
人事評価の不満をなくす!人事評価の基礎知識+おかしいと思わせない解決策
いろいろなところで、人事評価への不満をよく耳にします。御社の社内でもそのようなことはないでしょうか?しかしよく聞く話でよくあることだからと言っても、放置しておくと危険です。人事評価に関する不満は、人材流出の原因になります。とくに業績のよい社員ほど、評価に不満があると他社へ転職する可能性が高いと言えます。影響・打撃が大きいことになってしまいます。
この記事では、人事評価の基礎的な知識に加えて不満を解消する方法についてまとめます。企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.人事評価とは
- 2.人事評価制度の機能・要素
- 3.人事評価の目的
- 3.1.➀理念・目的の浸透
- 3.2.②適切な評価の実施
- 3.3.③適切な報酬の提供
- 3.4.④適材適所の人材配置
- 3.5.⑤人材育成への活用
- 4.人事評価の種類
- 5.人事評価の種類別の項目
- 6.人事評価の手法
- 6.1.➀MBO(目標管理制度)
- 6.2.②OKR(目標と成果指標)
- 6.3.③コンピテンシー評価
- 6.4.④ノーレイティング
- 6.5.⑤360度評価
- 7.人事評価への不満ポイントと解決策
- 7.1.➀評価の基準が不透明
- 7.2.②評価が待遇に反映されない
- 7.3.③評価者により評価に差がある
- 7.4.④業務内容・実状を知らない上司が評価する
- 7.5.⑤自己評価と上司の評価に差がある
- 8.納得させる人事評価シートの書き方(評価側)
- 8.1.書き方➀結論から書き、全体を簡潔にまとめる
- 8.2.書き方②評価の根拠・理由を客観的に書く
- 8.3.書き方③結果とプロセスの両方について触れる
- 8.4.書き方④評価できる点・これからの課題の両方を書く
- 8.5.書き方⑤前向きな表現を心がける
- 9.人事評価シートのコメント例(評価側)
- 9.1.コメント例➀営業職の場合
- 9.2.コメント例②事務職の場合
- 9.3.コメント例③IT系職業の場合
- 9.4.コメント例④製造職の場合
- 9.5.コメント例⑤販売職の場合
- 10.教育で評価の高い社員を増やしたいならイー・コミュニケーションズにご相談を
人事評価とは
「人事評価」とは、社員の業績や勤務態度、能力・スキルを評価することです。評価する仕組みは「人事評価制度」といいます。
「人事評価」とよく似た言葉に「人事考課」があります。両者はほぼ同じ意味の言葉です。あまり違いを気にする必要はありません。細かくなりますが両者の違いを言うと、人事評価の方がやや広い範囲の内容を含みます。「人事考課」は業績などの査定だけを指すことがあるのに対して、「人事評価」は待遇などへの反映や目標設定までより広い意味を指すことがあります。
人事評価制度の機能・要素
人事評価制度には、3つの機能・要素があります。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
一般的には、それぞれの制度が連動して人事評価制度全体が構成されています。各要素の内容・働きについて、1つずつ見ていきましょう。
➀等級制度
「等級制度」は、社員に求める能力・職務・役割などを分類・階層化する制度です。社員を序列化する働きを持っています。等級制度はさらに「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3つの種類に分けることができます。
「職能資格制度」は、能力で社員を区分する制度です。日本で長く使われており、現在も主流となっています。一般に勤務年数が長くなると能力も高まるため、勤務年数重視で年功序列的な評価となる傾向があります。
「職務等級制度」は、職務で社員を区分する制度です。技術職が多い職場で使われてきました。ベンチャーでも採用されることの多い制度でもあります。
「役割等級制度」は、職能資格制度と職務等級制度のハイブリッド型です。ミッションに応じて社員を区分します。新しい制度のため、まだ統一的な定義がなく実際の導入方法も多様です。
②評価制度
「評価制度」は、社員の能力や企業への貢献度などを評価する制度です。評価制度の評価をもとに、等級制度の階級を決めたり報酬制度で報酬を決めたりします。
総合的・客観的な評価を行うために、定量的・定性的2種類の目標を組み合わせて設定して評価することが多くあります。定量的な目標としては業績・成果などが、定性的な目標としては行動指針の体現度・成長度などが挙げられます。
③報酬制度
「報酬制度」は、評価制度での評価をもとに報酬を決める制度です。「報酬」は給与や賞与、退職金など金銭に関するものが基本です。そのほか社内報で紹介するなど、金銭ではなくモチベーションを向上させるような報酬もあります。
報酬制度の報酬決定の基準は、等級制度の影響を受けます。たとえば等級制度としては職務等級制度を採用しているなら、職務が重視される報酬制度の仕組みになります。等級制度で職能・職務・役割のどれを基軸とするかによって、報酬制度の体系は大きく変わることになります。
人事評価の目的
人事評価には、いろいろな目的があります。先に述べた機能における等級・評価・報酬を決めるという目的はもちろん、そのほかに付随的な目的もあります。以下、具体例をいくつか挙げます。
- 理念・目的の浸透
- 適切な評価の実施
- 適切な報酬の提供
- 適材適所の人材配置
- 人材育成への活用
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
➀理念・目的の浸透
まず、理念・方針などの浸透があります。「どういう人材を評価するか」にはおのおのの企業の理念や方針が現れています。自社の求める人材は自社の理念や目的に合う人材であり、自社の求める人材を評価するような基準ができているのがふつうだからです。
「評価される人材=自社の理念・目的に合った人材」ということです。人事評価により、そういった企業の考え方が社員に伝わります。
②適切な評価の実施
さらに人事評価の目的として、適切な評価の実施が挙げられます。当然と思われるかもしれませんが、「適切な」評価となるとかなり精緻に設計・運用された人事評価の仕組みが必要です。客観的に成果などを査定し、成果に対して妥当な給与や処遇に反映させる必要があります。
適切な評価が行われないと社員のモチベーションが低下し、ときには離職の原因となってしまうほか最悪の場合には訴訟に発展する場合もあります。
③適切な報酬の提供
適切な報酬の提供も人事評価の重要な目的の1つとなっています。適切な評価と適切な報酬は連動しており、評価と同様に適切な報酬が提供されないと人材流出の原因となりえます。逆に適切に報酬が与えられる場合は社員のモチベーションが高く保たれ、企業の業績にもプラスとなります。
適切な評価を待遇に反映させることは企業にとっては社員に対する義務であり、人材確保のためにも必須です。
④適材適所の人材配置
適材適所となる人材配置も目的の1つです。社員の適切な評価ができると、1人ひとりの得意・不得意がわかりそれに合わせた配置ができます。その結果、職場の最適化を図ることができます。
適材適所は働きやすさやモチベーションにつながり、人材の定着にも効果があります。そのため、多くの企業にとって労働力の確保が課題となっている現在、適材適所の人材配置が重要視されています。
⑤人材育成への活用
さらに人材育成への活用も挙げられます。目標を設定してその達成度に対する評価を行う場合は、それだけで成長を促すことになります。
さらに評価を行うと、求められる基準と現状の差を把握することができます。個々の課題が明確になり人材育成に役立ちます。個々が成長することは企業にとっても大きなプラスとなります。
このように適切な人事評価が行われることによって、さまざまな付随的な効果が期待できます。
人事評価の種類
人事評価は、どのような側面への評価かによって3つに分けることができます。すなわち、「業績評価」「能力評価」「情意評価」です。それぞれについて解説していきます。
業績評価
「業績評価」は、目標達成の状況・その過程への評価です。営業成績など、数値で表すことができることが多く客観的な評価が可能です。多くの企業で広く取り入れられています。
目標と結果の比較で結果を可視化することができ、公平性が高いというメリットがある方法です。過程より結果が重視される傾向にありますが、過程・プロセスをどの程度考慮するかは企業の考え方によります。結果を重視しすぎると、思い切ったチャレンジができなくなるというデメリットがあります。一定の割合で過程も考慮する方が好ましいでしょう。
評価結果をもとに、社員のランク分け(SA・S・A・B・Cなど)を行います。「MBO(目標管理制度)」という考えに基づいた評価方法です。
能力評価
「能力評価」は、知識・スキルへの評価です。評価対象となる「能力」は、さらに「保有能力」「発揮能力」「潜在能力」の3つに分類することができます。
成果主義の傾向が強い現在は、実際の結果をもたらした「発揮能力」が主な評価対象となることが多いと言えます。
どの能力を重点的に評価するかは企業の考え方によりますが、保有能力や潜在能力は評価の対象としにくい一面があります。発揮能力は現在の実績に関わる能力ですが、保有能力は過去、潜在能力は未来に関わるものです。保有能力・潜在能力は評価の対象期間とずれてしまうという理由によります。
能力評価では、売上などの実績とは違う面から難易度や水準の高い業務をこなした従業員を評価することができます。あるいは、目立たなくても裏方となって全体をフォローしたりトラブル回避に貢献した点なども評価することが可能です。このように数値化しにくい裏方のような仕事でも、業務を行う能力を評価することができます。
情意評価
「情意評価」は、日々の業務の取り組み方や姿勢への評価です。規律性・積極性・責任性・協調性が行動に現れているかを評価します。モチベーションや生真面目さなどといった側面を評価することができます。
まだ結果に結びついていなくても、真面目にこつこつ取り組んでいる社員を評価することができるメリットがあります。
自己評価と上司の評価のほか、同僚や後輩からの評価も合わせて判断すると精度が高い評価をすることができます。
あらゆる側面を考慮して多角的かつ客観的な評価を行うため、業績評価・能力評価・情意評価の3つの評価を組み合わせて総合的に評価することが多くあります。どの側面を重視するかは企業によって異なります。
人事評価の種類別の項目
次に、人事評価を行う際の具体的な項目について、種類別にまとめます。以下の順に解説します。
- 業績評価の項目
- 能力評価の項目
- 情意評価の項目
それぞれの評価対象となる大まかな内容はすでに述べたので、具体的な項目について例を挙げながら確認していきます。1つずつ見ていきましょう。
業績評価の項目
「業績評価」の対象は、厳密には営業成績のように数値化できる「業績」と管理部門のように数値化しにくい「成果」に分けられます。それぞれについて結果とプロセスの項目を立てて、行動そのものを評価するようにしましょう。
営業職を例にすれば、売上高や契約件数は業績、DMやハガキの発送件数・訪問件数などはプロセスに当たります。多くの場合では目標の達成度が評価の基準となります。プロセスに関してはほかの社員と相対的に比較することでも努力度を計ることができます。
数値化しにくい成果については、課題点改善と業績向上の2点に関する行動や提案を項目を盛り込みましょう。
能力評価の項目
能力評価については、基本的な能力よりもより高度な能力の評価に比重を置きます。基本的な能力は持っていることが当然の前提条件とし、高度な能力を中心に評価します。
能力評価の対象は、実務を行うための能力のほかスケジュール管理能力やコミュニケーション能力なども含まれます。業務上必要な能力の種類は職種によって多岐に渡るため、職種ごとに設定するのが一般的です。
なお対象期間中の成果に現れていない能力(過去の保有能力・将来的な潜在能力)よりも行動や実績を伴った発揮中の能力を評価項目に加えましょう。
情意評価の項目
情意評価の対象は、前述したように規律性・積極性・責任性・協調性です。情意評価も基本的な項目の比重を軽く、高い意欲を表す項目の比重を高くします。また能力評価同様、具体的な行動に現れていることを条件に評価します。「積極的な性格である」ではなく「積極的に業務に取り組む」の方を基準にしなければなりません。
企業理念や方針・目標の理解も情意評価の項目となります。最低限の評価が得られない場合は、社員として失格と言えるでしょう。
人事評価の手法
人事評価の具体的な手法についてまとめます。手法は多くありますが、日本で主流となっているもの・新しく導入が進んでいるものを中心に紹介します。
ここでは、以下の5つの手法についてまとめます。
MBO(目標管理制度)
OKR(目標と成果指標)
コンピテンシー評価
ノーレイティング
360度評価
評価だけを行う手法よりも、人材育成やマネジメントとセット・もしくは育成やマネジメントが中心で評価は付随しているような手法が増えつつあります。
それでは1つずつ見ていきましょう。
➀MBO(目標管理制度)
「MBO(目標管理制度)」は、社員が事前に決めた目標に対する達成度合いで評価する手法です。達成度合いに応じて社員をランク付けします。成果主義的と言えます。
目標とその達成度という形で結果が可視化され、評価する側からは評価しやすく、される側は納得しやすいというメリットがあります。
現在の主流となっている手法ですが、基本的に1年とやや長いスパンで考えるため状況の変化が激しい業界ではほかの手法に切り替える例が増えています。
目標の難易度の設定は、本人と企業とで調整しながら適切に設定することが大切です。
②OKR(目標と成果指標)
「OKR(目標と成果指標)」は、アメリカのインテル社で誕生しGoogleなども導入している目標管理手法です。
チームを鼓舞する1つの定性的な「目標」に、個々が複数の定量的な目標「主要な結果」を付随して設定します。1~3か月のスパンで設定・追跡・再評価を行うため、変化のスピードの速い業界で採用されています。
③コンピテンシー評価
「コンピテンシー評価」は、高い業績を上げている社員の行動特性をモデル化し、それを基準に社員を評価する手法です。
基準が明確なので、評価する側は評価しやすくされる側の納得感を感じやすいというメリットがあります。
さらにモデルがはっきりしているので、人材育成もやりやすいこともメリットです。
④ノーレイティング
「ノーレイティング」は、上記MBOに見られるような社員のランク付けを廃止した評価方法です。期間を定めずリアルタイムの目標を設定し、上司とのコミュニケーションを密に取りフィードバック、その都度評価します。
スピーディーな行動と評価が可能で、変化の激しい業界に向いています。しかしコミュニケーションやフィードバックを多く行うため、評価者の負担が大きいというデメリットがあります。
⑤360度評価
「360度評価」は、上司だけでなく同僚や後輩・他部署の社員などさまざまな立場の人も評価を行う手法です。さまざまな視点が加わることで、上司が気づいていなかった側面がわかります。多角的で精度の高い評価が可能となります。
評価に不慣れな人も評価者となるため、思い込みの排除など公平性を確保することが大切です。待遇に反映させるほか、周囲はどんな点を評価しているかを伝えるために活用される例が多くあります。
人事評価への不満ポイントと解決策
人事評価に社員が不満を感じるケースは多くあります。人事評価は納得感が重要です。不満を放置すると人材流出や業績悪化につながります。場合によっては訴訟となる可能性もあります。社員の言い分が不当だという場合もありますが、それでも疑問を感じさせない、払拭できる体制作りが大切です。
人事評価について、社員の75%が見直しが必要としながら上司の8割が評価は適切だと回答している調査結果もあります。この結果に見られるように、評価する側とされる側の間には認識にズレがあるものと考えるべきです。放置は危険です。
よく言われる次の5つの不満に対して、それを解決する方法についてまとめます。
- 評価の基準が不透明
- 評価が待遇に反映されない
- 評価者により評価に差がある
- 業務内容・実状を知らない上司が評価する
- 自己評価と上司の評価に差がある
不満は、「査定に対する不満」と「待遇に対する不満」に分けられます。対策は公平性と透明性がカギとなります。
それでは1つずつ見ていきましょう。
➀評価の基準が不透明
「評価の基準が不透明」というのは、最も多い不満です。査定は上層部がクローズドな場面で行うことが多いことも背景となっています。
■よくある原因
- 評価基準が統一されておらず、個人的なバイアスが加わっている(好き嫌い、先入観、1つの成功・失敗で期間全体を評価してしまうなど)
- 評価基準が公開されていない
■対策
- バイアスを排除するルール作り(評価基準の定量化・絶対評価化)とそのルールを守るための評価者の教育
- 評価に対する第三者のチェック
- 社員への基準の周知
②評価が待遇に反映されない
「評価が待遇に反映されない」というのは待遇への不満です。業績が待遇に反映されない場合は退職につながる可能性があります。成績の良い人ほど流出する可能性が高くなり、企業へのインパクトも大きくなります。
■よくある原因
- 「評価機能」と「報酬機能」が連動していない
- 評価と報酬の対応がアンバランス
■対策
- 評価と報酬をつなげる仕組みづくり
- 評価と報酬のバランスの適正化
- 評価基準と対応する報酬を明文化して社員に周知
③評価者により評価に差がある
「評価者により評価に差がある」は、評価に関する不満です。同じ成績でも評価に差があると不公平感につながります。
■おもな原因
- 評価者間の評価の基準が揃っていない(全体を厳しく評価する「厳格化傾向」・同甘く評価する「寛大化傾向」・同平均的に評価する「中央化傾向」など)
■対策
- 評価項目・評価指標の定量化
- ほかの社員との比較「相対評価」でなく、目標値と比較する「絶対評価」の導入
- 評価者を事前に教育(同じ社員を各自評価して、相互の差をチェックするなど)
- 評価が出揃ってからの第三者チェック
④業務内容・実状を知らない上司が評価する
「業務内容・実状を知らない上司が評価する」は、評価者への不信です。評価者個人への不信は根深い傾向があり、仮に定量的・客観的評価だったとしても不満が出る可能性があります。
■おもな原因
- 評価者への不信感など
■対策
- 日常的・意識的なコミュニケーション(面談・1on1など含む)
- 評価体制の見直し
- 評価基準の周知
- 評価後のフィードバック
- 360度評価の導入
⑤自己評価と上司の評価に差がある
「自己評価と上司の評価に差がある」は評価に対する不満です。正しく評価されていないという感情は放置すると危険ですが、自己評価が妥当なのかも検証が必要となります。
■原因
- 評価者と社員で目標のすり合わせができていないため、達成度に認識のズレがある
- 結果をどう評価するかの考え方のズレ
■対策
- 期初・目標設定時に、評価者と社員で目標を共有・確認
- 自己評価の基準の明文化と社員への周知
- 評価は会社への貢献度で決まることの周知
- 評価者側の基準の定量化・明文化
- 評価者の教育
- 360度評価の導入
納得させる人事評価シートの書き方(評価側)
評価そのものを納得感のあるものにするのは当然ですが、評価結果を納得できるように伝えることも大切です。次に、社員が納得できるように評価する側が人事評価シートを書く方法についてまとめます。以下のポイントを守って行います。
- 結論から書き、全体を簡潔にまとめる
- 評価の根拠・理由を客観的に書く
- 結果とプロセスの両方について触れる
- 評価できる点・これからの課題の両方を書く
- 前向きな表現を心がける
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
書き方➀結論から書き、全体を簡潔にまとめる
評価に限りませんが、結論を初めに述べつつ全体を簡潔にまとめることがわかりやすさの秘訣です。わかりやすいとよく言われる文章の構成は、「結論→理由→例(→もう一度結論)」の形です。理由→結論よりも、結論→理由の方が理解しやすい文章になります。「結局何が言いたいのか」がわかっている状態で説明を読むことができるからです。
さらに、ダラダラと続く文章にするのではなく要点だけを手短にまとめた文章の方が理解しやすくなります。納得できるのではないでしょうか。
書き方②評価の根拠・理由を客観的に書く
評価の根拠・理由を客観的に書くことも大切です。評価だけをまとめても、なぜその評価に至ったのかがわからなければ納得感は薄れてしまいます。上で紹介した文章の構成「結論→理由→例(→もう一度結論)」にある通り、理由は必ず説明しましょう。
さらに理由は客観的でなくてはいけません。評価に対する不満は、書かれている理由が不透明だったり偏っていると感じることからも生まれます。評価そのものを客観的に行えば、その説明も客観的にすることができます。客観的に判断して、その経緯をそのまま説明しましょう。
書き方③結果とプロセスの両方について触れる
結果とプロセスの両方について触れることも大切です。結果が評価の対象になるのはもちろんですが、すでに述べたようにプロセスも評価の対象とした方がプラスになります。結果だけを評価すると、新しいことに挑戦できなくなりがちです。前例があって、評価されると分かっていることばかり行われるようになるからです。
プロセスを評価の対象とするだけでなく、コメントでも触れるようにしましょう。「結果に現れていなくても見てくれている」と感じることができます。仮にプロセスを評価の対象としていても、コメントで触れないと考慮されていないものと受け取られてしまいます。
書き方④評価できる点・これからの課題の両方を書く
評価できる点とこれからの課題の両方を書くことも大切です。両方に触れることは客観性の現れとも言えます。両方が書かれていると、自分の状態や自分がどう見えているのかを正確に理解することが可能です。正確に理解できると、どこを頑張ったらいいかが明確になり、育成面でもプラスとなります。
改善すべき点を中心にまとめた方が課題がわかって成長につながると思うかもしれませんが、指摘ばかり受けた状態で前向きになるのはなかなか難しいものです。両方に触れた方がモチベーションの向上につながります。
書き方⑤前向きな表現を心がける
同じことを伝えるのにも、できるだけ前向きな表現を心がけましょう。評価される側も受け止めやすくなります。課題についても、「〇〇ができていなかった」のような表現だとただの指摘です。しかし同じ課題でも「次は〇〇ができるようになることを期待する」と表現すると、ただの指摘ではなく今後の成長を促すことができます。
このように、前向きな表現の方が受け止めやすくなるほか、将来的に改善されていくことが期待できます。
人事評価シートのコメント例(評価側)
より具体的に、人事評価シートに評価する側がコメントする場合の例を紹介します。以下の例について例文を紹介しつつ解説します。
- 営業職の場合
- 事務職の場合
- IT系職業の場合
- 製造職の場合
- 販売職の場合
どの職種も書き方のポイントは全て同じです。職種により重点の置かれる内容が変わるので、どんな点が中心・重点となるかについて主にまとめます。それでは1つずつ見ていきましょう。
コメント例➀営業職の場合
●コメント例
今期は売上目標の120%を達成し、その成果は大きく評価できる。やや高めの目標だったにもかかわらず、新規顧客の開拓のために毎日の訪問件数をキープしたことが結果につながったと考えられる。
一方で新規の契約件数が増えた分、クレームの割合も高まった。来期は獲得した新規顧客を売上の安定と底上げにつなげるためにも、新規顧客へのケアとフォローを積極的に行うことを期待する。
営業職は実績を数値化しやすいので、具体的な数字で表現するとわかりやすくなります。上記の例では訪問件数がプロセスに当たり、プロセスをどう評価するかにも触れられています。マイナス面も指摘で終わらせず課題の形で伝えます。上記の例でははっきりと評価の理由には触れていませんが、代わりに高めの目標を達成していることに触れています。
コメント例②事務職の場合
●コメント例
会計システムの導入に際して、操作方法を積極的に学習してほかの社員に説明したことはスムーズな導入に役立った。混乱も予想されたが、操作ミスやシステムの不備などを0件に抑えることができたのは高く評価できる。
今期はシステム導入の準備と運用に尽力したので、来期は今期少なくなってしまった業務改善の提案と実行にも力を入れてほしい。
事務職は数値で成果を示すことが難しいので、目標の達成度や情意面の取り組みなどを中心にまとめることが多くなるでしょう。ただし事務職でも効率化や改善、提案数などは数値化しやすいポイントです。数字で表現できるポイントは数字で客観的にまとめます。
コメント例③IT系職業の場合
●コメント例
9月に基礎設計を終わらせるプロジェクトにおいて、プロジェクトリーダーとして余裕を持ったスケジュール管理で設計を終わらせたのは評価に値する。とくに作業に時間のかかる新人に配慮しながら進捗をまめに確認していたことがプラスとなった。不具合の発生率も平均の50%以下と、品質面でも満足できる。
プロジェクト内のコミュニケーションは密だったが、外部には進捗が伝わりにくく誤解されることもあったため、今後は他部署との連携が課題となるだろう。
IT系職業のうち、とくにエンジニアは成果を数値化しにくい職種です。そのためコメントでは、実績としては工程や進捗管理・業務改善など、そのほか仕事への姿勢などが中心となるでしょう。またプロジェクトの成果と個人の成果とは別なので、プロジェクトの中の役割を明確にしたうえで個人の評価を行うことが必要です。
コメント例④製造職の場合
●コメント例
当社の主力商品の製造工程を見直し、生産数を5%アップ、コストダウンにも寄与した点は評価できる。ボトルネックとなっていた工程の発見には同僚とコミュニケーションを取りながら検証し、部署を引っ張るリーダーシップを感じさせる取り組みだった。
強いリーダーシップが強みであるが、周囲の意見を聞き入れながら業務に当たる姿勢を身に付けることに今後は期待したい。
製造系の場合、評価の対象となる実績や成果は技術的な貢献度になります。コストダウンや作業の効率化、製品の品質向上などへの貢献を数字で表しつつ、実績までの過程やふだんの取り組みについてまとめます。工場などで作業がメインの場合は、勤務態度や業務改善などへの意欲、作業の正確さなどを評価しましょう。
コメント例⑤販売職の場合
●コメント例
夏のキャンペーンでは、他店をしのぐ前年度比120%の売上を達成する牽引力となった点は高く評価できる。おすすめ商品の商品知識を学びつつセールスの成功事例をほかのメンバーに共有することで、自分の売上を店全体の売上につなげることができた。
リピーター客をつかむ力を活かすためにも、今後はまずは新規顧客を獲得して客層を広げることを店の課題として取り組んでほしい。
販売職も営業職と同じように実績を売上額などの数字で表すことができます。成果に対する評価に加えて、その過程をどう評価するかについても触れるようにしましょう。そのほか販売員として接客態度やホスピタリティなども評価の対象となります。
教育で評価の高い社員を増やしたいならイー・コミュニケーションズにご相談を
人事評価は、適切に行わないと離職などマイナスの影響が生じかねません。逆に適切な評価は社員のモチベーションを高め、企業の実績にもプラスとなります。評価結果を人材育成につなげると、社員の満足度も向上します。
人材育成の一環にeラーニングをご検討中なら、ぜひ私どもの「サクサクテスティング」も候補としてみてください。知識の定着にテストを用いる「テストエデュケーション」で学習でき、オンライン研修を補完する知識習得に高い効果があります。
教育担当者様の声を反映し、誰でも簡単に直感で操作することが可能。研修を実施する側・受講者側、いずれも効率的に利用できます。
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ご不明の点がある場合やご興味がおありの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。「お問い合わせ」よりご連絡いただけます。