戦略人事とは?実行するための必要事項まとめ【解決すべき課題・機能・手順】
「戦略人事」の重要性が認識されるようになってきました。しかし多くの企業が戦略人事の重要性を理解していながら、実行できている企業が少ないというアンケート結果が多くあります。実行に移すためには、自社に何が足りないか、何が問題かまず把握しなくてはなりません。そのうえで必要な機能を準備し、必要な手順で行っていく必要があります。
この記事では、戦略人事について上記のように実行するときに必要なことについてまとめます。重要性は理解していても実行できていないという企業のご担当者様は、ぜひご参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.戦略人事とは
- 2.戦略人事のために解決すべき課題
- 3.戦略人事に必要な4つの機能
- 3.1.機能|HRBP(HRビジネスパートナー)
- 3.2.機能|CoE(センターオブエクセレンス)
- 3.3.機能|OD(組織開発)・TD(人材開発)
- 3.4.機能|OPs(オペレーションズ)
- 4.戦略人事の手順
- 4.1.手順➀経営計画・中長期計画の理解
- 4.2.手順②求める人材像の明確化
- 4.3.手順③人事計画の策定
- 4.4.手順④計画の実施とPDCA
- 5.戦略人事の人材開発はイー・コミュニケーションズにご相談を
戦略人事とは
「戦略人事」とは、企業の目標達成のために、人的マネジメントを行っていくことをいいます。企業の資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」の面から目標達成を目指すものです。
従来の労務や管理中心の人事と違い、人事面から目標達成にコミットしていく「攻め」の人事と言うことができるでしょう。戦略人事は、1990年代にアメリカの経済学者デイブ・ウルリッチ氏が提唱した概念です。欧米では実践が進んでいますが、日本は注目されている段階でまだ実践例は少ないのが現状です。
経営戦略と戦略人事
戦略人事が実現を目指す「目標」は、自社の経営戦略から導かれるものです。戦略人事は経営戦略を具体化・達成する人事上の施策です。具体的には、人材の適正配置、必要な人材の採用や教育などが例として挙げられます。
戦略人事のためには、まず経営戦略や中長期計画について理解することが必要です。あるいは、戦略人事を伴わない経営戦略は具体性に欠けるという言い方をすることも可能でしょう。
人事戦略と戦略人事
「戦略人事」と紛らわしい言葉に、「人事戦略」があります。どちらも人事の施策を改善・適正化するための戦略ですが、対象としている範囲が異なります。
人事戦略は範囲が人事業務に限られるのに対して、戦略人事は会社全体に及びます。人事戦略の例としては、採用手法の変更や研修の外注化などが挙げられます。戦略人事の例は、新規事業に必要なスキルを持つ人材の採用や開発、新規部署の創設などです。
また人事戦略は必ずしも経営戦略に結びつくとは限りませんが、戦略人事は経営戦略や目標達成と深いかかわりがあります。その点も大きな違いです。
戦略人事のために解決すべき課題
戦略人事を行う際に、障壁となる問題点や課題が社内に存在することが多くあります。ここでは戦略人事を実行するために解決すべき課題についてまとめます。次の3つに分けて解説します。
経営陣の課題
人事部の課題
従業員の課題
それぞれについて見ていきましょう。
課題|経営陣の課題
まず経営陣の課題です。経営陣で多く問題点となるのは次の2点です。
戦略人事の重要性を理解していない
経営戦略が不明瞭
前者はワンマン経営者などに多く見られ、人事をパートナーと見なさず考えを受け入れないという場合です。客観的・論理的な施策を行うことができず、経営者個人の主観的・属人的な施策になってしまいます。思い付きで施策を変えるので一貫性がない場合もあります。
後者の場合は、経営陣に経営戦略や明確なビジョンがないケースです。先に述べたように、戦略人事は経営戦略をもとに組み立てるものです。経営戦略がはっきりしていないと、戦略人事の方針自体が立てられなくなってしまいます。
まずは戦略人事の重要性を理解してもらうことと、経営戦略を明確にすることが必要です。
課題|人事部の課題
次に人事部の課題です。人事部で多く問題となるのは次の2点だと言えます。
理解不足
管理業務の多さ
前者は、経営戦略が理解できていない場合です。理解できていない状態では戦略人事を行うことができません。そのほか戦略人事の重要性を理解できておらず、労務や管理が人事業務だという考えから脱却できていない場合もあります。その場合も既存の業務に終始してしまい、戦略的な施策を行うことができません。
後者はルーティーンの業務で手いっぱいになってしまっている場合です。攻めの人事を行う余裕がなくなってしまいます。
これらの問題を解決するには、人事部内の意識改革と、ツール導入やワークシェアリングなどによる業務効率化などが必要です。
課題|従業員の課題
従業員の問題点としては、戦略人事への消極的な姿勢に尽きるでしょう。
とくに年長者やベテラン社員は、既存の体制の中でキャリアを築いてきました。そのため、戦略人事が導入されると自分のキャリアにマイナスになるのではないかという恐れを感じがちです。その結果、従来の年功序列型でいいという考えに固執してしまったり、戦略人事の導入に反発してしまうことが多くあります。
従業員の理解を得るためには、「企業の競争力のためには戦略人事が必要だ」ということを理解させる必要があります。絶えず競争力を高める努力をしていなければ、相対的にポジションが下がっていってしまいます。ライバルはその努力をしているからです。ふだんから改善や努力の必然性を伝えましょう。
戦略人事に必要な4つの機能
戦略人事に必要な機能についてまとめます。戦略人事を行うためには、人事部が以下の機能を発揮できるようにする必要があります。
HRBP(HRビジネスパートナー)
CoE(センターオブエクセレンス)
OD(組織開発)・TD(人材開発)
OPs(オペレーションズ)
見慣れない言葉が並んでいるかもしれませんが、個々の機能は聞けばうなずけるものばかりです。1つずつ見ていきましょう。
機能|HRBP(HRビジネスパートナー)
「HRBP」(HRビジネスパートナー)は、各部署のビジネスパートナーとして協働する機能のことです。
現場でヒアリングを行い、そこで得られた意見をもとにニーズや課題を発見します。現場だけでなくもちろん経営サイドとも連携し、経営陣の求めるものも理解する必要があります。両者の意見を吸い上げて経営戦略と現場のニーズを施策に反映させます。
ときには望む方向が部署によって一致しないこともあります。調整して意見をまとめるためには折衝力が必要です。またヒアリングした意見から、まだ自覚されていないニーズや真意を読み取るためには、洞察力が求められます。
人事以外の部署との連携がどれだけしっかりできるかが、戦略人事成功のカギとなります。HRBPはとても重要な機能だと言えるでしょう。
機能|CoE(センターオブエクセレンス)
「CoE」(センターオブエクセレンス)は、人事面のプロフェッショナルとしてビジネスパートナーをサポートする機能です。ここでいう「ビジネスパートナー」は、各部署のリーダー・経営陣を指します。実務よりは計画や制度設計を中心に担います。
HRBPで認識した課題を、スキルや専門知識・ツールなどを活用して解決する方法や制度の設計を行います。採用・育成・配置・評価など、あらゆる面で人事のプロフェッショナルとしてマネジメントやコンサルティングを行い、各部署や会社全体の問題解決と業績向上を目指します。
「エクセレンス」は「卓越」の意味です。機能名からもわかるように、高い専門性が求められます。専門的な知識と経験がなければ効果的な計画や制度設計はできないからです。
機能|OD(組織開発)・TD(人材開発)
「OD」は「組織開発」の意で、「Organization Development」の略称です。理想的な組織を構築する機能です。
単純に人を組み合わせるだけでは組織化の機能としては不十分です。組織のメンバーに企業理念を浸透させたり、望ましい方向に方向付けを行い意識を揃えるなど、組織のマインド面も育成していかなくてはなりません。また組織に問題がある場合は、人と人・チームとチームの関係性や相互作用の面から問題にアプローチして改善を行います。
「TD」は「人材開発」を意味し、「Talent Development」の略称です。経営戦略実現のための人的マネジメントのことです。個々の人材の知識やスキルなどを管理する機能です。
組織作りにも人材開発にも、自社の企業理念を反映させなければなりません。ODもTDも、企業理念の理解が求められます。
機能|OPs(オペレーションズ)
「OPs」(オペレーションズ)は、ビジネスパートナーのサポートを行う「CoE」の施策を実際に行う機能です。
人材配置を例に考えてみましょう。CoEによる方針をもとに、具体的に誰をどの部署に異動・配置するかを決定・実行します。この一連の作業をOPsといいます。また、給与計算など基本的な管理などを実際に行う機能もOPsに含まれます。正確さや確実さはもちろん、作業の効率も求められます。
そのほか、必要に応じて作業を外注化し、最低のコストで最大の成果を上げることなどもOPsに含まれます。外注した場合は外注先の管理も行います。
戦略人事の手順
次に、戦略人事を行うための手順について解説します。戦略人事は以下の手順で行います。
➀経営計画・中長期計画の理解
②求める人材像の明確化
③人事計画の策定
④計画の実施とPDCA
それぞれのステップについて見ていきましょう。
手順➀経営計画・中長期計画の理解
まず一番初めに、経営計画や中長期計画を確認し内容を理解します。経営計画が人事計画の基礎となるということは繰り返し述べてきた通りです。ベースとなる経営計画を理解・把握しておかなくてはなりません。
さらに、人材の現状を把握します。社員の人数や配置、それぞれの所有スキル・経験業種などを確認します。正確な現状を把握しておかないと、計画を立ててもズレが生じて思い通りの結果を得ることができません。注意しましょう。また一覧などの形でスキルを可視化しておくと、のちの手順がやりやすくなります。
続いて計画と現状の間の差を確認します。社員の絶対数が足りない場合があるかもしれませんし、今後必要となるスキルを持つ人材がいない場合があるかもしれません。そういった計画と現状の間にあるギャップが解決すべき課題ということになります。
手順②求める人材像の明確化
次に、経営計画や目標を達成するために、あるいは現状との差を埋めるために、どんな人材が必要かを明確にします。
目標を達成した状態を想定し、そのときの社員はどんな状態かを言葉で表現してみましょう。それが求める人材像となります。具体的に表現するほど理解しやすくなり、比ゆ的に言えば計画の解像度を高めることができます。
また保有スキルなど人材像に加えて、想定される必要な人数も確認しておきます。
手順③人事計画の策定
求める人材像と人数が明確になったら、必要な人材を必要な人数確保するための人事計画を立てます。
人材像と人数が決まればおのずと計画の方向性も決まってきます。方向性に基づいて、具体的な内容を決めていきましょう。たとえば採用するのか育成するのか、それとも両者を組み合わせるのか、採用するなら新卒か中途採用か、募集方法はどうするか、育成するなら方法はどうするかなどです。期間や期限などスケジュールも決めます。
そのほか、あらゆる面で具体的な内容を詰めていきます。現状の制度で実行可能かどうかの検討や、計画実施のために必要なスキルやツールの洗い出しや確保の方法確認なども行いましょう。
手順④計画の実施とPDCA
計画が完成したら、具体的な準備に取りかかります。そうして必要な手続きをしたうえで計画を実行に移しましょう。
実施した後は、やりっぱなしにせず結果をまとめます。採用や育成なら計画の目標が達成できたかどうか、異動なら配置した人材の成果はどうかなどを確認します。
さらに担当者の反省や感想もまとめておきます。結果に対する理由などの分析もしてみましょう。うまく行かなかったときは理由を分析するものですが、成功したときこそ要因を分析します。成果を出す可能性を高めることができます。そのほかオペレーションやスケジュールなど、数字にならない面の反省も残しておくと次に役立てることができます。
結果と反省をもとにさらにPDCAを回して、精度を高めていきます。
戦略人事の人材開発はイー・コミュニケーションズにご相談を
戦略人事は、今後もますます重要となって行くでしょう。そして戦略人事の具体的な人事計画は、採用と育成が中心です。とくに労働人口の減少により新たな採用が難しい現在、育成の重要性が増しています。戦略人事を可能とするためには、効果的な人材育成がポイントとなります。
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