能力評価を導入するには?基準・項目・効果・注意点まとめ
最近、能力評価を積極的に導入する企業が増えています。能力評価は、納得感のある評価が可能となりメリットの多い評価方法の1つです。しかし従来の日本の評価とは違う面もあるため、導入にはポイントがあります。
この記事では、能力評価を導入する際に検討すべき、評価基準・評価項目・導入の効果と注意点についてまとめます。企業のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.能力評価とは
- 2.能力評価に活用できる「職業能力評価基準」とは
- 3.能力評価シート
- 4.能力評価の項目
- 5.能力評価のメリットと効果
- 5.1.効果➀人材育成につながる
- 5.2.効果②業務と社員のミスマッチを防げる
- 5.3.効果③社員のモチベーションを高められる
- 6.能力評価導入のステップ
- 6.1.ステップ➀項目・基準の策定
- 6.2.ステップ②社員への告知と評価者への教育
- 6.3.ステップ③体制の整備
- 7.能力評価導入の注意点
- 7.1.➀評価項目・基準は客観的に決める
- 7.2.②評価基準を明確にして周知徹底する
- 7.3.③導入後もブラッシュアップする
- 8.社員の能力向上の学習ならイー・コミュニケーションズにご相談を
能力評価とは
「能力評価」とは、業務を行う能力に対する人事評価の方法です。人事評価には3つの方法があり、その1つです。能力評価のほかには、目標達成に対する「業績評価」・日々の取り組みや意欲に対する「情意評価」があります。これら3つの方法で社員を評価し、最終的には3つの結果から総合的に判断するのが一般的です。多角的に評価することで精度が高まります。
能力評価の対象となる能力は3つに分けることができます。
潜在能力(まだ顕在化していない能力)
発揮能力(現在顕在化している能力)
保有能力(過去に顕在化した能力)
能力評価は「未来への投資」とも呼ばれ、長期的な人材育成にはこれから顕在化する能力である潜在能力への評価が必要です。しかし実績が重視される現在では、これら3つの能力のうち現在の業績にかかわる能力を重視する傾向があります。
能力評価に活用できる「職業能力評価基準」とは
「職業能力評価基準」は厚生労働省による基準で、企業が必要に応じて自由に無料で活用できるものです。能力評価に活用するためにも役立ちます。職種・職務別に、それぞれの業種で必要とされる「知識」「技術・技能」「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」が整理されています。
より具体的には、仕事の内容を「職種」「職務」「能力ユニット」「能力細目」という4つの段階・単位に細分化しています。職業能力をまとめた「能力ユニット」ごとに4つのレベルを設定してあります。レベルの設定は、責任・役割の範囲と難易度をもとにしています。
このように業種×職種×レベル別に求められる能力が体系化されており、能力評価や人材育成に活用可能です。ツールも厚労省サイトからダウンロードすることができ、カスタマイズすることもできます。
能力評価シート
能力の評価シートについては、上記厚生労働省「職業能力評価基準」に「職業能力評価シート」がツールとして用意されています。能力評価シートもデータ(Excel)をダウンロードしてカスタマイズが可能です。ゼロベースよりも能率よくシートを作成することができます。
そのほか、自社でオリジナルの人事評価シートを作っている企業もあります。その場合は、能力だけでなく業績評価なども含めている場合もあるでしょう。
基本の形式としては、評価項目+自己評価欄+上司の評価欄+コメント欄が一般的です。現場では、自己評価やフィードバック、評価の材料として活用されます。
評価の仕組み化・バラつきを抑えるなどの効果もあり、適正に運用すればメリットを多数得ることができます。
能力評価の項目
能力評価を行う際によく用いられる項目についてまとめます。項目の数は多く、業種や企業によっても違いがあります。そのためここでは代表的なものを紹介します。
企画力
実行力
改善力
指導力
知識
1つずつ見ていきます。
項目➀企画力
「企画力」は、問題を解決するために段取りを組み立てる能力です。業務を行うために計画を立てていく能力も含みます。もちろん一般的に「企画」と言われて想像するような、イベントなどのアイディアを思いつく・まとめる能力も企画力の一部です。
ニーズに応えながら実現可能なアイディアをまとめる能力は、問題解決・問題発生の防止・新しいサービスの創出などに役立ちます。企業の進歩・発展のために求められる能力の1つです。
項目②実行力
「実行力」は、企画やプロジェクトを実際に遂行する能力です。企画したアイディアを絵に描いた餅に終わらせず、実際の形にする力です。行動に移しても、やりっ放しで途中で終わらせてしまっては不十分です。最後までやり切ることが求められます。
企画を実際の行動に移してはじめてアイディアが具体的な成果となります。事業の活発化には必須の能力だと言えるでしょう。
項目③改善力
「改善力」は、問題点を発見し主体的に改善していく能力を指します。さらに細かくは、ボトルネックになっている点や問題点を見つける力・その原因を突き止める力・その解決方法を考え出す力・実際に解決まで導く力に分けることができます。
問題発生の防止はもちろん、問題が起こってしまった場合の再発防止にも役立つ能力です。そのほか日常的にも業務の効率化や品質向上にも大きなプラスとなります。
項目④指導力
「指導力」は、部下の個性などに応じて適切な指導を行う能力のことです。客観的かつ公平に人を見ること・納得のいく説明や指示ができることが指導力につながります。ゴールを目指す熱意が後押しとなります。そのほか親身になって接する情の厚さも必要かもしれません。
部下のモチベーションアップや人材育成など人的資源の活用には不可欠で、チームの業務成績向上にもつながる能力です。
項目⑤知識
業務遂行に必要な知識を持ち合わせていることも評価の対象となります。新しく何かを考え出す力は、既存の知識を組み合わせる力でもあります。知識が多いほど発想の幅が広がりよいアイディアを思いつきやすくなり、作業効率や業績によい影響を与えます。知識は学習のほか経験からも増やすことができますが、活用するときには経験や前例にこだわらない柔軟さが必要です。
そのほか部下の指導や商品やサービスの企画にも役立ちます。
能力評価のメリットと効果
能力評価を行うと評価の精度が上がることとなり、それだけでも大きなメリットです。しかもさらにそこから別の効果も派生します。また相互によい影響を与え合って、スパイラルに状況が改善・向上したり離職の予防にもつながったりもします。派生的なメリットとしては次の例が挙げられます。
人材育成につながる
業務と社員のミスマッチを防げる
社員のモチベーションを高められる
1つずつ見ていきましょう。
効果➀人材育成につながる
能力評価は人材育成に役立ちます。評価の基準は求める能力そのものなので、どのような能力があれば期待に応えられて評価されるのか社員が理解できるようになります。
課題と現状の差が明確になり、評価される側がその差を自覚できるようになります。自覚することにより、課題を自発的に改善できるようになります。評価する側はサポートしやすくなりますし、される側もサポートを受け入れやすくなります。その結果、社員の能力向上・人材育成につながります。
効果②業務と社員のミスマッチを防げる
能力評価により、業務と社員のミスマッチを防ぐことができます。評価の過程で能力を把握することにより、業務の適合度や適性が判断しやすくなります。
能力に応じたポストや部署で働くことができるようになり、職場の最適化を測ることができます。能力が発揮され業績が向上するほか、社員の満足度も高まり離職の予防にもつながります。
効果③社員のモチベーションを高められる
能力評価は社員のモチベーション向上に役立ちます。適正な評価ができるようになると社員の納得度・満足度が高まります。
「能力」というと生まれつきのものというイメージがありますが、能力評価の「能力」は自力でどうにもならないこととは限りません。現在の業績を作る能力が重視されることもあり、努力次第で評価を高めることができます。能力に応じて評価されることがわかると、社員のモチベーションが高まります。
能力評価導入のステップ
能力評価を導入する際の手順についてまとめます。以下の手順で行います。
項目・基準の策定
社員への告知と評価者への教育
体制の整備
導入においては、評価の透明性と公平性がカギとなります。1つずつ見ていきましょう。
ステップ➀項目・基準の策定
経営方針などをもとに、評価すべき求められる人物像を明確にします。それに基づき、評価項目や基準を策定・設定します。公平な運用のためには、妥当で適正な基準作りが必須です。
策定したら、テスト運用や検証を行います。実際に導入する前に、評価の精度や運用の工数・手間を確認しましょう。もちろん必要な場合は調整を行います。
精度が低ければ導入の意味がありません。精度が高くても運用しにくければ徐々に運用されなくなってしまいます。初めから100点満点は不可能ですが、可能な範囲で最善の仕組みを目指しましょう。
ステップ②社員への告知と評価者への教育
➀で策定した評価の項目と達成度を示す基準を、評価される側の社員に告知します。基準を示すことで透明性が保たれます。
また、評価する側の教育はかなり重要となります。評価者による評価のバラつきは評価される社員の不満につながるからです。達成度の基準は必ず理解させて、同じ人を評価したとき同じ評価になるようにします。
公平な仕組みが作れたら、それを適切に運用できるような意識を社員の間に育てましょう。
ステップ③体制の整備
運用するための準備として、社則への反映や明文化などを行います。体制としては、経営陣と人事の連携も大切です。
新しい評価方法を導入しても、従来・既存の方法に戻ってしまうケースもあります。能力の評価でなく、年功序列的評価になってしまうといった場合です。
適切な基準を作って透明性を担保しても、それが実際に運用されなくては意味がありません。導入して終わり、形骸化してしまったといった事態を避けるような仕組み作りを行いましょう。
能力評価導入の注意点
能力評価を導入する際の注意点についてまとめます。以下の3点が挙げられます。
評価項目・基準は客観的に決める
評価基準を明確にして周知徹底する
導入後もブラッシュアップする
すでに述べた通り、導入には公平性と透明性が求められます。上記3点はそれを実現するためのポイントでもあります。1つずつ見ていきましょう。
➀評価項目・基準は客観的に決める
まず、評価項目・基準は客観的に決めます。項目は経営方針や計画に合致していないと形骸化しやすくなります。評価を待遇に反映させるだけでなく業績向上につなげるためには、経営方針を具体化するような項目を選ぶ必要があります。
また基準は評価者間のブレがなくなるよう、定量的なものが好ましいと言えます。客観的で公平な評価が可能になります。
そのほか、現実的に運用できるかどうかも重要です。評価作業の負担が大きい、基準設定が理想的すぎて非現実であるなどの場合は形骸化する可能性が高くなります。見直しが必要です。
②評価基準を明確にして周知徹底する
納得感のある評価と運用には、評価する側への教育と評価される側への周知が必要です。
評価者による評価のバラつきは不満につながります。最悪の場合は人材流出や訴訟の原因となりかねません。同じ判断ができるようになるための教育が必須です。
評価者への教育では、評価者全員がモデル社員の評価をして比較するなど、基準の理解と標準化が必要です。評価エラーの例としては、以下のようなものがあります。
ハロー効果…対象を評価するとき一部の目立つ特徴に引きずられて全体を評価してしまう
寛大化傾向…厳しすぎる評価を避けるあまり、どの対象者も高く評価してしまう
厳格化傾向…甘すぎる評価を避けるあまり、どの対象者も低く評価してしまう
中心化傾向…偏った評価を避けるあまり、どの対象者も同じく平均的に評価してしまう
こういった例を知識として知っておくことも適正な評価に役立ちます。
また評価する側の教育だけでなく、評価される側についても評価制度への理解が得られないと満足度が下がることとなります。評価される側にも評価方法を周知しましょう。
③導入後もブラッシュアップする
実施後も、問題点を発見してブラッシュアップしていくことが大切です。評価の精度や運用のしやすさをチェックしましょう。
また時代や社内の状況などに応じて、評価項目の見直しや変更が必要になる場合もあります。制度を硬直化させないためにも、完成した固定的なものと捉えないように注意しましょう。
社員の能力向上の学習ならイー・コミュニケーションズにご相談を
能力評価にはメリットが多くあります。能力評価を導入して個々の能力を把握することは、人材育成のプラン作成にも役立ちます。
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