、スキルの分類や階層・粒度などの体系も意識してまとめる必要があります。
人材配置に活用するなら、専門以外のスキルなども管理する必要があります。これは、カッツ・モデルのヒューマンスキルやコンセプチュアルスキル、さらにポータブルスキルなどに当たります。将来的な戦略にも活用したいなら、現状にこだわらず今後育成すべきスキルも含めた方がよいでしょう。
管理するスキルが多いほど活用の可能性が広がりますが、情報収集や評価、まとめる作業が煩雑になります。まずは優先的に管理したいスキルから始めて、徐々に追加していく方が現実的でしょう。
作り方②評価段階の決定
管理するスキルを決めたら、それぞれの習熟度を評価する基準や段階を決めます。スキルマップは、スキルの有無だけでなく習熟度の評価も記録・管理した方が活用の幅が広がるからです。
何段階に分けるかという評価の段階やそれぞれの習得の度合い・基準など、評価軸を決定します。段階は4段階前後を中心に3~6段階程度が一般的です。評価の基準は言葉で表現して、人によるブレのないようにする必要があります。
ISO規格では力量を明確にすることが求められています。そのためISO認証を取得しているか取得を目指す場合は、レベルを設定することが望ましいと言えます。
作り方③評価と管理
決定した評価軸に沿って、個々の社員について評価していきます。
評価にはいろいろな方法があります。具体的には上司が評価する方法、自己申告を上司が修正する方法などが挙げられます。
スキルマップは、一度評価したらおしまいというものではありません。更新など継続的に管理する必要があります。更新のルールも策定しておきましょう。定期的に修正する、変更があれば随時修正するなどのルールが考えられます。
履歴もわかるようにしておくと、スキルアップの状況も把握することができます。
作成することをゴール・目的とせず、初めに明確にした使途・目的に合わせて活用しましょう。
一覧の形式に決まりはありません。使途に合わせて見やすいよう、抽出しやすいようにします。たとえば部署ごとにグループ化して一覧にしたり、スキル別に管理したりするまとめ方があります。
作成に役立つツールなど
スキルマップの作成に役立つツールなどをまとめます。ここでは以下の3つについて解説します。
職業能力評価基準
スキル管理ツール・システム
Excel
いろいろなジャンルのものが混在していますが、「役立つ」という視点で選んでいるためです。ご了承ください。
では1つずつ見ていきましょう。
ツール|職業能力評価基準
「職業能力評価基準」は、厚生労働省による職種・業種別のスキルを評価するための基準です。とくに実務上のスキルを管理したいときに適しています。
本来は評価のためのものですが、スキルマップの項目や基準作りの参考・ベースとして活用することができます。評価寄りの基準ということもあり、「何ができると会社に評価されるのか」を社員が意識しやすくモチベーション向上につながることも期待できます。
Excelで作成されており、データは厚生労働省のサイトからダウンロードが可能です。
ツール|スキル管理ツール・システム
スキル管理やタレントマネジメント用の専門ツールやシステムが多くの会社から提供されています。システムやツールがなくても管理自体は可能ですが、詳細な管理をしたい場合や大人数の管理が必要な場合にはおすすめです。
データ集計やグラフ化・一覧表示などの機能が搭載されているツールが多く、使いやすくなっています。人材配置のシミュレーションができるシステムも多くあります。
人材活用のほかにも、評価向け・目標管理向けなどいろいろなサービスがあります。自社の目的に合ったツール・システムを選びましょう。
ツール|Excel
無料公開されているExcelのテンプレートを使用する方法もあります。スモールスタートに最適です。
自社の目的や使途に合ったテンプレートがあれば、手軽に作成・活用が可能です。多くの人にとって使い慣れたソフトでもあり、作成や修正も楽です。
実際に管理していく際は、共有・更新・管理のルール作りと各自がルールを順守することが必要です。
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