コンプライアンス研修とは?目的・内容・効果的な実施方法を解説

コンプライアンス研修と聞くと、「難しそう」「堅苦しい」と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、社員一人ひとりが会社のルールや社会のルールを理解し、日常の業務で正しい判断ができるようになるための大切な学びの場です。
本記事では、コンプライアンス研修の基本的な意味や必要性、身近に起こりうる違反事例、研修で学ぶべきテーマや実施方法まで、実務担当者にもわかりやすく整理してご紹介します。
目次[非表示]
- 1.コンプライアンスとは
- 2.身近に起こりやすいコンプライアンス違反とは
- 2.1.情報漏えい
- 2.2.粉飾決算
- 2.3.ハラスメント
- 2.4.SNSやインターネット上での不適切投稿
- 2.5.個人情報保護・著作権・下請法違反など
- 3.コンプライアンス研修の目的
- 3.1.法令・社内ルールの理解
- 3.2.企業倫理の醸成
- 3.3.リスク管理と企業価値の向上
- 3.4.経営理念の浸透
- 4.コンプライアンス研修で学ぶべきテーマ
- 4.1.情報セキュリティ・個人情報保護
- 4.2.ハラスメント防止
- 4.3.SNS・著作権・下請法など実務リスク
- 5.効果的なコンプライアンス研修事例・ネタ
- 6.コンプライアンス研修の実施方法
- 6.1.対面講義・専門講師の活用
- 6.2.オンライン・eラーニングによる効率的実施
- 6.3.社内開催と外部委託の使い分け
- 6.4.効果的なタイミングと頻度
- 7.コンプライアンス研修の効果を高めるためのポイント
- 7.1.ニーズの把握と目標設定
- 7.2.対象者に合わせたテーマ設計
- 7.3.参加意欲を高める実践型研修の導入
- 7.4.振り返り・効果測定・アンケート
- 7.5.継続的な実施と社内定着の工夫
- 8.コンプライアンス研修の成果を評価する方法
- 9.まとめ
- 10.eラーニングを活用したコンプライアンス研修なら「SAKU-SAKU Testing」
コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、直訳では「法令遵守」を意味し、社会的倫理や企業の行動規範を守ることを含めた広い概念です。
近年では「ルールを破らない」ことだけでなく、「社会からの信頼を得る行動を取ること」まで含めて捉えられるようになっています。
企業にとってコンプライアンスは、組織運営の基盤そのものです。従業員一人ひとりが法令や社内規程を正しく理解し、適切な判断や行動を取ることで、企業の信頼性やブランド価値を守ることができます。反対に、わずかな違反でも企業の信用は失墜し、取引先や顧客からの信頼を失うおそれがあります。
そのため、コンプライアンスは「経営戦略の一部」として位置づける企業も増えています。
なぜ今コンプライアンスが重要視されているのか
コンプライアンスの重要性が注目されるようになった背景には、社会や企業環境の変化があります。
過去には、企業の粉飾決算や情報漏えい、パワーハラスメントなどの不祥事が相次ぎ、企業の社会的責任が厳しく問われるようになりました。
また、SNSの普及によって、従業員の一言や投稿が瞬時に拡散し、企業全体のイメージを損なうケースも増えています。
さらに、SDGs(持続可能な開発目標)やESG経営など、「企業の倫理的な在り方」そのものが社会的評価に直結する時代となりました。
こうした流れの中で、コンプライアンスは単なる内部統制ではなく、企業が社会的責任を果たすための“信頼の証”として位置づけられています。
コンプライアンス違反のリスク
コンプライアンス違反は、企業に多大な損失をもたらします。
法令違反による罰金や行政処分だけでなく、企業イメージの低下や取引停止、従業員の士気低下など、目に見えないダメージも深刻です。
特にSNS時代では、些細な不祥事でも即座に拡散し、ブランド信頼を一瞬で失うリスクがあります。
一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。だからこそ、日常業務の中で「これを行うことは社会的に正しいか」という意識を持ち続けることが、真のコンプライアンス遵守につながります。
このあと紹介する「身近な違反事例」を通して、自社で起こり得るリスクを具体的に見ていきましょう。
身近に起こりやすいコンプライアンス違反とは

コンプライアンス違反は、特別な不祥事だけでなく、日常業務の中でも起こり得ます。
ここでは、企業で発生しやすい代表的な違反例を取り上げ、その内容と防止のポイントを整理します。
情報漏えい
顧客情報や機密情報の管理ミスによる情報漏えいは、最も頻発するコンプライアンス違反の一つです。東京商工リサーチの調査によると、「個人情報の漏えい・紛失事故」は2021年以降4年連続で最多を更新しています。
参考:東京商工リサーチ「2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分」
具体例:
- 社内システムへの不正アクセスによる顧客情報流出
- メール誤送信による取引先や顧客情報の漏えい
- 外部委託先の管理不備による個人情報の流出
粉飾決算
売上や利益を実際より良く見せかける粉飾決算は、企業の信頼を根底から揺るがす重大な違反です。コロナ禍においては資金繰り改善を目的とした企業で、粉飾決算による倒産が急増しました。
参考:東京商工リサーチ「2024年度上半期の「粉飾決算」倒産 11件 再生支援を求めて「粉飾告白」が急増」
具体例:
- 架空の売上計上や未発生取引の利益計上
- 在庫や資産の過大評価による財務数値の操作
- 過剰な販売ノルマによる現場レベルでの売上水増し
ハラスメント
セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントなど、職場でのハラスメント行為もコンプライアンス違反の一種です。被害者の人権を侵害するだけでなく、職場の生産性やチームワークを損なう結果につながります。
具体例:
上司による部下への過剰な叱責や人格否定
性的な発言や行為による職場の不適切環境
妊娠・育児を理由とした差別的扱いや昇進妨害
SNSやインターネット上での不適切投稿
SNSへの軽率な投稿が原因で、企業や顧客情報が拡散してしまうケースも急増しています。
たとえば、社内の出来事や顧客の情報を不用意に共有したり、社員個人の発言が企業全体のイメージダウンにつながることもあります。
具体例:
社内の会議内容や顧客情報を無断で投稿
顧客対応時のやり取りをスクリーンショットで公開
個人情報保護・著作権・下請法違反など
近年では、個人情報保護法や下請法(※)、著作権法など、企業活動に関連するさまざまな法令が注目されています。
具体例:
顧客データの無断利用や第三者への提供
他社著作物の無断コピーや社内資料への不正使用
- 下請業者(※)への不当な契約条件や価格の押し付け
(※)下請法は改正により2026年1月1日から「取適法」と名称が変更されます。下請業者は「中小受託事業者」と呼ばれ、手形払いの原則禁止や一方的な代金決定の禁止、適用対象の拡大等が主な改正内容となっています。
▼あわせて読みたい資料:コンプライアンス研修に活用できるコンプライアンス違反事例
コンプライアンス研修の目的

コンプライアンス研修は、単に法令遵守の知識を伝えるだけでなく、社員の行動や意識を企業文化に結びつけるための重要な施策です。
ここでは、研修を通じて企業が目指すべき具体的な目的を整理します。
法令・社内ルールの理解
コンプライアンス研修の基本的な目的は、法令や社内規程の正しい理解と周知です。
社員が自分の業務に関係する法律や社内ルールを理解していないと、知らず知らずのうちに違反行為を行ってしまうリスクがあります。
研修を通じて、業務上の判断基準を明確にし、違反の未然防止につなげます。
企業倫理の醸成
コンプライアンス研修は、法令遵守だけでなく、企業としての倫理観やモラル意識を育む役割も担います。
従業員一人ひとりが「正しい行動」を理解し、職場での判断や行動に反映できるようにすることで、健全な組織風土を作ります。
リスク管理と企業価値の向上
違反行為は法的リスクだけでなく、企業の信用やブランド価値にも影響します。
研修を通じてリスク認識を高め、適切な行動を習慣化することで、リスクを最小化し、企業価値の維持・向上につながります。
特に情報漏えいやハラスメントなどの身近な事例を通して理解させると、実務に直結する意識改革が期待できます。
経営理念の浸透
法令遵守やリスク回避だけでなく、コンプライアンス研修には経営理念や企業の価値観を社員に浸透させる役割もあります。
研修を通じて会社の方針や倫理観を共有することで、社員の行動指針が統一され、組織全体の文化として定着します。
長期的には企業の信頼やブランド価値の維持にもつながります。
コンプライアンス研修で学ぶべきテーマ

コンプライアンス研修では、社員が日常業務で直面するリスクや課題を具体的に理解し、適切な判断を下せるようにすることが目的です。
ここでは、研修で重点的に扱うべきテーマを整理します。
情報セキュリティ・個人情報保護
現代の企業活動では、情報漏えいや個人情報の取り扱いミスが重大なリスクにつながります。研修では、社員が取り扱う情報の分類や保護方法、漏えいリスクの具体例を学び、日常業務での注意点を体得させます。
主な内容
- 個人情報保護法に基づいた取り扱い方法
- 情報の分類と管理の仕方
- パスワード管理やアクセス制限
ハラスメント防止
セクハラやパワハラ、マタハラなど、職場で発生するハラスメントは企業の信用を大きく損ないます。研修では、ハラスメントの定義、発生しやすいケース、報告・対応の手順を学び、社員が安全で公正な職場環境を維持できるようにします。
主な内容
- セクハラの定義と防止策
- パワハラの兆候と対応方法
- 相談・報告の手順
SNS・著作権・下請法など実務リスク
近年ではSNS投稿やWeb上での情報発信が企業リスクに直結するケースが増えています。
研修では、SNSでの情報発信ルール、著作権・肖像権の取り扱い、下請法などの法令遵守を学び、日常業務での適切な判断力を養います。
主な内容
- SNS投稿の基本ルール
- 著作権の基本と遵守方法
- 下請法(※)の基本事項
(※)下請法は改正により2026年1月1日から「取適法」と名称が変更されます。下請業者は「中小受託事業者」と呼ばれ、手形払いの原則禁止や一方的な代金決定の禁止、適用対象の拡大等が主な改正内容となっています。
効果的なコンプライアンス研修事例・ネタ

研修の理解度や実務定着を高めるには、座学だけでなく、具体的な事例やネタを取り入れることが重要です。
ここでは、実践的で効果的な教材の選び方や活用方法を紹介します。
自社・他社の不祥事を題材にしたケーススタディ
過去に発生した不祥事や内部統制の失敗事例を題材にすることで、社員は「自分事」として問題意識を持ちやすくなります。
- 自社の過去事例:実務上の注意点を明確化
- 他社の事例:業界全体でのリスクや社会的影響を理解
具体的な数字や経緯を示すと、研修の説得力が増し、倫理的判断力の醸成につながります。
時事ニュースを活用したリアルな教材化
新聞やニュースサイトで取り上げられたコンプライアンス関連の事件を取り入れることで、研修が現実味を帯び、学習意欲を高められます。
- 情報漏えいやハラスメントのニュース
- SNS炎上や著作権トラブルの事例
最新事例を用いることで、社員は日常業務での注意点を具体的にイメージできるようになります。
省庁や業界団体が提示するガイドラインの活用
法律や社内ルールだけでなく、公的機関や業界団体が提供するガイドラインも、研修で扱う教材として有効です。
- 労働基準関連の指針
- 個人情報保護や下請法のガイドライン
- 業界独自の倫理・行動規範
公式の情報をベースにすることで、研修内容の信頼性が向上し、実務に直結する知識として社員に浸透しやすくなります。
コンプライアンス研修の実施方法

コンプライアンス研修は「何を学ぶか」だけでなく、「どのように実施するか」によっても効果が大きく変わります。
ここでは、実施方法とそれぞれの特徴や活用のポイントを整理します。
対面講義・専門講師の活用
専門知識を持つ弁護士やコンサルタントを講師に招く対面講義は、社員にとって実践的かつ具体的な学びの機会となります。
講師による事例紹介や質疑応答を通じて、理解を深めることができるほか、組織としてコンプライアンスへの本気度を示す効果もあります。
オンライン・eラーニングによる効率的実施
時間や場所に縛られず受講できるオンライン研修やeラーニングは、規模の大きい組織や多拠点に向けて効率的です。
動画やクイズ形式の教材を活用することで、知識定着をサポートし、受講記録の管理や効果測定も容易になります。
社内開催と外部委託の使い分け
社内講師を活用した研修は自社のルールや文化に合わせやすく、日常業務との接続もスムーズです。一方で、専門知識が必要なテーマや最新事例の紹介には、外部講師や研修会社への委託が有効です。
研修内容や目的に応じて、社内開催と外部委託を柔軟に組み合わせることが、効果的な研修実施につながります。
効果的なタイミングと頻度
研修は単発で終わらせず、定期的に実施することが重要です。
入社時や異動時、法改正や不祥事発生時など、学びが最も必要とされるタイミングに合わせることで、社員の意識向上や行動変容を促せます。
また、半年~1年ごとにフォローアップ研修やeラーニングの復習を組み込み、知識の定着を図ることが推奨されます。
コンプライアンス研修の効果を高めるためのポイント

コンプライアンス研修は実施するだけでは十分な効果が得られません。 研修の目的を明確化し、対象者やテーマを最適化することで、社員の理解度や行動変容を最大化できます。
ここでは、効果を高めるための具体的なポイントを整理します。
ニーズの把握と目標設定
研修を実施する前に、社員のコンプライアンスに関する認識レベルや職場の課題を把握することが重要です。
アンケートやヒアリングを通じて現状を確認し、研修で達成したい目標を明確に設定することで、研修内容の方向性を定め、効果的な学習を促します。
対象者に合わせたテーマ設計
社員の職種や役職、経験年数によって必要な学習内容は異なります。
管理職には判断力や部下指導の視点を、一般社員には日常業務での法令遵守やリスク回避の知識を重点的に伝えるなど、階層や役割に応じたテーマ設計が成果向上の鍵となります。
参加意欲を高める実践型研修の導入
知識の習得だけでなく、ケーススタディやロールプレイ、グループディスカッションなどの実践型研修を組み込むことで、社員の参加意欲を高め、学んだ内容を実務に活かす力を育成します。
具体的なシナリオや自社事例を活用することで、理解度と記憶の定着がさらに向上します。
振り返り・効果測定・アンケート
研修後に理解度テストやアンケートを実施し、学習効果や行動変容を確認します。
どの部分が理解されているか、どの課題が残っているかを把握することで、次回研修の改善点やフォローアップの内容を設計できます。
これにより、研修を単発で終わらせず、継続的な学習サイクルに結び付けられます。
継続的な実施と社内定着の工夫
研修で学んだ知識や行動基準を職場に定着させるためには、定期的な研修やeラーニングによる復習、社内コミュニケーションの活用が有効です。
また、成功事例の共有や経営層の積極的な関与を通じて、研修内容を日常業務に組み込み、組織全体のコンプライアンス意識を向上させます。
コンプライアンス研修の成果を評価する方法

研修を実施しただけでは、社員の理解や行動変容が十分に定着しているかはわかりません。ここでは、研修の効果を具体的に評価し、次回研修に活かすための方法を解説します。
研修前後の理解度テストやアンケート
研修前後で知識や意識の変化を測定するテストやアンケートは、最も基本的な効果測定手法です。研修の学習効果や改善点を定量的に把握できます。
研修前テスト:現状の理解度や意識の把握
研修後テスト:知識定着や理解度の確認
アンケート:研修内容の満足度や実務への活用意欲の確認
行動変容・リスク低減の可視化
理解度だけでなく、実際の行動変容や組織リスクの低減も重要な評価指標です。
社内の違反報告件数の推移
日常業務での手続き遵守状況
コンプライアンスに関する相談件数の変化
こうした指標を定期的に確認することで、研修が現場にどれだけ浸透しているかを可視化できます。
継続的改善サイクル(PDCA)の確立
研修の効果を維持・向上させるためには、PDCAサイクルの導入が有効です。
Plan(計画):次回研修の目標や内容を策定
Do(実行):研修の実施
Check(評価):理解度テストや行動変容の確認
Act(改善):内容や実施方法を改善し、次回研修に反映
このサイクルを継続することで、研修の質を向上させるとともに、組織全体のコンプライアンス意識を持続的に高められます。
まとめ
コンプライアンス研修は、ただの法令遵守の勉強ではなく、社員一人ひとりの意識を高め、会社全体の健全な運営や企業価値の向上につながる大切な取り組みです。
研修の目的をはっきりさせ、実務に役立つテーマや事例を取り入れ、振り返りやフォローアップを行うことで、より効果的に学びを定着させることができます。
また、eラーニングやオンライン研修を活用すれば、社員が自分のペースで学べるだけでなく、理解度の確認や進捗管理も簡単に行えます。
日々の業務に無理なく組み込んで、継続的に取り組むことで、組織全体のコンプライアンス意識が自然と高まり、会社の信頼を守る力になります。
eラーニングを活用したコンプライアンス研修なら「SAKU-SAKU Testing」
コンプライアンス研修にeラーニングの活用を検討している方はイー・コミュニケーションズにご相談ください。
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