ハラスメント教育とは?最新法改正対応の企業向けハラスメント研修ガイド

近年、職場でのさまざまなハラスメントが社会問題として注目されています。セクシャルハラスメントやパワーハラスメントだけでなく、マタハラやカスタマーハラスメントなど、幅広いハラスメントが従業員の心理的安全性を損ない、組織の生産性や企業イメージにも影響を与えます。
ハラスメント教育は単なる研修ではなく、職場文化の改善や安心して働ける環境づくりに欠かせない取り組みです。
本記事では、ハラスメントの基本知識から教育内容、効果的な研修方法まで、企業が実践できるポイントをわかりやすく整理します。
目次[非表示]
- 1.ハラスメントとは何か
- 1.1.ハラスメントの種類
- 1.2.ハラスメントの法的背景
- 1.3.ハラスメントが起こる原因
- 2.ハラスメント教育の必要性
- 2.1.ハラスメント教育が必要な背景
- 2.1.1.法改正の影響と社会的関心の高まり
- 2.1.2.職場トラブルの増加
- 2.1.3.従業員の心理的安全性の確保
- 2.2.ハラスメント教育を導入する企業メリット
- 2.2.1.リスク回避・訴訟防止
- 2.2.2.離職率の低下
- 2.2.3.採用コストの圧縮
- 2.2.4.企業イメージの向上
- 3.ハラスメント教育に盛り込む内容
- 3.1.基本知識の習得
- 3.2.事例学習
- 3.3.防止・対応方法の習得
- 4.ハラスメント研修の実施方法
- 4.1.集合型研修の特徴とメリット
- 4.2.オンライン研修の活用ポイント
- 4.3.研修効果の測定方法
- 5.ハラスメント教育を職場で活かす
- 6.まとめ
ハラスメントとは何か

ハラスメントとは、職場や職業活動において、他者に対して不当な言動を行い、精神的・身体的な苦痛や就業環境の悪化を引き起こす行為を指します。
近年の法改正では、従来のパワハラ・セクハラに加え、求職者に対する就活セクハラやカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策も事業主の義務として明確化されており、企業はこれらすべてを防止する体制整備が求められています。
ここでは、ハラスメントの種類や法的背景、発生の原因について整理します。
▶関連記事:ハラスメントとは?意味や種類から企業が行うべき対策方法まで
ハラスメントの種類
職場で起こるハラスメントには多様な形態があります。それぞれの特徴を理解することが、適切な防止策を講じる第一歩です。
セクシャルハラスメント(セクハラ):性的な言動や要求、職場内での不適切な関係強要。
改正男女雇用機会均等法では、就職活動中の学生・求職者(求職者等)に対するセクハラ防止も義務化。
パワーハラスメント(パワハラ):地位や権限を利用した過剰な叱責や不当な要求。
モラルハラスメント(モラハラ):人格や感情を攻撃する言動、精神的苦痛を与える行為。
アルコールハラスメント(アルハラ):飲酒の強要や酒席での圧力行為。
マタニティ/パタニティハラスメント(マタハラ・パタハラ):妊娠・育児を理由に不利益や嫌がらせを行う行為。
カスタマーハラスメント(カスハラ):顧客や取引先から従業員に向けられる理不尽な言動。2026年施行予定の法改正により、すべての事業主に防止措置義務が課せられています。
ケアハラスメント(ケアハラ):介護や育児などを理由に業務上不利益を与える行為。
ジェンダーハラスメント:性別に基づく固定観念を押し付ける言動。
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ハラスメントの法的背景
企業がハラスメント教育を行う背景には、法令遵守の必要性があります。
労働施策総合推進法:カスハラ防止の義務化。職場でのパワハラ防止措置義務。
男女雇用機会均等法:就職活動中の求職者等へのセクハラ防止措置の義務化(新13条・14条)。
女性活躍推進法:ハラスメント対策の情報公表や女性管理職比率の報告義務などの追加。
違反が発覚した場合、損害賠償や企業イメージの低下、国からの勧告・公表などのリスクが生じるため、教育と防止措置の導入が求められます。
ハラスメントが起こる原因
ハラスメントは個人の性格や能力だけでなく、組織風土や職場環境も大きく影響します。
個人の要因:ストレス耐性の低さ、過剰な自己主張。
組織の要因:閉鎖的な環境、過度な業績目標、権限の偏り。
伝播構造:上司から部下へ、管理職から現場社員へと負の連鎖が広がる場合がある。
これらの原因を理解することで、教育や研修の内容を適切に設計し、職場全体でハラスメントを防止する体制を整えることが可能です。
ハラスメント教育の必要性

職場のトラブル防止、法令遵守、そして従業員の心理的安全性の確保のため、ハラスメント教育は全従業員にとって欠かせない取り組みです。企業が積極的に教育を実施することで、職場環境の改善やリスク管理にも直結します。
ここでは、教育が必要とされる背景と、導入による企業メリットを詳しく解説します。
ハラスメント教育が必要な背景
法改正の影響と社会的関心の高まり
労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法の改正により、就活セクハラ防止やカスタマーハラスメント対策が事業主の義務となったことから、企業には包括的な防止措置の実施が求められています。
また、メディア報道やSNSの普及によって、ハラスメントに対する社会的関心も高まっており、教育の必要性は以前にも増して重要です。
職場トラブルの増加
ハラスメントが原因での退職や訴訟、社内の人間関係悪化は、企業にとって大きな損失です。教育を通じて従業員の意識を統一し、トラブルを未然に防ぐことが求められます。
従業員の心理的安全性の確保
ハラスメントが存在しない職場は、従業員が意見を発信しやすく、チームのパフォーマンス向上にもつながります。教育は、安全で安心して働ける職場づくりの基盤です。
ハラスメント教育を導入する企業メリット
リスク回避・訴訟防止
研修でハラスメントの定義や対応方法を理解することで、加害者・被害者双方のリスクを減らし、訴訟や損害賠償のリスクを低減できます。
離職率の低下
従業員が安心して働ける環境を整えることで、職場定着率が向上します。心理的安全性が確保された組織は、社員のモチベーションや生産性も高まります。
採用コストの圧縮
職場環境が整備されていることは、採用活動における強みになります。離職率が下がれば、採用・教育にかかるコストも抑制できます。
企業イメージの向上
社会的責任を果たす企業として、ハラスメント防止に積極的に取り組む姿勢は、対外的な評価やブランド価値の向上にもつながります。
ハラスメント教育に盛り込む内容

教育内容を体系的に設計することで、従業員がハラスメントを正しく理解し、日常業務で実践的に防止できるようになります。
ここでは、基本知識の習得から事例学習、具体的な対応方法まで、研修に取り入れるべき要素を整理します。
基本知識の習得
まず、ハラスメントの基礎知識を理解することで、どの行為がハラスメントに当たるのか判断できる力を養います。
- ハラスメントの定義
職場で起こり得るセクハラ、パワハラ、モラハラなどの種類や特徴を理解します。明確な定義を知ることで、自分や同僚の行動が問題になり得るかを判断する基礎が作れます。
- 法的責任・権利
ハラスメントの加害者・被害者双方に法的責任や権利があることを学びます。企業としての防止義務や報告ルールも理解することで、法的リスクの低減につながります。
事例学習
実際の事例を通じて、ハラスメントの発生プロセスや影響を具体的に理解します。学んだ知識を現場で応用する力を育てます。
- 実際の事例から学ぶハラスメント
過去に発生した職場のケースをもとに、どのような行動がハラスメントに該当するかを学びます。リアルな事例は理解度を高め、受講者の共感を促します。
- ケーススタディ・NGライン
日常業務で直面しやすいシナリオを想定し、適切な対応や避けるべき行動(NGライン)を確認します。具体的な判断基準を知ることで、実務での応用力が向上します。
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防止・対応方法の習得
知識と事例を踏まえて、実際に職場でハラスメントを防止・対応する方法を身につけます。
- 日常業務での注意点叱責や指導の方法など、業務上の具体的な場面での注意点を学びます。予防的な行動を身につけることで、ハラスメントの発生を未然に防げます。
- 相談窓口や社内ルールの活用社内の相談窓口や通報体制の使い方を理解し、問題発生時に適切に報告・対応できる体制を整えます。早期対応や記録管理も重要です。
- 建設的に意見を伝えるコミュニケーションスキル相手の立場を尊重しつつ自分の意見を適切に伝える方法を学びます。対立を避けつつ、問題解決に向けた建設的な会話スキルを身につけられます。
ハラスメント研修の実施方法

研修の形式や内容を工夫することで、従業員の理解度と定着率を高めることができます。
ここでは、集合型・オンライン型の研修形態に加え、研修効果を測定するポイントについても紹介します。
集合型研修の特徴とメリット
集合型研修は、受講者同士や講師との双方向コミュニケーションを重視できる形式です。直接対話を通じて、理解を深め、実践力を高めることができます。
- 双方向コミュニケーション質疑応答や意見交換を通じて、受講者の疑問をその場で解消できます。参加者同士のディスカッションは、認識のズレや誤解を修正する機会にもなります。
- ロールプレイ・ケーススタディ活用実際の職場で起こり得るシナリオを用いた演習やケーススタディを行うことで、知識を現場で応用できる力を養えます。加害者・被害者双方の立場を体感することで理解が深まります。
オンライン研修の活用ポイント
オンライン研修は、時間や場所の制約を受けずに受講できるため、従業員全体への教育展開に適しています。特にeラーニングとの組み合わせで、効率的に学習と理解度確認を進められます。
- 時間・場所の柔軟性自宅や出張先など、どこでも受講可能です。集合型では難しい全社一斉研修や、階層別の研修も容易に実施できます。
- eラーニングと組み合わせた効果測定学習履歴や理解度テストをオンラインで管理できるため、受講者ごとの習熟度を可視化できます。反復学習や追加学習も簡単に行えます。
▶関連記事:オンライン研修とは?メリット・種類・導入手順と成功のポイントまで徹底解説
研修効果の測定方法
研修の効果を測定することは、教育の改善や職場定着の評価に不可欠です。理解度や行動変化を確認する手法を組み合わせると、より実践的な成果を確認できます。
- アンケート・理解度テスト受講後にアンケートや理解度テストを実施することで、学習内容がどれだけ定着しているかを把握できます。理解不足がある場合は、追加学習や補足指導に活用できます。
- 職場行動の変化の観察研修後の職場での行動変化やコミュニケーションの改善状況を観察します。実務での行動変化が確認できることが、研修効果の最も重要な指標となります。
▶関連記事:社内研修の効果測定に有効な方法は?効果測定の課題とポイントを解説
ハラスメント教育を職場で活かす

ハラスメント教育は単なる研修にとどまらず、職場文化の改善や心理的安全性の向上に直結します。
ここでは、教育を実務に活かし、持続的に定着させるための具体策を解説します。
ハラスメントが起きない職場環境の作り方
職場全体の文化や環境がハラスメントの発生を抑制するカギとなります。日常的に心理的安全性とコミュニケーションの質を高める取り組みが重要です。
- 心理的安全性の確保意見を自由に言える環境を整え、失敗や問題を報告しやすい雰囲気を作ります。従業員が安心して働ける職場は、ハラスメントの発生リスクを低減します。
- 風通しの良い職場づくり上司と部下、部署間での情報共有や定期的な対話を促進します。問題や違和感を早期に把握できる組織風土は、ハラスメントの予防につながります。
被害者・加害者にならないための対策
教育を受けた個人が、自ら加害者・被害者になるリスクを理解し、適切に行動できることが重要です。
- 加害者にならない行動日常の言動や指導方法に注意し、相手を尊重したコミュニケーションを心がけます。指導や指摘の際には、明確かつ建設的な表現を用いることがポイントです。
- 被害者の権利保護ハラスメントを受けた場合の相談窓口や手続き、報告の方法を周知し、被害者が安心して対応できる体制を整えます。
- 周囲がハラスメントを見かけたときの対応目撃者としての行動指針を理解します。そっと声をかける、話を聴く、記録を残す、早期に上司や相談窓口に報告するなど、適切な介入が重要です。
教育を組織的に定着させる方法
教育を一度実施するだけでなく、組織全体に定着させるためには、仕組みと継続的な取り組みが必要です。
- 知識の定期的インプット研修後も定期的に学び直す機会を設けます。短時間の復習やeラーニングによる再確認で、知識の定着を促します。
- 社内ルールの周知・実践ハラスメント防止のための規程や手順を全社員に周知し、実務で確実に運用されるようにします。ルールの徹底は、組織全体の安心感にもつながります。
まとめ
ハラスメント教育は、法的知識の習得や具体的な事例学習を通じて、加害者・被害者になるリスクを減らすだけでなく、職場全体の心理的安全性や風通しの良い組織文化の形成にもつながります。
教育を単発で終わらせるのではなく、定期的な学習や職場での実践、相談体制の整備と組み合わせることで、知識の定着と行動変容を促すことが可能です。従業員一人ひとりが安全に働ける環境を作ることが、企業の信頼性向上や離職率低下、さらには業績向上にもつながります。
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